不動産売却の譲渡所得税とは?
不動産を売却したときは、普段の所得と切り離されて「分離課税」方式で課税されます。
このため、給与所得を得ている方でも不動産を売却して利益が出れば特別に所得申告をしなければなりません。
今回は、この分離課税方式の計算方法や申告方法についての解説です。
分離課税と総合課税の違い
分離課税とは、他の所得とは別に計算・納付する税制のことで、退職所得や不動産譲渡所得などが対象になります。
総合課税とは、他の所得と合計して累進課税により課税する制度のことで、事業所得や給与所得などが対象になります。
たとえば、ある人が年間500万円の給与所得があり賃貸物件の家賃収入が年間100万円ある方が不動産を譲渡して1,000万円の不動産譲渡所得を得たとします。
この場合、給与所得と不動産所得(賃貸収入)は総合括課税の対象なので、他の所得と合計して総所得金額を求めます。
つまり総合課税による所得額は500万円+100万円=600万円になります。
この総所得金額から各種控除を差し引いて課税所得を求め、累進的な税率を適用して所得税を計算します。
なお、所得税においては5~45%の累進税率、住民税は原則10%の税率をかけます。
一方、1,000万円の不動産譲渡所得は分離課税の対象なので、他の所得とは別に計算します。
不動産譲渡所得は、不動産を売った金額から取得費や譲渡費用を差し引いて求めます。
また、特別控除の対象なら特別控除額を差し引いたものが課税譲渡所得金額になります。
この課税譲渡所得金額に対して、所有期間によって異なる固定の税率を適用して所得税を計算します。
以上のように、分離課税と一括課税では、計算方法や税率が異なります。
分離課税は、一度に大きな金額が入る場合や市場活性化を促す場合に、納税者の負担を軽減するために設けられています。
分離課税の計算方法
譲渡所得の金額は、不動産を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて求めます。
(不動産を売った金額-取得費-譲渡費用)=譲渡所得の金額
取得費
不動産を購入したときの代金や手数料などに、その後支出した改良費や設備費を加えたものです。
建物の場合は、減価償却費相当額を差し引きます。
譲渡費用
不動産を売るために支出した費用で、仲介手数料や測量費などが含まれます。
特別控除
譲渡所得から特別控除額を差し引いたものが課税譲渡所得金額です。
特別控除額は、不動産の種類や所有期間などによって異なります。
例えば、マイホームを売却した場合は3,000万円、収用等により土地建物を売却した場合は5,000万円の特別控除などがあるので利用できる特別控除がないか検討してみましょう。
税率
課税譲渡所得金額に対して、長期譲渡所得(所有期間が5年超)は15%、短期譲渡所得(所有期間が5年以下)は30%の税率で税額を計算します。
なお、平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税と併せて申告・納付することになります。
損益通算や繰越控除
長期譲渡所得にあたる場合に、一定の場合には譲渡損失を他の所得と損益通算をしたり、3年間繰越控除を受けたりすることができます。
No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合|国税庁
不動産譲渡所得の申告方法
申告は、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間に行います。
万一申告を忘れてしまうと延滞税などのペナルティが課せられるので注意しましょう。
不動産売却による譲渡所得がある場合は、確定申告書(A)及び譲渡所得・山林所得申告書(B)を作成して提出します。
確定申告書(A)では、他の所得とは別に譲渡所得の収入金額と特別控除額を記入します。
譲渡所得・山林所得申告書(B)では、不動産の種類や取得・譲渡の時期・価格などを詳しく記入します。
また、必要な添付書類も併せて提出します。
確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って金額を入力することで確定申告書等を作成・提出できます。
確定申告書等作成コーナーは、国税庁のホームページからアクセスできます。
確定申告書等作成コーナーを利用するには、マイナンバーカードや電子証明書などが必要です。
確定申告書等作成コーナー以外にも、e-Taxや税務署窓口などで確定申告書等を提出することもできます。
e-Taxは、インターネットを利用して税務署に確定申告書等を送信できるシステムです。
e-Taxを利用するには、e-TaxソフトウェアやICカードリーダーなどが必要です。
また税務署で直接手続きをすることも可能で、税務署窓口では紙の確定申告書等を直接持参するか、郵送の方法で申告することができます。