不動産を現金化して
相続することはできる?
相続人に相続させるときに、不動産のままではなく現金化して渡したいときには遺言執行者を選任することで実現しやすくなります。
この記事では、遺言執行者の役割や権限、遺言執行の流れについて解説します。
遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後に遺言の内容を実現するために手続きを行う人のことです。
遺言執行者は、遺言書に指定されるか、指定されていない場合は家庭裁判所に申し立てて選任してもらうこともできます。
遺言執行者は、遺言者の意思を尊重し、善良な管理者の注意をもって遺言の執行にあたります。
また、遺言執行者には、遺言の内容に従って相続財産の分配や名義変更などを行う権限と義務があります。
遺言執行者は、破産者や未成年者以外なら誰でも指定できますが、相続人間のトラブルを避けるために、弁護士や司法書士などの第三者に任せるとよいでしょう。
なお、遺言執行者の報酬は、遺言書で決められていればその金額を、記載がなければ家庭裁判所に申し立てて決めてもらえます。
報酬の目安は、一般的に相続財産の1〜3%ほどになっており、相続財産から支払われます。
遺言執行者の手続きの流れ
遺言書で遺言執行者に指定された場合は、就職を承諾する旨の通知書と遺言書の写しを相続人に送付します。
遺言執行者は、相続財産の調査を行い、相続財産目録を作成して相続人に交付します。
次に、遺言の内容に従って、遺贈や認知、推定相続人の廃除や取り消し、不動産や預金の名義変更などの手続きを行います。
遺言の内容をすべて実行したら、相続人に文書で完了報告をします。
ただし、遺言執行者の手続きは、遺言の内容や相続人の状況によって異なる場合があります。
遺言執行者になった場合は、遺言書や関係書類を確認し、必要に応じて専門家に相談するとよいでしょう。
遺言執行者を選ぶメリット
次のように遺言執行者を選ぶメリットは多くあります。
遺言書を作成する際には、遺言執行者の選任を検討してみてはいかがでしょうか。
- 遺言の内容を実現するために必要な手続きを遺言執行者が代行してくれるので、相続人にとっては手間や負担が軽減されます。
- 遺言執行者は遺言者の意思を尊重し、善良な管理者の注意をもって遺言の執行にあたるので、遺言の内容が実現しやすくなります。
- 遺言執行者がいると、相続人間のトラブルや紛争を防止することができます。
- 遺言執行者にしかできないことを実現できる場合があります。
例えば、遺言で認知や相続人の排除をする場合です。
不動産売却と遺言執行者
相続財産が不動産だと相続人が複数いる場合に遺産分割が難しい場合があります。
例えば一棟の建物を数人で相続するために「分割」することはできません。
複数の相続人で「共有」することはできますが、分割だと建物を物理的に分割することになるからです。
このように、不動産のままだと分割が難しい場合でも、不動産を売却して現金化することで分割可能な財産にすることができるようになります。
相続した不動産の売却を遺言執行者にまかせることにしておけば、遺言執行者が単独で売却の手続きを取れることや、相続人の勝手な行動を防げるメリットがあります。
ただし、遺言執行者が不動産価格を正しく把握できない場合には不当に安く売却されてしまうおそれがあるので、不動産にくわしい方を遺言執行者に指定するのがよいでしょう。
遺言執行者は、遺言書の内容に従って不動産を売却し、必要経費を差し引いた後に遺言書に指定された相続人に売買代金の分配を行うことになります。
遺言執行者を選んでいなければどうなる?
不動産を売却してその代金を相続人に分配するような場合には、遺言執行者を指定しておいた方がよい理由をもう少し詳しく説明しましょう。
相続人が子どものみA・B・Cの3人いたとします。
遺言執行者が指定されていないので、A・B・Cの3人で法定相続通り3分の1ずつの割合で相続登記を行い、3人が協力して売却手続きをすることになります。
そこで、遺言の内容により売却代金をA・Bの2人に与える内容になっていたり、Cが特別に相続した不動産に愛着があるためどうしても売却したくない事情があったりすれば、Cの協力が得られないため、相続した不動産の売却ができなくなり、遺言書の内容通り実現できなくなってしまいます。
ところが、遺言執行者が指定されていれば相続人の思惑に関係なく遺言書通りに実行できるわけです。