不動産会社から査定書が提出されると、いよいよ売却を依頼する不動産会社の決定時期になります。複数の会社に査定を依頼するのが普通ですから、査定書の説明を受けた会社も多いはずです。

1社だけに任せるかあるいは数社に依頼するか、売却戦略とも関係のあることですが、信頼できる会社を選ぶことが大切です。

また、一定期間依頼したあとに不動産会社を変えることになることもあります。適切な判断ができるよう不動産会社についての必要な知識を解説します。

 
 

不動産会社とは

不動産会社といってもいくつか種類があり、不動産の売却を依頼するのは「売買仲介」を業とする会社です。しかも宅地建物取引業法にもとづく業者でなければなりません。

ここでは売買仲介業を営む不動産会社について、法律上の規制や規定についてお伝えします。

 
 

不動産会社の種類

不動産会社を分類すると次のように5つの種類があります。

宅地建物取引業者 売買仲介会社
賃貸仲介会社
不動産開発業者
上記以外の不動産会社 賃貸業者
賃貸管理会社

売買仲介会社と賃貸仲介会社、そして宅地開発やマンション分譲などをおこなうデベロッパーは、宅地建物取引業の免許が必要な不動産会社です。賃貸業や賃貸管理を営む会社は宅建免許の必要がありません。

5つの種類がありますが、売買と賃貸の仲介をおこなう会社、賃貸仲介と賃貸管理をおこなう会社など、兼業している場合がほとんどといっていいでしょう。

不動産の売却を依頼する場合は「売買仲介会社」になります。賃貸仲介専門の会社もたくさんありますが、法律上は問題ないのですが賃貸専門では売買に不慣れな面があります。

売買仲介をおこなう不動産会社にも実は種類があります。

      • 全国ネットの大手仲介会社
      • フランチャイズチェーン加盟の不動産会社
      • 地元密着型の不動産会社

 
 

宅地建物取引業の免許制度

宅地建物取引業法により免許を受けた不動産会社を「宅地建物取引業者(宅建業者)」といいます。免許を取るには基準を満たしていなければなりません。

      1. 事務所ごとに常勤する責任者がいる
      2. 従業員5名ごとに1名の宅地建物取引士が専任している
      3. 事務所ごとに営業保証金を供託するか、弁済業務保証金分担金を納付する

事務所の所在地によっても区分があります。

      1. 2つ以上の都道府県の区域に事務所を設置する場合は国土交通大臣の免許
      2. 1つの都道府県のみに事務所を設置する場合は都道府県知事の免許

免許の有効期間は5年間なので、5年ごとに更新手続きをしなければなりません。

営業保証金と弁済業務保証金分担金
営業保証金は本店など主たる事務所は1,000万円、支店や営業所などは500万円を供託します。しかし宅地建物取引業保証協会の社員になった不動産会社の場合は供託の必要がなく、弁済業務保証金分担金を納めます。金額は主たる事務所で60万円、従たる事務所で30万円です。

宅地建物取引業者として免許を受けなければならない「宅地建物取引業」とは次のように定義されています。

      1. 宅地・建物の売買、交換
      2. 宅地・建物の売買、交換又は貸借の代理
      3. 宅地・建物の売買、交換又は貸借の媒介

 

媒介業務と代理

前述のように「宅地建物取引業」の仕事の内容には「代理」と「媒介」があります。仲介は法律用語では「媒介」というのです。

代理は売主の代理または買主の代理として取引をおこなうもので、一般的には分譲宅地や分譲マンションの売主であるデベロッパーとの代理契約にもとづき、売買契約の締結や引渡し手続きをすることが多くみられます。

媒介は売主または買主との媒介契約により、媒介業務=仲介業務をおこなうのです。業務の報酬は売買価格にもとづき次の計算式により決定されます。

売買価格の200万円までの部分 5%
200万円超400万円以下の部分 4%
400万円超の部分 3%

たとえば売買価格が1,000万円のときは次のように計算します。

200万円×5%+200万円×4%+600万円×3%=36万円となりますが、計算式が面倒なので一般的に400万円を超えるときは、売買価格×3%+6万円の計算式を用いています。

代理と媒介とでは報酬額の上限が異なり、代理は媒介の2倍になります。しかし一般の方が代理業務を頼むことはほとんどありませんので、媒介の報酬算定方法を覚えておいてください。

 
 

不動産会社の選び方

不動産会社を選ぶには先に述べた宅地建物取引業者であることはもちろんですが、売却の依頼方法や依頼時の売出し価格をどのように決めるかなど、売主が知っておくべき重要な決まりごともあります。

知識がないと不動産会社ペースで進められてしまうこともありますので、最低限おさえておきたいポイントについて解説します。

 
 

媒介契約の種類と選び方

仲介を依頼する不動産会社とは「媒介契約」を締結しますが、媒介契約には3つの種類があります。

      1. 専属専任媒介契約
      2. 専任媒介契約
      3. 一般媒介契約

「専属専任」と「専任」は1社だけを選択しますが、「一般」は複数の会社を選ぶことができます

媒介契約の種類によって選び方は変わりますが、どのタイプを選ぶ場合でも共通していえるは次のポイントです。

      • 売買仲介が専門か、賃貸兼業であっても売買に力をいれている会社を選ぶ
      • 契約の種類を限定する(専属専任か専任にこだわる)会社は避ける
      • 社歴の短い会社は代表者の過去の業務履歴を確認する
      • 宅建免許番号の古い会社でも社歴の新しい会社があることに注意する
      • 大手であっても地域密着の小さい会社であっても成功・失敗は担当者次第
      • 担当者は宅地建物取引士であることが望ましい

媒介契約の種類による選び方は『不動産媒介契約の種類と売却戦略にもとづいた選択方法と注意点』を参照してください。

 
 

査定額と媒介契約の関係

数社に査定を依頼しそのなかから1社または数社を選ぶのですが、査定額と会社を関連づける必要はありません。たとえば例をあげてみます。

      • A社の査定は1,500万円
      • B社の査定額は1,800万円
2社を比べた場合、A社のほうが信頼できそうですが、査定額はB社のほうが高い。そこで売主はA社に売却を依頼するのですが、売出し価格は1,800万円とする。

このように考えてよいのです。高い金額でまず売出したいと考えた場合、高い金額を査定した不動産会社に決める必要はありません。まず依頼したい会社を決めて、媒介する金額は依頼した会社と改めて相談してかまわないのです。

 
 

媒介価格の決定方法

売却の仲介を依頼する会社とは「媒介契約」を締結しますが、このときには「売出し価格」を決めるものです。「〇〇〇円で売ってください! 」との依頼に「はい! 承知しました。」と合意することにより媒介契約は成立します。

不動産会社が実際の仲介活動のとき「売出し価格」が決まっておらず、相手によって価格を変更することはできません。不動産の仲介は、たくさんの不動産会社が購入希望者を探す活動をおこないます。統一した価格でなければ混乱がおきるからです。

査定価格と実際に売れる価格は異なる! と、これまでも再三述べてきました。査定価格と売主の希望価格には差があることも多いものです。仲介する会社にとって売主の希望価格は無視できないものですが、予想される成約価格との差があり過ぎると、非常に売りづらくなります。

特に、最初の売出し価格をかなり高めに設定し、反応をみながら徐々に下げるといった方法は、インターネットで常に情報をキャッチされる現代では、足元をみられてしまい大幅な値引きがなければ売れないものです。

仲介する会社が売出し価格を決定するうえで、考慮する要素の優先順位は次のようなことです。

      1. 1年以内で売れる
      2. できれば3ヶ月以内で売れる
      3. 売主の希望価格に近づける

このような考え方があることを理解して、初期の売出し価格を検討してください。

 
 

まとめ

不動産が売れるまでには1年間かかる場合もあり、不動産会社とのつきあいも長い期間になります。定期的な活動報告を受け、売出し価格の変更打ち合わせなど、重要な決定にあたっての相談相手が不動産会社です。

売却を依頼する会社によっては「囲い込み」をされるケースもあり、慎重に選んだはずが間違いだったと、契約期間満了に合わせて会社の変更を相談する売主もおられます。

契約前に不動産会社の実態を知ることなどむずかしいことですが、解説したことを参考に信頼できる会社をみつけてください。


不動産査定をひとつのサイトで依頼すると、複数の不動産会社から査定をもらえる「不動産一括査定」。以前からおこなわれている通常の査定方法と、なにが違うのか? なにかメリットがあるのかなど、不動産査定の依頼を予定している方向けに、活用方法と注意点を解説します。

 

不動産の一括査定とはなに?

不動産査定は複数の不動産会社に依頼するのが一般的です。売りたい不動産のある地域の不動産会社を探し、数社にメール・電話・訪問などにより査定を依頼するのですが、ご自身で不動産会社を探す必要のないのが「不動産一括査定サービス」です。

しくみを図解すると次のようなシステムです。

不動産会社は一括査定サイトに利用登録します。登録は無料ですが、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者でなければ登録はできません。査定依頼に対応できる地域を登録するので、北海道の不動産会社が首都圏の査定依頼に応じるようなことは起きないようになっています。

査定を依頼したい人はサイトにアクセス、物件の場所などと連絡先などを登録し、該当する地域が営業範囲になっている不動産会社のリストから数社を選択し査定依頼は完了です。

査定依頼のあった案件について一括サイトから不動産会社にメールが送られ、査定に応じると回答した不動産会社に対し「1件あたり〇円」と決められている金額を課金する方式で成り立っています。

売主が査定を依頼するのは無料ですが、査定をおこなう不動産会社は有料となっており、不動産会社の支払う料金により運営されているサービスです。

「厳選された不動産会社が多数」などの記載をしているサイトもありますが、宅地建物取引業者か否かの審査であり、会社の内容を細かく審査しているわけでありません。宅地建物取引業者であれば誰でも登録できるシステムです。

 
 

一括査定サイトの特徴

一括サイトは上記のように、売主自身が不動産会社を探して、1社ずつ査定依頼をする手間を省いてくれる便利なサービスです。
不動産会社にとっても自社サイトへの訪問者を集める努力(ネット広告費用やSEO対策)などする必要がなく、費用さえ払うと簡単に査定の依頼がくる集客ツールになっています。しかしもちろん費用がかかるので、自社で充分な集客力のある会社は必要ないのかもしれません。
登録している不動産会社は全国ネットの大手不動産仲介会社から、地元密着の小さな不動産会社まで、数十あるといわれる一括査定サイトのどこかに登録していると考えられます。
しかしなかには、地元の小さな不動産会社で長く商売をやっていて、評判もよい会社が登録されていないという場合があるかもしれません。一括サイトだからといって、すべての不動産会社が登録されているわけではないことも承知しておきましょう。
一括サイトを使って査定を依頼した場合と、個別に査定を依頼するのと査定結果に違いがでることはありません。個別に依頼しても一括でも何ら変わるところはないのです。
 
 

査定結果をどう評価するか?

一括査定であっても個別に査定依頼しても、結果は変わらないと述べました。不動産会社は売主の査定依頼する目的を理解しているので、査定依頼方法の違いで結果が変わることはないのです。
査定金額は高い金額から低い金額まである程度の幅があり、結果の金額だけをみるのではなく、査定金額の根拠をしっかり理解することが大切といえます。
不動産査定の方法や不動産会社の選び方と査定アプリの使いかた』で述べたように、適正な査定価格ではない場合もあります。高過ぎると感じる価格には注意したいです。
また査定方法には「訪問査定」と「簡易査定(机上査定)」と、2種類の査定方法を選択できるサイトが多いのですが、正確な査定は「訪問査定」により、室内のチェックをしっかりおこなうほうが望ましいです。
簡易査定には「匿名査定」という連絡先が不動産会社にはまったく通知されない方法もありますが、あくまでも概算を知るだけの方法になります。
査定の目的は「売れる価格」を正確に知ることですが、不動産会社の違いや担当者の違いを知ることも大切なことです。訪問査定のさいには必ず不動産会社の担当者がやってきます。人間性や信頼性など、媒介契約を締結する会社の選択には欠かせないポイントです。
査定結果だけに注目することのないよう注意したいですね。
 
 

一括査定サイトの評判

一括査定サイトの評判を気にする方もおられるかもしれません。信頼できるサイトとできないサイトがあるのでしょうか?
前述したように一括査定サイトの運営者が不動産査定をすることはありません。もちろん不動産仲介業務をすることもありません。一括査定サイトは売主と不動産会社を結びつけるマッチングサイトのような役割しかありません。
マッチングといっても売主の希望にマッチした不動産会社を紹介することはありません。不動産会社を選ぶのは売主ご自身です。したがって一括査定サイトの評判を気にする必要はないのです。
サイトの評判を気にするのは、むしろ不動産会社なのです。
一括査定サイトにより査定依頼1件当たりに課金される金額の違いもありますし、課金対象となる査定内容の違いもあります。
1件あたりの課金単価はサイトによりいろいろですが、物件の価格が1億円の商業用地も、100万円の市街化調整区域の農地も単価は変わりありません。商業用地であれば売買取引の可能性はありますが、農地では売買そのものがむずかしく、不動産会社がサイトに支払う費用は無駄に終わってしまいます。
ビジネスにならない案件は課金対象にしないと明確にしているサイトもあれば、あいまいなサイトもあります。査定依頼の多い不動産会社は多額の費用をサイトに支払っています。費用対効果を考えると一括査定サイトへの登録を見合わせる、地元密着の評判のよい不動産会社も多いものです。
売主の立場で忘れてならないことは、一括査定サイトに登録していない優良不動産会社の存在です。
 
 

一括査定サイトの活用法

地元密着で信頼できそうな不動産会社をご存知なら本命候補として考え、一括査定サイトで本命以外の数社を選択して査定価格を比較する方法をお勧めします。

査定は前述のように単に査定価格を知ることだけではありません。多くの不動産会社と接することにより、知見も多くなり深くもなるのです。その上で、本命の会社にやはり任せたいと判断できれば、不動産会社の比較検討に大いに役立ったといえるでしょう。

まったく不動産会社に心あたりがない場合は、一括サイトで数社に査定を依頼し、それでも1社にしぼれない場合は「一般媒介契約」ですべての会社に売却を依頼し、とりあえず3ヶ月やってみる……と、こんな方法もあるのです。

注意したいのは、一括査定サイトで表示される不動産会社の詳しい内容について、サイト内の情報ではつっこんだ評価はむずかしいです。査定依頼は不動産売却の入口、仲介を依頼する信頼性の高い会社を探すには、一括査定サイトの情報ではもの足らないといえるでしょう。

また一括査定サイトは数十サイトあり、利用したサイトにぜひ査定を依頼したい会社がない場合もあります。物件の所在地域の不動産会社の情報は事前に調べておき、一括サイトに登録されていない会社には個別に査定依頼することも大切です。

 
 

まとめ

一括査定サイトの活用法や注意したいポイントについて解説しましたが、査定を実際におこなうのは売主自ら選んだ不動産会社です。そして仲介を依頼するのも自身が選択した会社になります。

信頼できる不動産会社の見極めは、自分でするしかないのです。また査定価格が必ず売れる金額ではないことも理解して、大切な資産の売却を依頼できる、会社選びに活用するようにしてください。


できるだけ高く、できるだけ早く売りたい! と売主なら誰でも思うことですが、必勝法のようなものはありません。高く売れる条件を満たしていることと、必要と考えることをやりつづけることです。

不動産会社がおこなう販売活動が適正か、売却予定の不動産が高く売れる条件を満たしているのか、売主が知っておきたい高く売れる5つのポイントを解説します。

 
 

高く売れるために必要な5つのポイント

適正におこなわれた査定価格は3ヶ月間で売れる可能性のある金額といえます。一般的に査定価格は多少の幅をもたせて提出されることもあり、たとえば「2,100万円~1,900万円」などのように2,000万円前後100万円の幅があるような査定です。

高く売るためには上値の2,100万円を売渡し金額として設定し、売出し価格を2,100万円とするか2,100万円+αとするわけですが、高値で売れる必要条件として次の5つのポイントが考えられます。

    1. 売出し価格の妥当性

売出し価格は不動産査定の結果にもとづいて決定するのが普通です。査定内容によって高過ぎる価格設定になってしまう場合があります。不動産購入を検討している人からみて “明らかに高い” と感じる価格設定は「値下がり」を予感させ、 “下がるまで待とう! ” という反応が生まれるものです。

“すこし高めだが! ” と感じる設定のほうが、興味をもってもらえる可能性が高くなるといえるでしょう。

    1. 資産価値を高める希少性

希少価値のある物件のほうが高く売れる可能性が高いことは当然ですが、誰もがその価値を認めることは少なく、一部の人が希少な特徴に対し資産価値を認めるものです。そのため高く評価する人が現れるまでに時間がかかると考えられます。

    1. 競合物件に優る立地条件

同様な物件が周辺にある場合、立地条件のより良いほうが高くなります。立地条件の良し悪しにはいくつかポイントがあり、重視する条件が人によって同一ではありません。交通便を重視する人、特定の大学への通勤性を重視する場合、勤務先から徒歩圏内を求める人など、必ずしも同一の条件が優れているわけではないことに注意したいです。

    1. 適切なメンテナンス

築年数が経過していても、適切にメンテナンスされている物件は評価が高くなります。外壁や屋根など外部を定期的にメンテナンスしていた物件は、築30年を超えていても経済的残存耐用年数は長くなり、買主も内覧時の評価が高くなる傾向があります。

    1. 買主に与える安心感

上記のメンテンナンスに関連しますが、買主は建物の不具合や劣化の状態を、購入前に正確に把握することはむずかしいものです。漠然とした不安が購入へのためらいにもなってきます。

安心感を与えるためにも『ホームインスペクション(住宅診断)の目的と効果』で説明した「ホームインスペクション」を活用することも考えてください。

 
 

高く売るために実践したい5つの具体策

高く売れる5つのポイントが条件としてそろった場合、次に考えなければならないことが具体的な対策です。

      1. 短期間で売れると考えない
      2. 売り渡し価格を妥協しない
      3. オープンハウスを粘り強く行う
      4. リフォームよりハウスクリーニングを
      5. 不動産会社の担当者を見極める

以上の具体的対策についてもうすこし深く掘り下げてみましょう。

 
 

短期間で売れると考えない

不動産の売却期間は平均8ヶ月というデータがあります。

参考:不動産ジャパン「売りに出してから売れるまでの期間は平均8ヶ月、売却価格は平均2,536万円」

https://www.fudousan.or.jp/topics/1507/07_5.html

媒介契約期間の3ヶ月で売れるにはいくつかの理由が考えられます。

  • 価格設定がよかった
  • 売出し時期がよかった

媒介契約期間は3ヶ月としますが、多くは再契約や仲介会社の変更などをおこない、戸建住宅においては1年近くかかっていることが参考サイトのデータから読み取れます。

不動産を購入する人の多くは「できるだけ安く買う」ことを優先しており、売主の希望金額で売れるには「どうしてもこの物件がほしい」と考える人の出現を待つしかありません

このことから言えることは『多くの人に物件の存在を知ってもらい、たくさんの内覧件数を増やす』ことが大切で、そのためにはある程度の時間がかかることを予定しておく必要があるのです。

 
 

売り渡し価格を妥協しない

専任媒介で両手手数料の場合、仲介会社はなんとか商談をまとめることを優先します。つまり売主と買主の希望価格に大きな開きがあるとき、仲介会社は “間をとる” といった考え方をするものです。

買主側にも不動産会社が仲介でいる場合は、不動産会社同士の交渉になります。 “間をとる” という考え方は最終段階であって、売主の希望にできるだけ近づけようと頑張るケースが多くなります。頑張り過ぎて破談になることもあり得ますが、高く売れるためには売主の妥協をしない姿勢が大切です。

媒介契約時には売出し価格を決めますが、このときに値下げ交渉があった場合の最低ラインをはっきり決めておくことが大切。売主が売りたい希望金額と不動産会社が「売れるだろうと考えられる最高金額」のすり合わせをしておくことを勧めます。

すり合わせができていると、両手手数料の場合でも安易な値引き提案をしづらいため、ギリギリの合意ラインを探ってくれるようになるものです。

 
 

オープンハウスを粘り強く行う

オープンハウスをくり返し粘り強くおこなうことで、高く売れる可能性が大きくなります。

オープンハウスは売却活動のなかでも有効なものであることを『オープンハウスの演出方法~ホームステージングとは?』で解説しました。

オープンハウスは事前の準備や告知方法により、時間や費用がかかる場合もありますが、空き家の場合には常時オープンハウスのセッティングをしておくことが可能です。告知をウェブサイトのみでおこなうと費用はほとんどかかりません。

高く売るには露出する頻度と内覧件数を、とにかく増やすことが鉄則です。告知方法が弱いと集客数は落ちるので、不動産会社にとっては会場での待機時間を無駄に感じることが少なくありません。しかしリモートワークが可能なモバイル通信機器も一般的であり、オープンハウス会場を臨時のオフィススペースに使用することもできます。

 
 

リフォームよりハウスクリーニングを

築年数が経過した物件はリフォームしてキレイにしたほうが、高く売れると考えると人も多いようです。

一見納得できる考え方ですが、落とし穴もあります。冒頭に記述した参考サイトの『不動産ジャパン「売りに出してから売れるまでの期間は平均8ヶ月、売却価格は平均2,536万円」(https://www.fudousan.or.jp/topics/1507/07_5.html)』には、中古住宅購入者におこなった『購入時にリフォームしてあった方が良かったか?』とのアンケート結果が掲載されています。

      • リフォームしてあったほうが良かったに「はい」と答えたのは9%
      • 「いいえ」と答えたのは8%

「いいえ」のほうが実は多いのです。

購入してから好きなようにリフォームしたいと考える人が多いこと、そしてリフォームされていると以前の状態が確認できず、不具合や欠陥があってもわからないという問題があります。また、リフォームした費用を上乗せして売れる保証もありません。リフォームした費用が無駄になることもあるのです。

すこしでもキレイに見せたいということであれば、ハウスクリーニングをやっておくことが効果的です。

 
 

不動産会社の担当者を見極める

不動産を高く売るには、担当者の能力と人間性によるところが大きくなります。

  • 値下げしても早く売ってしまいたいと考える能力の高い人
  • 高く売りたいと考えていても説明に説得力がなく信頼を得られない人

このようなケースでは、高く売れることを期待できません。

 “高い能力がありなおかつできるだけ高く売ろうと努力する人” が望まれるのですが、そのような担当者をどう見抜くかが重要です。

売主から見た担当者の見分け方はたったひとつ・・・この営業マンから住宅を買いたいと思うか? です。

買主の立場になって考えてみるとわかります。

      • 嘘をつかない
      • 真摯に客の立場になってくれる
      • どんな相談にも応じてくれる
      • 説明がやさしく理解しやすい

などなどいろいろあると思いますが、一生に1回せいぜいあっても2回ほどしかない大きな買い物です。大事な買い物の選択にあたって相談するのは、やはり営業マンなのです。買主が信頼する営業マン、それが高く売ることのできる担当者だといえるのです。

 
 

まとめ

高く売れるための5つのポイントと具体策について解説しました。不動産売買は売主と買主のマッチングです。そのチャンスをつくるのが不動産会社の仲介活動といえます。

高く売れるテクニックなどはありません。地道に粘り強くおこなう販売活動がやがて花を開かせるものです。売主と不動産会社とのあいだに生まれる信頼関係と、高く売るための目標意識が一致していることが大切なことです。

不動産を売却する手順のスタートは「不動産査定」からです。いくらで売れそうか、いくらで売り出すかを決めるため査定は欠かせません。また査定にはもうひとつ目的があって、仲介を依頼する不動産会社を選択するためにも大切なプロセスです。

ここでは不動産査定をおこなう実際の方法と、最近多くなった「査定アプリ」を紹介し、査定依頼する会社の選び方についても解説します。

 
 

不動産査定は3つの方法でおこなう

不動産査定は不動産鑑定法による手法に準じておこなっています。

      1. 原価法
      2. 取引事例比較法
      3. 収益還元法

以上の3種類あり、査定する不動産の種類や用途により適切な方法を選択しますが、複数の方法により査定をおこない、売出し価格を多角的に検討することもできます。

 
 

原価法

原価法は再調達原価を計算し、建物の築年数に応じて減価修正した結果を不動産価格とする方法です。

建物の査定価格はこの方法により計算しますが、土地の場合も再調達原価による価格算出は可能です。しかし価格に影響を与える要素が複雑であり、一般的には「取引事例」や「公示地価」から、現在の土地価格を算出します。

再調達原価とは

査定する時点において、対象不動産と同等の不動産を建設取得するために必要な費用をいいます。

たとえば築50年の建物であった場合、50年前の建設コストではなく現在時点でのコストにより計算した金額になります。

減価修正は耐用年数から経過年数を差し引いた「残存耐用年数」と「耐用年数」の割合により、再調達原価を低減させます。

耐用年数は法定耐用年数ではなく、次式により計算します。

耐用年数=経過年数+経済的残存耐用年数

経済的残存耐用年数とは

査定する時点において、対象不動産の状況により「あと何年」使用できるかを想定した年数。

 
 

取引事例比較法

取引事例比較法は対象不動産の近隣地域や類似する地域で、対象不動産と同様な用途と考えられる不動産の取引事例を選択し、対象不動産との比較により適宜補正や修正を加えて価格を算定する手法です。

取引事例の件数が多いほど査定金額の合理性が保たれます。土地の査定実務においては「公示地価」による場合もあります。

取引事例比較法はいろいろ応用の効く査定方法であり、次のような方法を実務では用いることが多いです。

      1. 土地の査定を取引事例でおこない、建物の査定は原価法でおこなう
      2. 土地の査定は取引事例か公示地価により算出し、建物を取引事例により査定する
      3. 土地と建物の合計金額を取引事例により査定する

取引事例の抽出はできるだけ直近のデータが望ましいのですが、取引があまり頻繁におこなわれない地域ではデータ量が少なくなります。過去データが古い場合は「時点修正」をおこなう必要もでてきます。

 
 

収益還元法

賃貸用の不動産査定に用いられるのが「収益還元法」です。賃料収入額から利回りを逆算し価格を求める手法で、次の2種類の方法があります。

      1. 直接還元法
      2. DCF法

賃貸用の不動産以外にも用いることができます。たとえば自宅の査定であっても、貸家にした場合の想定賃料から査定額を計算することも可能です。

2種類の方法のうち「DCF法」は将来の売却価格も含めて計算する方法で、複雑であるのと将来予測の正確性が問題であり、不動産査定では「直接還元法」を用いるのが一般的です。

 
 

土地価格の査定

土地の査定では上記のほか、固定資産評価額・相続税路線価も活用しておこなうことが多いです。

      • 固定資産税評価額は時価の7割
      • 相続税路線価は時価の8割

以上のようにそれぞれの公的評価額から時価を逆算することもできます。

ただし固定資産税評価額は3年に一度の見直しが原則なので、場合によっては「時点修正」が必要になることもあります。

取引事例を抽出するデータは、宅地建物取引業者ネットワークの「レインズ」や「土地総合情報システム」を使用しています。

レインズは宅地建物取引業者以外みることができませんが、「土地総合情報システム」

(https://www.land.mlit.go.jp/webland/)は一般のかたも利用できるシステムです。

 
 

不動産査定アプリとは

不動産査定を不動産会社に依頼しないで自分で査定する方法もあります。不動産査定アプリやAI査定などのインターネット広告を見ることが多くなりました。

次のキャプチャー画像は不動産査定アプリのひとつ、「HowMa」に登録したある地点の取引事例データです。

 

引用:HowMa(https://www.how-ma.com/)

メールアドレスと価格の知りたい地点を登録しておくと、1週間ごとに査定価格の更新通知がきます。

プログラムの詳細を知ることは不可能ですが、取引事例比較法による査定を自動的におこなっているものと思われます。

「最近、このあたりの単価はいくらだろう? 」などと知りたいときには非常に簡単ですが、査定結果の根拠はまったくわからず、取引事例の詳細を把握することはできません。

あくまでも “目安” を知る目的であり、実際の売却にあたっては不動産会社の査定が必要であることは言うまでもありません。

スマホアプリでは「らくらく不動産査定」などもあります。

https://play.google.com/store/apps/details?id=com.embarcadero.assessment_app

 
 

査定を依頼する時の注意点

不動産査定の方法はいくつかありますが、どの方法によるかは問題でありません。査定額は初期の売出し価格を決め、不動産会社に仲介を依頼する媒介契約締結の準備をすることが目的です。

理解しておかねばならないのは、査定額とは “必ず売れる金額” ではありません。 “売れるかもしれない金額” を売主に提示するものです。

ほかにも不動産会社により、査定額には違う目的が盛り込まれている場合もあります。

それが媒介契約締結を目的とした不動産査定です。

不動産査定は媒介契約前におこなうので、目的のひとつは媒介契約を締結するためなのですが、 “媒介契約の締結だけを目的” としている場合があるのです。

つまり査定した金額で本当に売れるかどうかではなく、契約締結さえできれば査定金額の適正さを問題視しない会社があります。

不動産会社は仲介業務をおこなったとしても、最終的に取引が成立しなければ報酬を受け取ることができません。仲介業務をおこなうためには「媒介契約」の締結が必要です。

不動産会社は媒介契約の締結がなければ、スタートラインにも立てないわけです。売主からの売却依頼を受けるためには、査定額は低いより高いほうがよいことは当然といえるでしょう。

そこで他社では出さないような “高い査定金額” を提示し、媒介契約を締結したあとは1ヶ月ほど仲介活動をおこなったのち、「反応が悪い」などの理由で売主に対して、売出し価格の値下げを提案しようとするのです。

複数の会社から査定をしてもらい、とび抜けて高い査定金額は注意が必要です。

 
 

まとめ

不動産査定には3つの方法があります。対象不動産によって適した査定方法もあれば、複数の査定方法を用いることもあります。

査定金額は売出し価格を決定する重要な要素ですが、故意に高く査定するケースについても解説しました。適正な査定をおこなう会社と信用できない会社があります。

複数の会社に査定を依頼することにより、適正な価格を知ることができます。複数査定が鉄則であることを覚えておいてください。

不動産をオークションで売る! 以前は考えられなかった方法ですが、現代では可能になっています。仲介よりも高く売ることができると言われていますが、不動産の売却は不動産会社に依頼するのが常道です。

オークションと仲介とではどのような違いがあり、オークションのしくみや本当に高く売れるのかなど疑問点もありますが、興味をもつ売主さんもおられるはず。ここでは不動産を売る時の選択肢として、オークションの概要について解説します。

 
 

不動産オークションは20年の歴史

日本でオークションというと裁判所がおこなう “競売” が代表的です。しかし競売に売主として参加することはできません。オークションの先進国アメリカでも「不良債権処理」として、不動産をオークションにて売却するようになったのでした。

日本で競売以外のオークションができるようになったのは、1999年6月に規制緩和されてからです

よく知られているヤフオクでは1999年9月に運用開始しています。

インターネットで調べると数サイトほど、不動産オークションサービスをみつけることができますが、アメリカほどの普及はされていません。

ある程度の実績を残しているのは前述のヤフオクと、ヤフオクと提携をしているピタットハウスのマイホームオークションです。

オークションで活発に商品が売買されるには、参加者が多くなければうまくいきません。出品者はもちろんですが購入する人の多さがカギを握ります

 
 

仲介とオークションの違い

不動産売却の一般的方法が仲介ですが、オークションとはどのような違いがあるのでしょう。

  仲  介 オークション
売出し価格 最高価格 最低価格
期  間 特になし 期間を設定
仲介手数料 必要 必要
媒介契約 専属専任・専任・一般 専属専任

表にもとづいて解説します。

    1. 売出し価格

仲介の場合は売出し価格を決めて仲介する不動産会社と媒介契約を締結し、販売活動をおこなっていきます。売出し価格で購入者が決まると契約することになり、場合によっては値下げ交渉にすすむこともあります。

オークションでは最低価格を決めて出品するので、入札する人は売出し価格以上の金額を提示しなければオークションには参加できません。落札価格を決める方法には2通りあります。

      • 競り上げ

オークション参加者は期限内に何度でも応札でき、応札のたびに金額が上昇していきます。最高値が常に更新される方式で、物品のオークションなどでは通常の方法です。

      • 入札方式

期限内に応札する人は買付希望金額を入札し、最高値の人または融資利用や使用目的を考慮して売主が落札者を決定します。不動産オークションでは入札方式を一般的に採用することが多いです

    1. 期  間

仲介の場合は期間について特に期限は決めず、媒介契約の種類によって3ヶ月間の仲介活動期間がありますが、期限がきたら再契約をおこなうことが可能で、基本的に期限はないといえます。

オークションは期限を決めておこないます。1ヶ月~1.5ヶ月が一般的なようです。

    1. 仲介手数料

仲介は媒介契約にもとづいておこなうので、当然ですが取引が成立すると仲介手数料が必要です。

一方オークションは、オークションサイトに売主が直接申込むケースと、不動産会社経由でオークションサイトに申込むケースがあります。

直接申込んだ場合でも、査定金額に納得して出品をおこなう段階では、オークションサイトが指定する不動産会社との媒介契約をおこなうことになります。

    1. 媒介契約

媒介契約の種類は、仲介でおこなう場合は専属専任媒介・専任媒介・一般媒介と3種類の方式から選択しますが、オークションでは専属専任媒介が原則です。

 
 

日本においてオークションが普及しない理由

日本では20年前に規制緩和したときの期待に反し、不動産オークションはあまり普及していません。原因はアメリカと日本との資産評価と、資産に対する価値観の違いではないかと想像できるのです。

オークションのシステムは「できるだけ高く売る」という、売主側の立場に立った価格決定メカニズムであることを先に述べました。競り上げ方式であっても入札方式であっても、売主は出品価格以上で取引できるのですが、買い手がつかない場合もあるわけです。

対して仲介では査定結果に基づき売出し価格が決定されます。買い手は売出し価格で購入するのであれば取得可能ですが、できるだけ安く買いたいため「値交渉」になるケースが多く、売主は売出し価格より低いですが最低ライン以上であれば売渡しに応じます。

つまり「できるだけ安く買いたい」という、買主側の立場に立った価格決定メカニズムが仲介といえるのです。

日本では不動産の評価をおこなうにあたり原価法による積算価格が主流であり、土地の公示地価と建物の構造・築年数により不動産価格がほぼ決定します。オークションで高く売れるためには、積算価格で計算されない「付加価値」を買主が認めプレミアムをつけるメカニズムが必要です。

しかし日本ではよほど特徴があり希少価値が高く、プレミアムをつけてでも購入したいと思う物件をみることはあまりありません。

アメリカでみられる価値の高い物件には、たとえば築年数が古く建物そのものに歴史がある物件や、著名人が暮らした邸宅など、オークションで価格がつり上がりやすい条件が整っていると考えられるのです。

なぜこのような違いがあるのか、理由のひとつとして “地震国日本とアメリカの違い” をあげることができます。アメリカでは地震被害のある地域はごく一部ですが、日本は全国すべてが危険地帯です。

築年数の古い建物=耐震性が劣る

このため、建物に付加価値を認めることができない……といえるのではないでしょうか。

 
 

不動産オークションの注意点

不動産オークションサイトを運営するのは、宅地建物取引業者とは違います。不動産の仲介業務をおこなう不動産会社は、宅地建物取引業法による許可を受けた宅地建物取引業者でなければなりませんが、オークションサイトの運営は宅地建物取引業にはあたらないのです。

そのためオークションによる取引により、売主や買主になんらかの損害やトラブルがあった場合、損害の補償やトラブルの解決を図る法的なしくみはありません

そこでオークションサイトでは取引のさい、免許のある宅地建物取引業者を仲介会社として介在させ、公正な取引ができるようにしています。

一方、不動産取引は個人間でも法律的には可能です。インターネット経由による個人間売買も可能であり、宅地建物取引業者が介在しない取引は理論上可能なわけです。

オークションサイトのなかには、売主と買主を直接結びつける “マッチングサイト” 的なものも考えられます。このようなサイトをとおして、不動産取引の仲介手数料を省くために、個人間取引をおこなうことは危険なことです。

瑕疵担保責任や債務不履行など不動産取引には、専門家が介在しないと解決できないトラブルが起こるものです。

たとえばフリマアプリ「メルカリ」では、利用規約で不動産の出品禁止を明記していますが、不動産の個人間取引を推奨するようなサイトが存在することも事実です。個人間取引は自己責任です気をつけてください。

 
 

まとめ

不動産をオークションで売却する方法についてご紹介しました。不動産を売りたい人にとって「早くそして高く売りたい」との希望は誰もが抱くものです。

高く売れる可能性に期待してはじまった不動産オークションですが、まだまだ成長段階の手前といえる状況です。オークションで売り出してみたが結局売れずに、不動産会社に仲介でお願いしたという体験者の声も聞くことがあります。

売却の依頼を受けるなかには「これは高く売れそうだ! 」という物件は実際にあります。仲介でおこないますがオークションでもいけそうな物件です。ただそのような物件はやはり数少なく、オークションを試してみても、無駄な時間を費やすことになる可能性もあります。

もしオークションを試してみたい場合には、仲介を依頼する不動産会社に相談し、1ヶ月程度の期間限定でやってみることをお勧めします。

媒介契約が締結され不動産会社は売却活動を開始します。早い段階で担当者からは「オープンハウス」をおこないたいとのプランがでてきます。

購入者は必ず物件の内覧を経て決断に至るので、内覧希望者が現れるのを待つよりも、積極的に募集をかけるオープンハウスは “攻め” の営業スタイルといえるのです。

売主はオープンハウスの場にいることはありませんので、どのようにおこなわれているのか知ることはありません。しかし大切な資産を継承する人をみつける大事なイベントです。

ここではオープンハウスの実際を解説し、最近用いられることの多くなった “演出方法” についてもご紹介いたします。

 
 

オープンハウスの目的

オープンハウスは「見る、確認する、検討する、決断する」と、不動産購入までの必須プロセスを会場でおこない、早い場合にはその日のうちに購入申込されるほどインパクトがあるものです。

      • 来場者が多くなりそうな日程と期間
      • 物件の現況に適した演出方法

これらを検討し「早く売れる」戦略を立てるのがオープンハウスの鉄則です。

ほかにも不動産会社としての目的が実はあります。

      • 会社を知ってもらう
      • 不動産の売却を検討中のお客さまを集客する
      • 中古住宅を探しているお客さまの集客

このような狙いも積極的に実施したい理由のひとつになっています。また通常の内覧よりもオープンハウスが有利と考えられる次のような特徴もあるのです。

      1. 内覧する場合には事前予約が必要ですが、オープンハウスであれば都合のよい時間、買い物ついでにたまたま時間が空いたなど、あまり時間拘束のない状態で見にくることができます
      2. 予約の必要な内覧はいわゆる “ひやかし” でやってくる人はあまりいませんが、オープンハウスは “ひやかし”が許される雰囲気があります、そのため軽い気持ちでやってきたはずの来場者が、購入することになる可能性も意外と多いものです
      3. 購入するかたのなかには同時期に開催されている、あちこちのオープンハウスをスタンプラリーのごとく巡り歩き、最終的に第一候補を絞りこもうと考える人もいます

注目されるような物件であれば1日に10名を超える来場者があるケースもあり、集客手段としても不動産会社は物件があれば、優先的におこないたい営業手法なのです。

 
 

オープンハウスの効果

不動産会社はオープンハウスを販売活動の柱として据えます。その理由は、オープンハウスのほうが購入に至りやすい心理的な作用があり、早期売却が可能と考えられるのです。

      1. 演出が効果的な場合、購入後のイメージが膨らみます
      2. オープンハウス(売主居住中の物件の場合)では売主不在のため、ゆっくり時間をかけて細かくチェックが可能
      3. ほかの内覧者の存在を意識し、はやく決断しなければ「売れてしまう! 」という切迫感を感じることも

オープンハウスと異なり内覧の場合は、上記のような心理的作用は薄れてしまい、結論が遅くなることや購入意欲がなくなることも考えられます。機会をつくれるのであれば、オープンハウスが望ましいと考える大きな理由なのです。

また売却物件には所有者が居住中の場合と空き家の場合がありますが、居住中でもオープンハウスは可能です。

居住中では家具や家電そしてさまざまな小物や生活グッズ類がたくさんあり、室内の劣化具合などを確かめることが不可能な場合があります。また売主が立ち会う内覧では、不動産会社の担当者に突っ込んだ質問ができないことも多くあるでしょう。

その点、居住中であってもオープンハウスでは、売主には外出してもらうことが多く、来場したお客さまは納得のいくまで隅々を点検できるのです。

逆に空き家の場合は、生活イメージが浮かばず殺風景すぎるものです。そこで空き家のオープンハウスでは、ある程度の演出が必要となってきます。

 
 

オープンハウスの演出

オープンハウスは来場者に対し購入決断を促す舞台装置ともいえるのです。そのためには舞台の演出が重要です。

お客さまを迎えるのは基本的に室内ですが、戸建住宅ではときに玄関前での出迎えをおこなうこともあります。心地よく入室していただく雰囲気づくりが玄関あたりには必要でしょう。

入室するとほとんどの場合リビングが最初のポイントです。窓から入る明るい光や庭の花々が、はじめて訪れたことを感じさせず暖かい気分にさせてくれるかもしれません。

さりげなく物件の特徴を教えてくれる営業マンの態度は、警戒感もうすれて会話もはずみ、滞在が1時間を超えることもあるでしょう。

来場者の疑問などに答える過程でじょじょに不安点が解消され、購入を決断する心の動きがみえてきます。クロージングのタイミングがこうして訪れるのですが、その陰には効果的な演出が影響しているかもしれないのです。

売主が居住中の場合には室内の整理・整頓が、空き家の場合は殺風景さをすこしでも緩和できる、簡単なディスプレーなど効果的です。演出とはいっても、もちろん費用をかけずにおこなう程度のことですが、一輪挿しがポンと置いてあるだけでも違います。

来場者と営業担当が短い間で、人間関係を形成できる環境づくりが大切なのです。

環境づくりを積極的にやろうという動きも、不動産業界に実は生まれています。次に「ホームステージング」といわれるアメリカ発祥の演出方法をご紹介します。

 

広まってきたホームステージングとは?

日本では住宅産業の主力は新築住宅でした。しかし新築需要の落ち込みにより中古住宅・マンションの売買件数が相対的に増加、新築のモデルハウス・ルームで見られた販売手法が中古物件でも見られるようになってきたのです。

戸建住宅展示場や分譲住宅のモデルハウス、新築マンションのモデルルームには、住空間を演出する家具・家電やインテリアディスプレイが効果的に配置されています。

中古物件においても、購入後のベネフィットを感じられる効果が得られることから、新築同様の演出効果を狙った手法がおこなわれるようになってきたのです。ホームステージングは2013年ころに米国から考え方が導入され、日本でも取り組む企業が生まれました。

ホームステージングはホームステージャーと名づけられた専門家がおこないます。

ホームステージャーは民間資格であり、資格を創設して専門家の育成を図る団体があります。1級と2級の資格認定講座を受講して所定の試験に合格すると、資格が与えられるシステムをとっています。

中古住宅の演出業務以外に不用品の処分や家具のレンタルなど、住空間で生れるあらゆる要求に合わせて、住宅内部を「見せる・片づける・整理する」に特化した職能を提供しているのがホームステージャーです。

 
 

まとめ

オープンハウスの目的や効果について、売主さんがあまり知ることのない、不動産業界の営業手法についてお伝えしました。オープンハウスがきっかけで新居を手に入れたお客さま、オープンハウスのおかげで思ったより早く売却できたお客さま、不動産会社にとっても重要なイベントです。

不動産売却での位置づけがきわめて大きいからこそ、演出方法にも変化が生まれることは頷けることでしょう。そのような背景のなか、費用対効果の面でホームステージングは、一定の評価を得てきたと考えられます。

ホームステージングは専門家がおこなう演出方法ですが、媒介契約にもとづく仲介手数料には含まれない費用になります。もし導入しようとお考えの場合は、不動産会社に相談してください。

ホームインスペクションは中古住宅の構造耐力上主要な部分や雨漏りなど、重要な不具合の有無や劣化具合を建築士が点検し、買主が購入するさいの判断材料を提供することが目的です。

ホームインスペクションは10年ほど前から、一部の建築士事務所などがおこなっていたサービスです。中古住宅の売買において、買主が建築の専門家から意見を聞くことにより、冷静に購入を判断できるメリットが評価されていました。

平成30年4月1日から宅地建物取引業法の改正により、「建物状況調査」に関し不動産会社(宅地建物取引業者)は、媒介契約締結時に説明をするなどの義務化がなされました

売主が売却を依頼するさいには説明を受ける事項になっています。

ここではホームインスペクション(住宅診断)の内容と、宅建業法における「建物状況調査(インスペクション)」に関する規定について解説します。

 
 

ホームインスペクション(住宅診断)とは?

ホームインスペクションの目的は、専門家である建築士によって客観的かつ公正な立場で、取引対象の住宅を点検・調査し売主および買主に対し報告し、現状について理解してもらうことです。

ホームインスペクションの調査結果は買主には貴重な情報となります。

中古住宅は1年が経過するか一度でも使用履歴があるものと定義されています。経過年数が長いと、新築とは異なり修繕すべき部位や交換が必要な設備などもあります。

住宅に使用される資材や器具などの、交換サイクルやメンテナンス頻度はある程度決まっています。将来にわたって必要な修繕工事やメンテナンスの計画を立てるさいに、インスペクションの結果は活用できるものなのです。

特に外壁や屋根のメンテナンスは耐久性に影響があり、定期的な実施が必要なものといえます。マンションの場合は共用部の修繕計画は管理組合により立案されますが、戸建住宅は所有者本人が計画を立て実施しなければなりません。

ホームインスペクションにより現状の劣化具合を把握し、数年後~10年後におこなう工事メニューがリストアップされると、戸建住宅の長期修繕計画が立てられるのです。

ムインスペクションを実施してから購入を決断したい』といった、要望がだされる場合があります。売主としては『もしも不具合や劣化具合を指摘されたら……』と、不安になるものですが、調査をおこなう専門家は欠点をみつけ出そうなどの意識はありません。

客観的に物件の “健康状態” を把握するだけです。売主にとっても現在の物件状況を知っておくことは大切なことです。

 
 

ホームインスペクション(住宅診断)の実際

ホームインスペクションは住宅の外部と内部を点検し、劣化や不具合の状況を調査するもので、調査項目の一例を示すと以下のようなものになります。

  項        目 点検部位
外部 基礎 基礎表面
基礎配筋
基礎の高さ
外壁 外装材表面
外装材表面
シーリング
屋根 屋根表面
雨どい
軒天井 仕上材表面
その他  
室内 床全体 床の傾斜
1階床 床のたわみ
2階床 床のたわみ
3階床 床のたわみ
居室床 仕上材表面
水廻り床 仕上材表面
壁や柱の傾斜
仕上材表面
天井 仕上材表面
その他  
床・屋根の骨組 床下 床下底面
防湿層の施工
乾燥状態
断熱材の状態
基礎立上がり
小屋裏 乾燥状態
断熱材の状態
梁・桁・小屋組
雨漏れの痕跡
その他  
設備 給排水給湯設備 漏水
さび
劣化
換気設備 動作
外壁貫通部

さらに新築時や増築時の建築確認済・検査済の年月日と番号を、売主が保管している場合は書類で確認します。もし確認済・検査済証がない場合には、所在地の市区町村建築指導担当部署にて、計画概要書の閲覧などにより確認します。

点検方法は基本的に「目視」によります。点検器具としては水平器・水準器・クラックスケール・打診棒・コンベックス・探知機などを用いることが多いです。

 
 

ホームインスペクション(住宅診断)の実際

ホームインスペクションは住宅の外部と内部を点検し、劣化や不具合の状況を調査するもので、調査項目の一例を示すと以下のようなものになります。

  項        目 点検部位
外部 基礎 基礎表面
基礎配筋
基礎の高さ
外壁 外装材表面
外装材表面
シーリング
屋根 屋根表面
雨どい
軒天井 仕上材表面
その他  
室内 床全体 床の傾斜
1階床 床のたわみ
2階床 床のたわみ
3階床 床のたわみ
居室床 仕上材表面
水廻り床 仕上材表面
壁や柱の傾斜
仕上材表面
天井 仕上材表面
その他  
床・屋根の骨組 床下 床下底面
防湿層の施工
乾燥状態
断熱材の状態
基礎立上がり
小屋裏 乾燥状態
断熱材の状態
梁・桁・小屋組
雨漏れの痕跡
その他  
設備 給排水給湯設備 漏水
さび
劣化
換気設備 動作
外壁貫通部

さらに新築時や増築時の建築確認済・検査済の年月日と番号を、売主が保管している場合は書類で確認します。もし確認済・検査済証がない場合には、所在地の市区町村建築指導担当部署にて、計画概要書の閲覧などにより確認します。

点検方法は基本的に「目視」によります。点検器具としては水平器・水準器・クラックスケール・打診棒・コンベックス・探知機などを用いることが多いです。

 
 

ホームインスペクションと瑕疵担保責任

売主は、ホームインスペクションと瑕疵担保責任についても、理解しておく必要があります。

令和2年4月1日から民法が改正され、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」に変りました。名称は変わりましたが適用される瑕疵が隠れた瑕疵だけでなくなり、追完請求や代金減額が認められるようになったなどの違いはありますが、概念に大きな違いはありません。

問題はホームインスペクションにより調査したとしても、『瑕疵がない、契約不適合となる現象がない』ことを証明するものではないことです。さらに調査物件が、本来有すべき性能を満たしていると保証するものでもないのです。

ホームインスペクションにより売主や買主が知り得ることは、劣化具合や修繕工事の必要性と、次の2点に関する専門家の見解になります。

      • 構造耐力上の主要な部分に明らかな危険性がないか
      • 雨漏りの履歴がみられることおよび将来の可能性について

点検方法は目視によるものであり、見えない部分を解体しておこなうものでもないので限界があります。しかし住宅の構造や施工方法の知識がない者が点検するのと異なり、一応の信頼性が期待できるわけです。

 
 

既存住宅売買瑕疵保険の加入手続き

新築住宅には売主や施工会社に10年保証が義務づけされています。その場合多くの事業者は「瑕疵保険制度」を活用し保証保険に加入しています。

中古住宅にも最大5年間の保証が適用される保険があり、「既存住宅売買瑕疵保険」といいます。

保険加入を申込めるのは売主・買主どちらからでも可能になっており、保険会社に登録された検査員(検査機関)が検査をし、対象物件と認められるか必要な修繕工事をおこなうことにより、保険加入ができるようになります。

この検査は宅建業法で定めた「建物状況調査」にも該当しますので、保険申込の前にホームインスペクションを依頼し、劣化状況が一定基準を満たしていた場合、保険会社の検査を省略して瑕疵保険に加入することも可能になりました。

万が一引渡し後に「契約不適合責任」を問われる事象があった場合、瑕疵保険によりカバーできる可能性もあるので、ホームインスペクション+瑕疵保険は検討したいものです。

 
 

宅地建物取引業法が定めた「建物状況調査」の規定

ホームインスペクション(住宅診断)は平成30年4月1日から、宅地建物取引業法において建物状況調査として制度化されました。宅建業法第34条の2第1項第4号、第35条第1項第6号の2、第37条第1項第2号の2にて規定しています。

それぞれの条文は下記リンクから確認してください。

不動産会社(宅地建物取引業者)の義務として、建物状況調査に関する事項の説明と契約書類への明記を定めています。

      1. 媒介契約時において不動産取引の当事者に対し、ホームインスペクションをおこなう専門家について、不動産会社があっせんするかしないかを明記する
      2. 不動産取引の当事者(売主または買主)がホームインスペクションを専門家に依頼し、住宅診断をおこなった場合は、その概要について重要事項説明書に記載し説明する
      3. 上記の住宅診断をおこない、「建物の構造耐力上主要な部分」または「雨水の浸入を防止する部分」の状況について売主、買主の双方が確認したことを宅建業法第37条書面(売買契約書)に記載する

ホームインスペクションの結果は、「建物状況調査報告書」などの名称がついた書類として、依頼した売主か買主に専門家である調査技術者から渡されます。重要事項説明書を作成する宅地建物取引士は、建物状況調査報告書にもとづき必要事項について説明書に記載し、売買契約後は重要事項説明書と売買契約書に併せて「建物状況調査報告書」を買主が保管します。

 
 

ホームインスペクション(住宅診断)の実施率と今後の課題

ホームインスペクションが不動産取引に導入されたわけですが、実施率はまだ低いものになっています。

施行からまだ2年ですので、まだまだ周知されていない面もあります。また制度の建付けが「専門検査員のあっせん有無」についての告知だけであり、積極的にホームインスペクションを勧めるものではないことも原因と考えられます。

また「専門検査員のあっせん有無」についての告知は媒介契約時と規定されており、一般的に売主との媒介契約は締結されますが、買主が正式に媒介契約を締結する慣例はありません。

つまり買主がホームインスペクションについて知らされるのは、売買契約前の重要事項説明時であり、すでにホームインスペクションをおこなうタイミングではないことも大きな理由と考えられます。

今後は制度のしくみが変更されると、買主からのホームインスペクション依頼が増加する可能性はあります。売主としては断ることもできますが、インスペクションの拒否は物件の信頼性に係ることであり、商談が進まない理由になる恐れもあります。

むしろ売主が積極的にホームインスペクションをおこない、専門家による客観的な建物評価を受け、買主と物件情報を共有する姿勢が大切ではないでしょうか。

 
 

まとめ

ホームインスペクションについて解説しました。まだまだ一般に知られていない制度かもしれません。しかし調査により物件について正確な情報を知ることができた買主は、不安や疑問点なく売買契約に臨むことができています。

売主様にもぜひ、ホームインスペクションの意義を理解していただき、理想的な形で不動産取引に「建物状況調査」が根づくことを願うものです。

ホームインスペクションをおこなう全国の建築士は『日本建築士会連合会 既存住宅状況調査技術者の検索』で検索が可能です。

既存住宅瑕疵保険の詳細については『住宅瑕疵担保責任保険協会』で詳しい内容を確かめてください。

現在お住いの住宅を売却し別の住宅を購入するには、住宅ローンを利用するのがほとんどです。なかには現在のお住いに住宅ローンの借入残高(残債)があり、売却によって得た代金で残債を返済し、新たに住宅ローンを組んで新居を購入するケースもあります。

住み替え買い替えのとき迷ってしまうのが、『売るのが先か買うのが先か? 』ということではないでしょうか。

ここでは、どちらが先かを考えるにあたって、クリアしなければならない条件や費用面などと、売却と購入の手順についてわかりやすく解説します。

 
 

住み替え・買い替えは「売る」「買う」のタイミングが重要

住み替えや買い替えのさい、現在居住中の住宅には住宅ローンの抵当権が設定されていない場合、あるいは設定されていても借入残高分を手持ち現金で一括返済できる場合は、まったく問題ありません。

売却代金でローンを完済する場合にタイミングが重要になるのです。ここでは次の3通りのケースに分けて注意するポイントを解説します。

      1. 現在の住まいの売却を先におこなう
      2. 新しい住宅を先に購入する
      3. 売却と購入を同時におこなう

 

「売る」が先だと

自宅を売却するには、住宅ローンの借入残高よりも高い金額で売れることが前提になります。一括返済により自宅に設定されていた「抵当権」を解除し、抵当権の抹消登記をしたうえで買主さんに引渡すことが条件だからです。

売買代金を受領するのは物件引渡と同時なので、引渡しまでに仮住まいを見つけ、引越しをしておくことが必要です。代金を受け取り、住宅ローン融資をおこなった金融機関に返済し売却は完了します。

住み替える住宅の購入手続きは売却後にスタートです。

新居を購入する手順

    1. 住替え条件にあいそうな物件を探す(事前に探すことは可能)
    2. 住宅ローンの事前審査を受ける
    3. 事前審査がOKになり売買契約を締結
    4. 住宅ローンの本申込
    5. 融資実行により引渡しを受ける

「買う」が先だと

仮住まいをしたくない場合や、購入したい物件がすでに決まっており、自宅を売却してからでは遅いので「買う」を先行させたいケースも多いものです。

売却も購入物件の引渡し条件に合わせながら、「売り買い同時」を目差して販売活動をおこないます。しかし購入までに売れない場合もあるでしょう。

売却が間に合わない場合、新居の購入にも住宅ローンを利用するので、自宅のローンと新居のローンとを「二重払い」しなければなりません。二重ローンの返済ができる充分な収入があれば可能ですが、原則的に住宅ローンは “自分が住む場合” に限定されるので、金融機関が認めてくれなければ新居の住宅ローンは適用できません

この問題を解決するのが「住替えローンや買換えローン」です。

買換えローンとは

既存の住宅ローン残高と新居の住宅ローンを一本化して、現在の住宅が売却できたときに、既存ローン分を一括返済する条件でおこなう住宅ローンです。

 
 

「売る」と「買う」を同時にできる?

売却が先だと仮住まいが必要となり、購入が先だと一時的ですがローンの返済額が大きくなります。もっとも負担のすくないのが「売り買い同時」です。

売買契約を売り買いそれぞれ締結し、引渡しを同時におこない引越しも引渡日におこなうという “離れ業” になります。

金融機関も次の手続きを同時におこなうのです。

      • 既存のローン抵当権抹消
      • 新居のローン融資実行

金融機関と仲介する不動産会社との密接な連携プレーが必要ですし、ほかに特約条件をつけ『引渡しと引越しに数日の余裕をもたせる』方法もあります。

 
 

買取り保証をつけた買い替え計画

もっとも負担のすくない「売り買い同時」ですが、購入物件の売買契約が締結され、引渡しが近づいても、まだ売れないこともあるでしょう。

収入条件により「買換えローン」が利用できないときは、購入することができなくなる可能性もあります。購入できないばかりか契約違反により、違約金の支払いを請求されることにもなりかねません。

そのような状態を防ぎ、万が一売れなくても買い替えを進められるのが「買取り保証」です。

買取り保証とは?

売却したい期限までに売れない場合、不動産会社に買取ってもらうことを条件に売却の仲介をする方法です。

買取り保証額にもとづいて資金計画を立て、新居の購入が可能になることが必要です。

買取り保証額で現在の住宅ローンの一括返済が可能であることを確認して、仲介する不動産会社に売却と購入を依頼します。

 
 

「売り買い同時」の手順

買取り保証をつけて売り買いを同時におこなう具体的な手順は次のとおりです。

手順 売却 購入
媒介契約締結 媒介契約締結
販売活動 物件探索
売買条件交渉 売買条件交渉
抵当権抹消事前相談 住宅ローン事前審査
売買契約 売買契約
抵当権抹消準備 住宅ローン本申込
決済・引渡し・一括返済 決済・引渡し・融資実行

    1. 媒介契約締結

仲介会社と相談し買い替え計画を綿密に立てます。

・査定をおこない売却予定の最低目標額と買取り保証額の決定

・借入予定額を含めた新規購入物件の資金計画

・売却と購入の媒介契約を締結

    1. 販売活動と物件探索

現在の住まいの販売活動と新規物件探しを同時にスタートしましょう。

    1. 売買条件交渉

購入希望者が現れたら売買条件を調整し、新規購入物件についても売買条件を調整します。

    1. 抵当権抹消事前相談と住宅ローン事前審査

金融機関と抵当権抹消についての事前相談をおこない、新規物件の事前審査もおこないます。

    1. 売買契約

売却・購入それぞれの売買契約を締結します。

    1. 抵当権抹消準備と住宅ローン本申込

金融機関に抵当権抹消手続きの準備を開始してもらい、新規購入物件については住宅ローンの本申込です。

    1. 決済・引渡し

決済・引渡し日を決定し引越し準備をおこないます。売却代金を受け取り一括返済し、購入物件の融資実行と代金の支払いをおこない「売り買い同時」が成立します。

 
 

買取り保証の応用パターン

住み替えや買い替えを考える動機として次のようなケースがあります。

      • 検討が浅く購入した住宅は失敗だった
      • 家族構成やライフスタイルが変化した
      • 転勤により現在の住宅に戻ることがなくなった
      • 将来を考えて老後の生活スタイルを準備したい

動機によっては新居を購入しないケースもあると考えられます。

現在のお住いを売却して家族と同居するケース、老人ホームや介護施設などに入所するケースもあるでしょう。このようなケースも「住み替え」といいます。

新居を購入することはありませんが、売却代金を入居一時金にする、あるいは家族と同居のためにおこなうリフォーム費用に充てる、といったこともあるでしょう。その場合も売却のタイミングが急がれるときは、買取り保証つきの仲介を依頼すると、資金計画に狂いを生じることはありません

 
 

まとめ

売却と購入のタイミングはできるだけ近くすること、最善は同時におこなわれることです。

買い替えの資金計画や仮住まいの確保など、それぞれの事情によって条件が異なりますが、売主さんご自身が悩むよりも不動産仲介会社に相談すると、案外答えは簡単にでるもの。

信頼できる不動産会社をみつけてください。

不動産を売却する過程で、不動産会社に査定を依頼するところから、最終的に引渡しをするまでにはさまざまな書類が必要になります。

ここでは時系列にしたがい

      1. 媒介契約時
      2. 売買契約時
      3. 決済・引渡し時

に区分して必要な書類を、誰が準備するのかが一目瞭然わかるよう、そして主に売主さんが準備しなければならない書類について、目的が理解できるよう解説していきます。

 

必要な書類とその時期がわかる一覧表

必要書類の一覧表です。

「媒介契約時」「売買契約時」「決済・引渡し時」を横に、「売主」「仲介会社」「司法書士・金融機関」を縦にし、さらに必要書類を記載しています。

◎印は必ず必要、△は場合によって必要、〇は該当する場合に必要な書類です。

売主が準備媒介契約時売買契約時決済・引渡し時
登記済権利証は登記識別情報通知
自動車運転免許証、健康保険証、マイナンバーカード
印鑑証明書  
住民票 
戸籍附票  
固定資産評価証明書  
固定資産税納税通知書  
住宅ローン残高証明・返済表  
建築確認済証・検査済証 
建築設計図書  
住宅性能評価書 
かし保険証書または付保証明書 
マンション管理規約  
マンション購入時パンフレット 
住宅設備機器取扱説明書  
耐震基準適合証明書または耐震診断書 
アスベスト使用調査報告書 
近隣と交わした覚書や建築協定書等 
測量資料 
既存住宅診断報告書 
賃貸借契約書 
銀行預金通帳  
仲介会社が準備媒介契約時売買契約時決済・引渡し時
重要事項説明書  
重要事項説明添付書類  
管理に係る重要事項調査報告書  
売買契約書  
物件状況確認書・設備表  
引渡し確認書  
引渡し時精算計算書  
手付・代金・清算金領収書 
管理組合・管理会社に提出する所有権移転に係る各種届出書  
司法書士・金融機関などが準備媒介契約時売買契約時決済・引渡し時
登記原因証明情報  
委任状  
抵当権抹消書類  

 

 

売主が準備する書類

売主さんが準備する書類はたくさんの種類があり、引渡しになくてはならないものもあります。漏れのないよう事前に準備するようにしてください。

また売却する物件によっては、ここで例示しきれないさまざまな書類がありますので、仲介の不動産会社からよく説明を聞き書類の確認をお願いします。

 

 

売主本人であることを証明する書類

1.登記済権利証又は登記識別情報通知

いわゆる「権利書」といわれる書類ですが、平成18年~平成20年の期間で「登記済権利証」が「登記識別情報」に変っています。この期間以降に登記した場合は「登記識別情報通知」を所有者が保管しています。

所有者以外が「権利書」を保管していることは通常あり得ないので、所有者であることを確認するために見せていただきます。また引渡しが近づいたころになり『権利書がみつからない』と、大騒ぎになるケースもあるので事前に確認しておきましょう。

2.自動車運転免許証・健康保険証・マイナンバーカード

契約および引渡しなどの手続きにおいて、本人が記名・押印などをおこなったことを証明するため、本人確認書類を保存することが法律において定められています

 

 

仲介活動に必要な書類

    1. 固定資産評価証明書

固定資産評価証明書は契約時において買主に渡す、重要事項説明の添付資料です。ほかにも司法書士が登記をおこなう時の登録免許税を計算する根拠にもなる書類です。不動産所在地の市町村が発行しますが、本人以外が取得するには委任状が必要です。

    1. 固定資産税納税通知書

引渡し時に「固定資産税・都市計画税」の清算をおこないます。引渡日を境に日割り計算をおこなうのが一般的ですが、納税額の確認のため準備いただきます。

    1. 住宅ローン残高証明・返済表

住宅ローン返済中の物件の場合、不動産査定や売買価格を確定するさいに、残高を確認します。

売却代金で抵当権抹消が可能かどうか、さらに引渡し時の抹消手続き確認ためにも必要です。

    1. 建築確認済証・検査済証

新築時や増築時などの建築確認済と検査済の年月日や番号は、重要事項説明のさいの説明事項です。

また、設計図書も保管していれば買主に引き継ぐ書類です。

    1. 住宅性能評価書

新築住宅や中古住宅で「住宅性能評価」を受けた住宅の場合は、性能評価書について重要事項説明のさいの説明事項です。これも買主に引き継ぐ書類です。

    1. かし保険証書または付保証明書

売主が新築住宅を建てた、または購入した物件の場合、かし保険が継続して適用され購入した買主に引継ぎできる場合があります。これも重要事項として説明書に記載しますし、買主に引継ぐ書類となります。

    1. マンション管理規約

区分マンションの場合は、管理規約や使用規則などを買主に引継がなければなりません。また管理規約に記載された事項には、重要事項として説明義務のある条項があります。

    1. マンション購入時パンフレット

販売資料の作成には区分マンションの新築時パンフレットが必要です。買主にとってもマンション全体の物件概要を知るためには役に立つ資料となります。

    1. 耐震基準適合証明書または耐震診断書

耐震基準適合証明を受けた住宅、または耐震診断を受けた住宅は、その結果と内容について重要事項として説明しなければなりません。また買主にとっても必要な書類です。

    1. アスベスト使用調査報告書

アスベスト使用調査を行った物件の場合は、その結果を重要事項説明しなければならない事項になっています。

    1. 近隣と交わした覚書や建築協定書等

売主が取得時に近隣と取り交わした覚書なども必要です。たとえば越境している塀や付属建物などに関する覚書などです。また建築協定が為された区域については建築協定書も必要です。

    1. 測量資料

分筆や合筆を繰り返し土地の寸法が明確でない場合や、筆界が不明などの理由により、現況測量または確定測量をおこなった測量図などの書類も必要です。

    1. 既存住宅診断報告書

既存住宅診断制度(ホームインスペクション)は売主または買主が利用できるものですが、どちらが依頼しても重要事項説明書に診断結果の概要を記載する必要があります。

    1. 賃貸借契約書

賃貸物件として利用している建物では、入居中の賃貸借契約書を買主に引き継がなければなりません。また重要事項説明においても説明義務のある事項です。

 

 

所有権移転に必要な書類

1.登記済権利証又は登記識別情報通知

「売主本人であることを証明する書類」でも説明した「権利書」です。所有権移転には必要な書類ですが、万が一紛失などにより無い場合には「本人確認情報制度」によることもできます。

2.印鑑証明書

登記に必要な書類(登記原因証明情報や委任状)には実印を押印します。実印は印鑑登録してある印鑑ですので、証明のために印鑑証明書が必要になるのです。

3.住民票または戸籍附票

登記上の所有者住所と現住所が異なる場合は、所有権移転登記と同時に住所変更登記をします。そのため登記上の住所と現住所のつながりが表示されている「住民票」が必要です。住民票でつながりが確認できない場合は「戸籍附票」を本籍地で取得して提出します。

4.銀行預金通帳

所有権移転は決済・引渡しと同時になるのが普通です。決済時には売買代金を受取るので、口座に入金するため銀行預金通帳を用意します。

 

仲介会社・司法書士・金融機関が準備する書類

ここからは不動産仲介会社などが準備する書類です。どのような書類があるのか確認しておきましょう。

    1. 重要事項説明書

仲介する不動産会社が買主に対し重要な事項について説明する、宅地建物取引業法第35条にもとづき作成する書類です。

    1. 重要事項説明添付書類

上記「重要事項説明書」に添付する書類で、登記事項証明書・登記図面・土地測量図など10種類前後から20種類ぐらいの書類におよぶこともあります。

    1. 管理に係る重要事項調査報告書

区分マンションの場合に、仲介会社からマンション管理会社に依頼し取得できる書類です。修繕積立金や管理費など、マンションの管理にかかわる内容が記載された書類です。

    1. 売買契約書

売主と買主との間で交わされる売買契約書ですが、一般的に宅地建物取引業法第37条で定める書面を兼ねています。

    1. 物件状況確認書・設備表

物件状況を売主から買主へ告知する目的の書類、そして建物がある場合に、建物に附属する設備の有無についてと使用不可について知らせる書類です。

    1. 引渡し確認書

引渡し手続きが完了し、売主・買主が引渡しの確認のために取り交わす書類。

    1. 引渡し時精算計算書

固定資産税や家賃など引渡し時に清算して授受される金員の明細です。

    1. 手付・代金・清算金領収書

契約時の手付金、決済時の残代金、引渡し時の清算金など、買主から受け取る金員の領収書です。売主が個人の場合は印紙税がかからないので収入印紙を貼る必要はありません

    1. 管理組合・管理会社に提出する所有権移転に係る各種届出書

区分マンションの所有権を移転した場合には、管理組合または管理会社に各種届出をしなければなりません。届出書は所定の様式が決まっています。

    1. 登記原因証明情報

所有権移転に必要な司法書士が準備する書類です。売主と買主それぞれが署名捺印します。

    1. 委任状

委任状も登記に必要な書類で、司法書士が準備します。

    1. 抵当権抹消書類

売買物件に抵当権が設定されている場合、抹消のための書類を抵当権者である金融機関が準備します。

 

 

まとめ

不動産売却に必要な、売主さんが準備する書類について解説しました。

      1. 媒介契約時
      2. 売買契約時
      3. 決済・引渡し時

それぞれの時期によって必要な書類があり、決済・引渡し時にはほとんどの書類を買主さんに引渡すことになります。また、媒介契約時の売出し価格を決定するさいに、確認が必要な住宅ローン残高がわかる書類も重要です。

売却を検討しはじめたときには、すべての書類を探しだし、確認しておくことをお勧めいたします。

不動産の売却を本格的に開始してから2ヶ月近く経過し、有力な購入希望者が現れないときなど、売主さんへおこなう定期報告は嫌なものです。

売主さんは良いニュースを聞きたくてじっと待っているわけですが、なかなか心地よい報告ができず気まずいものです。

そんなときに売主さんから「来月にはなんとか売れてくれないと困るんです」などと、重要な事情を打ち明けられることもあります。

不動産売却には「早く売る方法」と「高く売る方法」があり、売却活動を開始するときには、売主さんと不動産会社との間で売却戦略について共通理解しておく必要があるのです。

ここではこの2つの戦略の違いについて解説し、売主さんに知っておいてほしい、不動産会社の本質を理解していただける情報をお伝えします。

 
 

不動産を早く売る戦略

不動産を早く売るといっても、1週間以内や10日以内など極端に早く売れることはありません。目途としては『3ヶ月以内』に売れることを不動産会社は考えます。

売却を依頼する媒介契約は、専属専任あるいは専任媒介の場合、契約期限を3ヶ月としています。一般媒介契約には制限はありませんが、だいたい3ヶ月で契約がおこなわれていることが多いでしょう。

不動産会社にとって依頼を受ける不動産は “商品” です。商品には “売りやすいor売りづらい” に関係するいくつかの特性があります。

          • 価格は安いほど早く売れる
          • 立地が良いほど早く売れる
          • 規模は大きくもない小さくもないちょうど良いものほど早く売れる

売却予定の不動産の立地と規模を客観的に評価したうえで、買いやすい価格設定だと早く売れますが、立地は良くなく規模は通常求められるものより小さいなどの場合、価格に割高感があると早期売却はむずかしくなります。

つまり早く売れるためには、価格・立地・規模のバランスが必要なのです。ただ単に安いだけではなく、需要が見込める立地や規模によって売出し価格が決まってきます

次に不動産を早く売るための戦略として、売却期間と不動産会社の選択について、もうすこし掘り下げてみましょう。

 
 
媒介契約の期間

冒頭で早く売れる期間の目途として『3ヶ月以内』としましたが、これには理由があります。

「立地」「規模」そして「価格」が早く売れる条件に合致している場合は、売出してすぐに買い手がみつかるというラッキーなことは起こり得ます。

ただし、このようなケースはよほど格安な価格設定の場合であり、ほとんどの場合は購入を検討してくれそうなお客様をみつけるまで1~2ヶ月はかかるものです。逆に2ヶ月以内で買い手が見つからない場合は、早期売却がむずかしいともいえるのです。

では買い手が見つかる期間を2ヶ月間とする、その理由は売却物件の情報伝達方法にあります。

媒介契約を締結すると不動産会社は次のような準備をおこないます。

販売開始までの準備

    1. 物件販売資料の作成
    2. レインズへの登録
    3. 自社サイトへの物件掲載
    4. ポータルサイトへの物件登録

レインズ・自社サイト・ポータルサイトどれもインターネットでの情報発信手段です。

不動産の購入を検討している人の情報収集方法は、紙媒体はもちろんですが圧倒的に多いのが「インターネット」です。

そしてインターネットへのアクセスは、物件を掲載した当日から1週間がもっとも多く、日が経過するにしたがい少なくなっていきます。つまり物件情報をパソコンやスマホで見てもらえるのはせいぜい2ヶ月間、この期間を過ぎると極端にアクセスは少なくなってしまいます。

このような理由から2ヶ月以内に買い手が見つからない場合、不動産会社は長期戦を覚悟するようになるのです。

また、2ヶ月以内に買い手がみつかっても、契約準備や融資の申込など時間がかかり、引渡しまでとなるとだいたい3ヶ月はかかるものです。

前述したように「立地」「規模」が希望に合致していると、価格次第で早く売れることもありますが、ラッキーをあてにして進めることもできませんので、早く売るとはいっても3ヶ月間で売却することを目標にします。

 
 

媒介契約の種類

早く売るためには媒介契約についても検討しなければなりません。

媒介契約には3種類あります。

媒介契約の種類

  1. 専属専任媒介契約
  2. 専任媒介契約
  3. 一般媒介契約

それぞれの詳しい内容については『不動産媒介契約の種類と売却戦略にもとづいた選択方法と注意点』をご覧いただきたいのですが、早く売ることを優先させる場合は「一般媒介契約」をお勧めします。

一般媒介契約には専任(専属専任も)媒介にはない次の特徴があります

          1. 複数の不動産会社と媒介契約を締結することにより、 “業者間の競争” 関係を作ることができる
          2. ポータルサイトにはたくさんの種類があり、1社だけの媒介契約ではすべてのポータルサイトを活用することはむずかしいもの。不動産会社が複数になるとすべてのポータルサイトに物件掲載することが可能になり、インターネットの露出度が高まる
          3. 自己発見取引が可能(売主自身が買い手を見つけることが可能)

一般媒介契約は正直なところ不動産会社はあまり望まないものです。何故なら専属専任や専任媒介であれば、3ヶ月間は最低売主側からの仲介手数料を見込むことはできますが、一般媒介は『販売活動を積極的におこなっても他社に決められるリスク』があるからです。

俗にいう “ただ働き” になってしまう可能性が高いので、専属専任か専任媒介を望むのが普通です。

しかし不動産会社が望まない一般媒介契約をあえて選択するのは、最初に述べた3つの特徴を活用したいからです。

心配になるのは『不動産会社が望まない契約方法で真剣にやってくれるのだろうか? 』ということでしょう。

一般媒介であっても1ヶ月~2ヶ月であれば、一所懸命やってくれるものです。何故ならここにも理由があります。

もしも媒介契約期間内(3ヶ月)で売れなかった場合、専任契約に変更して契約できる可能性』があるからです。このような期待感があれば不動産会社は動いてくれます。

逆に3ヶ月間で売れなかった場合そのごも一般媒介で継続してしまうと、やる気を失ってしまう可能性が高くなるのです。

 
 

専属専任媒介・専任媒介の場合

早く売りたい場合でも専属専任媒介や専任媒介によることは問題ありません。しかしどちらかというと「専属専任」は自己発見取引が禁止されるので、専任媒介のほうが望ましいでしょう。

専属専任や専任媒介の場合には、特に信頼できる不動産会社に限ります。理由は「囲い込み」を防止したいからです。

囲い込みとは?
売却を依頼された不動産会社は自社で買い手を見つけて契約が成立すると、売主・買主の両方から仲介手数料を受領できます。これを「両手」と称しますが、不動産会社にとっては両手と片手では報酬額が倍違います。
経営上は「両手」のほうが望ましく、売出し開始からしばらくの期間は、他の会社に物件を紹介させない方法をとる場合があります。つまり自社だけで客付け活動をおこなうことを「囲い込み」といいます。

媒介契約を締結した不動産会社が信頼できるとはいっても、念には念をいれたいものです。そこで「囲い込み」をおこなっていないかどうか確認する方法があります。

専属専任や専任媒介の場合は、国土交通省が指定した不動産流通機構(レインズ)に、物件を登録することが義務づけされています。

レインズには「ステータス管理」という機能があり、登録した物件の現在状況を公開しています。

ステータスには次の3つがあります。

          1. 公開中
          2. 書面による購入申込みあり
          3. 売り主都合で一時紹介停止中

囲い込みしている場合には、ステータスが本来は「1.公開中」なのに、ほかのステータスに登録し他の会社が客付け活動しないようにするのです。

ステータス管理は売主も確認することができます。

売主がステータス管理する方法
物件登録をおこなうとレインズは「登録証明書」を発行します。
必ず登録証明書を不動産会社からもらってください。
登録証明書のいちばん最後に次の3項目について記載があります。

      • 登録内容確認URL
      • 確認用ID
      • パスワード

レインズのサイトにアクセスし、IDとパスワードを入力すると、売却を依頼している物件が表示されます。
上のほうに「取引状況」の項目がありますので、ここが「公開中」になっているかどうかを時々確認するのです。

「囲い込み」は早く売れる物件でも、無駄な時間を使ってしまう危険性があるのです。

 
 

時間がかかっても高く売る戦略

時間がかかってもいいのでできるだけ高く売りたい! と希望するかたもおられるでしょう。

不動産の売却理由にはいろいろありますが、時間がかかってもよいという場合は、売却により得た代金の資金使途が特になく急がないというケースです。

価格を下げると早く売れそうだが、そうはしたくないという場合、1年間ほどの期間をいただくことが経験上多いです。

不動産の売買には季節的なことも関係し、春が最適という物件もあれば秋が売れやすいということもあります。

例えば春から夏にかけて最適な物件を秋に売り出した場合など、年内の売却はむずかしくなり、翌年の夏まで売却期間をあらかじめ設定して、売主さんには承諾を得て販売活動を開始することもあります。

この場合、媒介契約は3ヶ月ごとに再契約する必要があるので、覚えておきましょう。

不動産が高く売れる条件には次のようなことが考えられます。

不動産が高く売れる条件

  1. 売却物件の個性と購入希望者の希望がマッチする
  2. 売出し価格に合理性がある

売却物件の個性とは、単に立地条件や規模あるいは間取りや築年などの、一般的にいわれる物件概要で表現される内容ではありません。

例をあげると次のようなものです。

        • プールがついている
        • 地下室がある
        • 湖や海が眼下にできる断崖絶壁
        • 3世帯が生活できる
        • 樹齢300年の庭木がある

10人の内覧者がいたら全員が『素晴らしい』と価値を認めるものではなく、10人のうちたったひとりが価値を認めるような特徴をいいます。

価値を認める個性に対しては、相場より高い価格でも購入しようという動機が生まれます。言い換えると「希少価値」のある物件ならば、限られた人の希望に合致し高めの価格で取引が成立するものなのです。

 
 

高く売るときの媒介契約

大切なのは媒介契約です。媒介契約の種類は専属専任または専任媒介に限り、一般媒介はあり得ないといっていいでしょう。

一般媒介でつきあってくれる不動産会社は恐らくいないと考えられます。

時間をかける分「オープンハウス」もおこなったりします。折込みチラシでおこなうオープンハウスの告知も1回や2回ではありません。不動産会社が投じる広告宣伝費はけっこうな金額になります。

できれば「両手」で取引をまとめたい、と考えるのは当然ではないでしょうか。悪くても「片手」は必ず確保できる状態になければ、仲介を責任もってやってくれる不動産会社はいないでしょう。

長期戦になることを覚悟して担当者との人間関係も大切なことです。気軽に相談できなおかつ実績の豊富な経験者に任せたいものです。

 
 

査定結果と仲介会社の決定

仲介を依頼する不動産会社の決定や売出し価格決定の前には必ず「不動産査定」をおこないます。一般的には複数の不動産会社に査定を依頼し、査定金額を参考にしながら売出し価格と仲介を依頼する会社を決定します。

専属専任や専任媒介の場合は依頼する不動産会社を1社に絞るわけですが、ここで気をつけなければならないのは次のことです。

査定額の高い会社が高く売れるわけではない!

不動産査定の結果は一般的に相場価格よりも高めになるのが普通です。何故なら査定する場合、きるだけ高く売ろう! と考えるのは当然です。

(任意売却のように相場価格よりも低い査定をするケースもあります。)

実は不動産会社が提出する不動産査定書には2種類あります。

  1. 正確な査定結果の範囲内で提出される査定書
  2. 査定結果の範囲を超えた売れる見込みのない無理な査定書

2番目の「売れる見込みのない無理な査定書」を提出する不動産会社には、次のような思惑を持っている場合があるのです。

  1. 専任媒介契約を締結するために、他社よりも高い査定金額を提示する
  2. 媒介契約の締結後あまり時間をおかずに、売出し価格の値下げを提案する

査定額が高いからと媒介契約を締結しても、実際に売れる価格は大幅に下がる。このようなケースはたくさんあるので注意が必要です。

 
 

まとめ

早く売れることを優先させるか、高く売れることを優先させるか、不動産の売却理由によって異なるものです。もちろん “早くしかも高く売れる” ことが望ましいことはいうまでもありません。

しかし需要と供給、売り手と買い手という関係のなかで不動産は取引されます。売却戦略をしっかり考え、戦略にかなった媒介契約方法や売出し価格の決定をしてください。

望んだとおりの不動産売却をおこなうには、不動産会社の選択がきわめて重要です。

住宅やマンションそして相続した土地など、不動産売却をおこなうには仲介・買取り、2つの方法があります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、しくみの違いを理解して売却目的にあった方法を選択しなければなりません。

ここでは、仲介と買取りの違いをわかりやすく説明し、「仲介」のほうがよいのか「買取り」のほうが楽なのかなど、売主さんの売却理由や事情に合った選択方法をお伝えします。

 
 

不動産を売るときの仲介と買取りの違い

不動産を売却するには不動産会社に依頼しますが、方法が3種類あります。

        1. 買い手を見つけてもらって仲介してもらう
        2. 不動産会社に直接買取ってもらう
        3. 仲介してもらいながら期限までに売れない場合に買取ってもらう

一般的には不動産会社に仲介を依頼するケースが多いのですが、買取りにより売却するケースも少なくありません。

住宅などの場合、仲介にするか買取りにするかの判断は、次の2点について検討します。

        1. 売却価格
        2. 売れるまでの期間

仲介と買取りの違いを簡単に説明すると次のようにいえるのです。

仲介 買取り
売却価格 高い 安い
期間 遅い 早い
取引相手 個人が多い 不動産会社

買取りの場合、売却価格は仲介により売買される価格(相場価格)のおよそ7割前後と、かなり安くなるのですが、仲介の場合と違いすぐに買取ってもらえるので、一般的に3ヶ月ほどかかる売却までの期間が短くすむわけです。

次に売却するまでの手続きについて簡単に説明します。

仲介では不動産会社との間で、まず「媒介契約」を締結し販売活動をおこなってもらいますが、媒介契約は一般的に3ヶ月間を一区切りとしています。

 

“依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。”

引用:宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約)

 

媒介契約の期間内に買い手をみつけて、売買条件の交渉などをおこない、売買契約に至るのが仲介の流れです。

一方、買取りでは「媒介契約」を締結する必要はありません。不動産会社と売買価格について話し合いをし、合意するとすぐ売買契約に進んでいくのです。

 
 

仲介と買取りのメリット・デメリット

仲介と買取り、どちらにするか選択するときにチェックしたいポイントが以下です。

メリット デメリット
仲介 高めに売れることもある 時間がかかる
仲介会社とのやり取りや内覧など面倒なことがある
買取り 代金を手にするのが早い
仲介手数料が不要
瑕疵担保責任(契約不適合責任)免責
隣近所に売却することを知られることがない
相場より売買価格が安くなる

どちらがよいか……という比較は意味の無いことで、どちらがご自身の売却理由や事情に合っているかを判断することが大切です。

デメリットに掲げたことは “欠点とか短所” と捉えるのでなく、 “やむを得ず受け入れなければならない不都合なこと” と考えるとよいのではないでしょうか。

どちらを選択してもほとんどのお客様は、売却結果に納得して気持ちよく取引を終えています。稀にですが売却まで1年を要したお客様もいましたが『むずかしい条件なのによくやっていただけた! 』と感謝されることも多いものです。

また、仲介と買取りのデメリットを低減させ、両方のよいところを活用するのが「買取り保証」です。

買取り保証

一定期間(例えば3ヶ月間のみ)を仲介で販売してみて、売却できなかった場合に「買取り」を約束しておこなう方法です。

この場合、仲介会社が買取る場合は仲介手数料は不要ですが、別の会社が買取る場合には仲介手数料が必要になることもあります。

        • 仲介
        • 買取り保証
        • 買取り

3種類の売却方法があることを認識し、ご自身にいちばん合う方法を不動産会社と相談することが重要です。

 
 

仲介を選択したい売却シチュエーション

仲介を選択するほうが望ましいケースは、ほとんどの売却理由や事情に該当しますが、特に “仲介でなければならない” ケースについて解説します。

      1. できるだけ高く売却したいとき
      2. 住宅ローンの残高がある居住中の住宅を売却し他の物件に買換える
      3. 住宅ローンの支払いが困難になり住宅を売却してローン返済をしたい

できるだけ高く売却したいときの仲介方法

できるだけ高く売りたい場合、買取りでは無理といっていいでしょう。ある程度の時間をかけて高く買ってくれる買い手をみつける活動、これが不動産仲介の典型的なスタイルです。

不動産仲介会社と媒介契約を締結し、1社または複数の不動産会社に販売活動をおこなってもらいます。

媒介契約の期間は先に述べたように基本は3ヶ月ですが、期間内で買い手がみつからない場合は、再度同じ会社に依頼するか別の会社に切り替えて仲介を依頼します。

高く売りたいために “高めの売出し価格” を設定している場合もあります、価格の見直しをする必要が生じるときは不動産会社とよく相談し、あまり時間をかけずにそして高めに売却できるようしたいものです。

立地や物件の条件などにより、売れるまでに1年がかりになることや、場合によってはもっと時間のかかるケースもあります。『不動産を早く売るための方法と高く売る方法の違い』も参考にしてください。

 

住宅を買換えるときの仲介方法

住宅ローンの返済中に、転勤などで引っ越すことになり自宅を売却することになりました。引っ越し先でもマイホームをと望むとき、どのような手順でおこなうとよいのでしょう。

現在の住宅を売却した代金で住宅ローンの残額を一括返済し、同時に新居の住宅ローンを組んで購入するという、離れ業をするのが「住宅の買換え」です。

      • 住宅ローンの残高
      • 予想される売却金額
      • 現在のローン返済金額
      • 新居のローン返済金額

これらの条件によって「売却と購入のタイミング」を考えなければなりません。ひとつでも狂いが生じると買換えがうまくいかないこともあり、住宅ローンを扱う金融機関との密接な打合せも必要になります。そのため、金融機関からは「売却と購入」を仲介する不動産会社は、同一にするよう要請されます。

簡単ではない「住宅の買換え」については『自宅を住み替える買い替える時に知っておきたい賢い方法と手順』も参考にしてください。

 
 

住宅ローンの支払いが困難になったときの方法

住宅ローンの返済がむずかしくなったときには、「任意売却」を検討することになります。

任意売却は抵当権者である金融機関と連携しながら、住宅ローン残高に満たない売却金額でも抵当権を抹消し、担保となっている住宅を新しい所有者に引渡すことのできる方法です。

金融機関は住宅ローン残高の全額を回収することはできませんが、できるだけ多く回収したいと考えるのは当然です。しかし任意売却は時間が限られており(通常は3ヶ月~6ヶ月)、確実に売却できる金額を売出し価格として設定します。

この金額は買取査定金額より高くなるのが自然なことで、金融機関も転売を前提とした「買取り」は認めづらい点があり、仲介によって売却することを前提としています。

 
 

買取りを選択したい売却シチュエーション

買取りを選択するほうが望ましいケースとしては、次のような事情がある時です。

      1. 売却代金の使いみちは具体的にないが、手っ取り早く現金化したい
      2. 大至急資金をつくる事情が生まれた

このような場合に買取りを依頼しても、不動産会社が応じられないケースもあります。

        • 抵当権が設定されており、買取査定額よりも借入残高が大きい
        • 賃貸物件など占有者がいる場合、家賃滞納や居住者行方不明などのトラブルが生じている
        • 需要が見込めない立地や現況となっている、あるいは再建築不可など法的制限があり転売可能性がきわめて低い物件

不動産会社が買取りするのは、商品を仕入れて販売することが目的です。販売できないような状態の物件を買取りすることはありませんし、販売しても利益のない物件も買取りはしません。

不動産を買取りそして販売したときには、負担しなければならない費用が不動産会社に発生します。

      1. 所有権移転登記費用
      2. 不動産取得税
      3. 買取り資金が借入の場合は支払利息
      4. 不動産譲渡所得税
      5. 建物がある場合には預かり消費税

これらの費用に販売経費や一般管理費をプラスした金額を、販売利益として回収できなければ不動産会社の経営は成り立ちません。買取価格が仲介で売却する価格の7割前後、とされる理由がここにあるのです

*買取り価格「7割前後」については不動産会社により異なりますので注意してください。

 
 

まとめ

不動産の売却には3つの方法があります。

      1. 買い手を見つけてもらって仲介してもらう
      2. 不動産会社に直接買取ってもらう
      3. 仲介してもらいながら期限までに売れない場合に買取ってもらう

仲介と買取りにはそれぞれメリットもありますが、「できるだけ高くそして早く売りたい」という、望みを100%叶えることはむずかしいものです。

売却する目的や事情に合わせて、最良の方法を不動産会社と相談してください。そのためには信頼のできる不動産会社を見つけることが大切です。