親が老人ホームに入居したら
自宅はどうする?
親が老人ホームに入居することになったときに親の家をどうすればいいのか、お悩みの方はたくさんいらっしゃいます。
そこで、この記事では、親が老人ホームに入居したときの親の自宅をどうするかの選択肢を紹介し、老人ホームに入居した親の自宅を売却など処分するときに注意しておきたいことを解説します。
親が老人ホームに入居したら親の自宅はどうするか
このような場合、いくつかの選択肢がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
また、税金面や相続の問題も考慮する必要があるでしょう。
一般的には、以下のような方法が考えられます。
- 売却してお金に換える
- 賃貸にして家賃収入を得る
- 古い家屋を壊して更地にする
- 子どもが住む
- そのままにしておく
- リバースモーゲージを利用する
売却する場合
売却代金を親の入居費用や生活費として使うことができますが、思い出の詰まった家がなくなってしまいます。
また売却後に親が亡くなると、現金が残るために資産総額が増えて相続税が高くなる可能性もあります。
賃貸する場合
毎月の生活費として使うことができますが、借り手が見つからない場合は空き家になる場合もあるでしょう。
また、不動産収入を得ることになるため、確定申告が必要になります。
古い家屋を壊して更地にする場合
コインパーキングなどに活用できれば収益を得られる可能性がありますが、建物の解体費用が発生します。
また、更地になると軽減措置がなくなるので固定資産税が高くなります。
子どもが住む場合
子どもが賃貸住宅に住んでいる場合は家賃が不要になりますし、実家を継承できます。
しかし、実家が生活圏になければ無理ですし、兄弟がいれば誰が住むかでもめることもあります。
また、将来相続が発生したときに利益を享受したと言われる可能性もあります。
そのままにしておく場合
時々親が施設から自宅に帰ることができるメリットがありますが、家屋の維持費や管理の手間がかかります。
リバースモーゲージを利用する場合
リバースモーゲージとは、自宅を担保にして金融機関からお金を借りることができるシニア向けの融資制度です。
自宅を明け渡す必要がないので、自宅を維持しながら老後の生活費や医療費、介護費などに使うことができます。
親が亡くなったときに自宅を売却して借りたお金を返済する仕組みになっています。
リバースモーゲージの利用には、以下のような条件があります。
- 年齢:55歳以上または60歳以上(金融機関によって異なる)
- 所有する不動産:自分や配偶者が居住する一戸建てやマンションなど
- 不動産の価値:一定以上の評価額があること
- 住宅ローンの残債:ないことまたは少ないこと
- 資金の使い道:生活資金や医療費、介護費など(金融機関によって異なる)
リバースモーゲージの利用には、メリットとデメリットがあります。
メリットは、自宅を売却せずに資金が手に入り、毎月の支払いが少ないことです。
デメリットは、長生きすればするほど借り入れ額が増え、相続人に残せる資産が減ることです。
また、金利上昇や不動産価値下落のリスクもあります。
リバースモーゲージは、亡くなるまでは親の自宅を手放したくない方や、子どもに自宅を残さなくてもいい方に向いています。
利用する前に金利や条件を複数の金融機関で比較しましょう。
以上のように、親の自宅をどうするかは様々な方法があります。
親の意思や家族の事情を考慮しながら最適な方法を選びましょう。
詳しくは専門家や自治体の窓口に相談するとよいでしょう。
老人ホームに入居中の親の家の売却方法
親の家を売却するには、親の同意が必要です。
親の名義になっている不動産を売却することは、実の子であってもできません。
売却するには「委任状」を用意して代理で手続きを行うことになります。
委任状には、売却する不動産や売却条件などを詳しく正確に記入する必要があります。
また、たとえ委任状があっても、いざ売却が決まり所有権移転登記をするときには、多くの場合司法書士が本人確認を行い、売却意思の確認を行いますので注意しましょう。
次に、親の家を売却した場合、不動産譲渡所得税が発生する可能性があります。
所得税は、売却益(売却額から購入額や売却費用を引いた額)に対して課されます。
ただし、マイホームとしてみなされる場合には、3,000万円の特別控除が適用されることがあります。
この特別控除は、自宅を売却した年の前年及び前々年に他の特例の適用を受けていないことや、住まなくなった日から3年以内に売ることなど、一定の要件を満たす必要があるので注意が必要です。
老人ホームに入居していて亡くなった親の家の譲渡所得特例の扱い
親が老人ホームに入居していて亡くなった後に自宅を売却した場合でも譲渡所得の特例が適用される場合があります。
このような場合、次のような点に注意する必要があります。
親の自宅が「マイホームの譲渡所得の特例」の対象となるかどうかは、相続の開始の直前において親の居住の用に供されていたかどうかによります。
しかし、親が老人ホームに入居していた場合でも、一定の要件を満たせば、その居住の用に供されなくなる直前まで親の居住の用に供されていた家屋は、「被相続人居住用家屋」として特例の対象になります。
その要件とは、
- 親が要介護認定や障害者支援区分の認定を受けていたこと、
- 老人ホーム等が適格認定施設であったこと、
- 自宅を事業や賃貸に供していなかったこと
などです。
この特例を受けると、譲渡益(売却額から購入額や売却費用を引いた額)から3,000万円を控除できます。
ただし、この特例は、自宅を売却した年の前年及び前々年に他の特例の適用を受けていないことや、住まなくなった日から3年以内に売ることなど、一定の要件を満たす必要があります。
No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋|国税庁 (nta.go.jp)
以上のように、親が老人ホームに入居していて亡くなった後に自宅を売却する場合は、さまざまな税金や特例が関係します。
詳しくは専門家や自治体の窓口に相談してみてください。
親が認知症になったときの親の自宅の売却方法
親の判断能力が残っていると認められる場合は、親の意思に従って自宅を売却することができますが、親が認知症と診断され司法書士などが本人の意思確認ができないと判断した場合、通常通りの売却はできません。
その場合は成年後見制度を利用することになります。
成年後見制度とは、認知症などで判断能力を欠く人のために援助者を選任して法律的なサポートを行う制度です。
家庭裁判所に申し立てて成年後見人(財産管理者)を選任すると、成年後見人が不動産の売却などの行為を代わって行います。
まとめ
親が老人ホームに入居した後の家をどうするかはとても難しい問題です。
どうするかは、老人ホームに入居した後の費用や、家の管理、税金などに影響を与えます。
それぞれの方法にメリットやデメリットがあり、なにより親の家であれば親の意思が尊重されなければなりません。
「その家を残したいのか、残さなくてよいのか、また、残したいとしてそこに将来住む方がいるのか」を親の意見を聞きながら家族全員で話し合うことが大切でしょう。