今回は、北茨城市大津町の五浦(いづら)にある六角堂をご紹介します。

これは明治時代に活躍した茨城県出身の日本画家、岡倉天心が自ら設計した建物です。現存する天心亭から一段低い断崖の上に建てられており、天心亭をあとに海岸に向かっていくと、六角堂が屋根から見えてきます。

太平洋の奇岩や荒磯を見下ろすと・・・

急な下り道を手すりにつかまりながら下りると、六角堂は太平洋の奇岩や荒磯を見下ろす位置にあり、断崖に海風が襲いかかってきます。

六角堂は、名前のとおり六角形の建物で、面積は9平米と四畳半ぐらいの広さです。中には何もありません。聞えるのは磯を洗う潮騒と海風の音だけ、何もない空間は瞑想するにふさわしい場所だったに違いありません。

岡倉天心を偲ぶ、いわば聖地

また、断崖に立つ朱塗りの建築と海沿いの松の木々とのコントラストは見事で、絵画のような趣きがあります。

しかし悲しいことに、2001年3月11日に起きた東日本大震災の津波により、六角堂は土台だけを残して流出してしまいます。この事態を悲しむ声は高く、遠くアメリカやインドから支援の声が寄せられました。六角堂は北茨城市のシンボルであると同時に、岡倉天心を偲ぶ、いわば聖地だったからです。

震災後に海洋調査が行われ、再建が試みられました。しかし瓦の一部や宝珠が発見されたのみで、再建は断念。新築されることになりました。

そして2012年4月、六角堂は見事に再建されました。再建費用の9割以上は寄付金によってまかなわれました。

 

今、六角堂の目の前に立てば、強烈な海風と磯の荒波を感じることができます。太平洋の海面は遙か下にあり、ここまで津波が襲ってきたとはとても信じられないほどです。

六角堂から1キロほど北に行けば、【茨城県天心記念五浦美術館】もありますので、併せて鑑賞されてはいかがでしょうか。

また北茨城は、豊かな海産物が採れることでも知られています。冬になれば「あんこう鍋」が美味しくなります。六角堂の見学とセットで、ぜひ北茨城の海産物を味わってみてください。