新築ではなく既存住宅を
選ぶ人が増えている?
住宅の購入を検討するときには、新築にするか既存住宅から選ぶか、悩んでいる方も多いでしょう。
自宅を売却しようと思ったら既存住宅市場が現在どのようになっているのか、気になりますよね。
今回は、国内の既存住宅市場がどのような傾向にあるのかを紹介します。
既存住宅を選ぶ人が増えている
既存住宅を選ぶ人が増えているというデータは、国土交通省の統計によって裏付けられています。
【資料】令和3年度 住宅市場動向調査 ~調査結果概要(抜粋)~ (mlit.go.jp)
住宅市場動向調査によると、既存住宅を選ぶ理由として「住宅のデザイン・広さ・設備等が良かったから」と答えた世帯の割合が、令和2年度の29.2%から令和3年度には35.9%へと増加しています。
同じく、既存マンションを選んだ世帯では、令和2年度の30.2%から令和3年度には38.4%へと増加しています。
また、近年の既存住宅の流通量は15万~16万戸で推移していましたが、2040年には20万戸前後に増加すると予測されており、既存住宅を選択する人の割合が33%まで上がることが予想されています。
これらのデータは、新築ではなく既存住宅を選ぶ人が増えている傾向を示しており、住宅市場における意識の変化を反映しています。
既存住宅を選ぶ人が増えている理由
このように新築住宅にこだわらないという人が増えており、良質な既存住宅の活用が推進されています。
これにはいくつかの理由があります。
- コスト
既存住宅は新築に比べて価格が抑えられるため、同じ予算でより条件の良い物件を選ぶことができます。
- リフォームの自由度
自分好みにリフォームやリノベーションが可能で、個性的な住まいを実現できます。
- 環境への配慮
新築の建設よりも中古物件のリノベーションの方が、二酸化炭素排出量の削減につながり、環境に優しい選択となります。
- 空き家問題の解決
日本では空き家が増加しており、これらを有効活用することで地域の活性化にも寄与します。
以上のような理由から、既存住宅を選ぶ人が増えている傾向にあります。
また、国の住宅政策もこの流れを支持しており、今後もこの傾向は続くと考えられます。
既存住宅を選ぶメリットとデメリット
既存住宅にも新築住宅にもそれぞれに良い面がありますが、ここでは既存住宅のメリットとデメリットについて確認しておきましょう。
メリット
既存住宅を選ぶ際には、いくつかのメリットがあります。
以下にその主なメリットをあげます。
- コストの削減
既存住宅は新築に比べて価格が抑えられるため、同じ予算でより条件の良い物件を選ぶことができます。
- リフォームの自由度
自分好みにリフォームやリノベーションが可能で、個性的な住まいを実現できます。
- 実物を見て購入
注文住宅と異なり、既存住宅では実物を購入前に確認できるため、部屋の広さや日当たりなどを事前にチェックできます。
- 品質の確認
専門家が建物の状況を調査し、建物や設備の経年による劣化などを事前にチェックすることで、購入時の不安を軽減できます。
- 好きな街で暮らせる
新築住宅が少ない人気の地域でも、既存住宅なら希望の場所に住むことが可能です。
これらのメリットは、既存住宅を選ぶ際の大きな魅力となっており、多くの人々が新築ではなく既存住宅を選ぶ理由となっています。
デメリット
一方で新築住宅と比較した場合、既存住宅には以下のようなデメリットが考えられます。
- 物件選びの難しさ
既存住宅は個々の物件の状態が異なるため、適切な物件を見つけるのが難しい場合があります。
- 性能の問題
建築時期によっては、断熱性や耐震性などの性能が新築住宅に比べて低い可能性があります。
- リフォームの必要性
引き渡し後、すぐに住めないことが多く、リフォームが必要になる場合があります。
- トータルコストの把握が難しい
既存住宅の購入にはリフォーム費用などが加わるため、トータルでの予算把握が難しいことがあります。
- 維持費
新築住宅では固定資産税が高い傾向にありますが、中古住宅はメンテナンス費用が早期に必要になることが多いです。
これらのデメリットを考慮した上で、既存住宅を選ぶか新築住宅を選ぶかを決定することが重要です。
また、既存住宅の購入を検討する際には、専門家による建物診断を受けることをお勧めします。
これにより、建物の現状を正確に把握し、将来的なリフォーム計画や維持費用の見積もりを立てることができます。
既存住宅を選ぶときの注意点
既存住宅を選ぶ際には、以下のような点に注意しましょう。
- 建物の状態の確認
建物の構造や設備の状態を専門家によるホームインスペクションでしっかりとチェックすることが重要です。
- 耐震基準の確認
特に1981年以前に建てられた物件は旧耐震基準で建築されている可能性があるため、耐震性に注意が必要です。
- リフォームの必要性
既存住宅はリフォームが必要な場合が多く、その費用も購入前に見積もっておく必要があります。
- 法的な問題の確認
不動産取引における法的な問題や契約内容を理解し、「契約不適合責任」の内容を確認することも大切です。
- 既存住宅瑕疵保険
既存住宅瑕疵保険に加入することで、万が一の際の補修費用をカバーできますが、保険の対象範囲や条件を事前に確認することが重要です。
これらの点を踏まえ、既存住宅を選ぶ際には慎重に物件を選び、必要な情報を集めることが大切です。
また、専門家のアドバイスを受けながら進めることをお勧めします。
契約不適合責任と既存住宅瑕疵保険について
既存住宅を活用する際の「契約不適合責任」と「既存住宅瑕疵保険」は、購入者を保護するための重要な制度です。
契約不適合責任
契約不適合責任とは、売買契約の内容に適合しない状態、つまり瑕疵がある場合に、売主が負う責任のことです。
2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」から名称が変更され、買主の権利が強化されました。
この責任に基づき、買主は瑕疵があることを知った後、一定期間内に売主に対して修補(追完)請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除などの権利を行使することができます。
既存住宅瑕疵保険
既存住宅瑕疵保険は、中古住宅の売買において、瑕疵が発見された場合に補修費用等の保険金が支払われる制度です。
この保険に加入することで、売主は瑕疵担保責任から生じるリスクを軽減し、買主は購入後に瑕疵が見つかった場合の補修費用を保険から得ることができます。
保険の保証期間は最長5年間で、補修費用だけでなく、仮住まい費用なども保険金の支払い対象となります。
これらの制度は、既存住宅の流通を促進し、購入者が安心して中古住宅を購入できるようにするために設けられています。
売買契約を結ぶ際には、これらの制度の内容をよく理解し、適切な対応を取ることが重要です。
既存住宅市場を活性化するに必要な取組み
まとめに変えて、既存住宅市場を活性化するために必要な取組みについて紹介します。
- 適切な維持管理・リフォームの推進
既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームに対して支援を行い、良質な住宅ストックの形成を図ることが重要です。
- 市場環境の整備
消費者が安心してリフォームができる市場環境を整備し、悪質なリフォームに関する注意喚起や相談窓口の周知を行うことが必要です。
- 住宅履歴情報の普及
住宅の建築時や点検、リフォームなどの維持管理時に蓄積した住宅履歴情報を活用し、次の世代に承継されていく新たな住宅循環システムを構築することが求められます。
- 質の高い住宅が円滑に流通するための環境整備
既存住宅の品質・性能が消費者にわかりやすい形で評価され、取引価格や金融機関の担保評価に適切に反映されることにより、住宅の資産価値が長期にわたり維持される環境を整備することが必要です。
これらの取り組みを通じて、既存住宅市場の活性化を図り、質の高い住宅が次の世代にも承継されていくことが望まれます。
国土交通省などの公的機関が提供する情報や支援策を活用することも、市場活性化には欠かせません。
詳細については、国土交通省の公式ウェブサイトで公開されている資料を参照すると良いでしょう。