相続した実家を
売りたくない時にできること
親が亡くなり実家を相続したものの、相続した実家をどのように利用できるのか悩んでいる方は多いでしょう。
他の相続人の意向もあるので、簡単に処分することも難しいです。
この記事では、実家を相続したけど売りたくないときにできること、空き家にしておくことのデメリットや売却するメリットについても解説します。
相続した実家を売りたくないときの対策
相続した実家を売りたくないときの対策は、大きく分けて以下のようなものがあります。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがありますので、ご自身の状況や希望に合わせて選択しましょう。
- 実家を賃貸住宅やテナントとして貸し出す
- 実家をリフォームして自分たちで住む
- 建物を取り壊して更地にする
実家を賃貸住宅やテナントとして貸し出す
実家を貸し出すと、賃料収入を得ることができるので、管理費用や固定資産税などの負担を軽減できます。
また、空き家になることでの老朽化を防ぐこともできます。
建物の用途や規模によっては、個人ではなく法人や団体に貸し出すこともできるでしょう。
ただし、賃貸住宅として貸し出すには、建物の状態や立地条件などによって需要があるかどうかが重要です。
テナントとして貸し出すには、建物の耐震性や設備などに一定の基準が求められます。
入居者の募集や契約、管理などに手間がかかることも考慮しなければならず、テナント契約は一般的に長期的なものであるため、契約内容や条件に注意しなければなりません。
定期借家で貸し出す
定期借家とは、契約で定めた期間が満了すると、更新されないで賃貸借契約が終了する制度です。
定期借家で貸し出す方法は、以下のような手順になります。
- まず、貸したい物件の状態や立地条件などを確認し、需要や相場を調査します。
定期借家は普通借家よりも賃料が安く設定されることが多いので、収益性やコストなどを考慮する必要があります。
- 次に、定期借家契約の内容を決めます。
契約期間や賃料、敷金・礼金などの条件を明確にします。
定期借家契約は必ず書面で結ばなければなりません。
国土交通省作成の「定期賃貸住宅標準契約書」を参考にするとよいでしょう。
- さらに、定期借家契約を結ぶ前に、書面で事前説明を行います。
定期借家契約であることや、契約の更新がないこと、期間の満了により借家関係が確定的に終了することなどを記載した事前説明文書を入居希望者に交付し、十分に理解してもらいます。
- 最後に、入居希望者と契約書に署名捺印し、鍵の引き渡しなどを行います。
契約書は公正証書にすることもできますが、その場合は公証人役場で手続きを行う必要があります。
実家をリフォームして自分たちで住む
実家をリフォームして自分たちで住むと思い出の詰まった実家を形として残すことができます。
また、自分たちの好みに合わせて改装することで、快適な住環境を作ることもできます。
ただし、リフォームには多額の費用がかかることが多く、また実家の場所が自分たちの生活圏内にあるかどうかも問題です。
実家から職場や学校などが遠い場合は、通勤や通学に不便になってしまいます。
建物を取り壊して更地にする
実家の建物を利用しないまま放置しておくといろいろな問題がおこるおそれがあります。
建物を取り壊して更地にする方法も検討するとよいでしょう。
相続した実家を取り壊すメリットは、以下のようなものがあります。
- 空き家管理の負担がなくなる
- 固定資産税の優遇措置が受けられる方法もある
- 土地の価値が上がる
空き家管理の負担がなくなる
空き家になった実家をそのまま所有し続けると、建物や敷地の劣化を防ぐために定期的な点検や清掃、草刈りなどの管理が必要になります。
また、空き家は火災や盗難、侵入などの危険にもさらされるため、保険料や防犯対策などの費用もかかります。
これらの管理費用や手間は、相続人にとって大きな負担となります。
実家を取り壊すことで、空き家管理の負担から解放されることができます。
固定資産税の優遇措置が受けられる方法もある
実家を取り壊して更地にすると、固定資産税は増えるというデメリットがあります。
しかし、その更地を農地に転用することで、固定資産税の優遇措置を受けることができます。
農地は一般的に住宅用地よりも固定資産税が安く設定されているからです。
また、農業経営基盤強化促進法に基づいて農業者に貸し出すことで、さらに固定資産税を軽減することができます。
土地の価値が上がる
実家を取り壊して更地にすると、土地の価値が上がる場合があります。
古い建物があると土地の魅力が下がるため、建物を撤去することで土地のポテンシャルが高まるからです。
特に、建物の状態が悪く、リフォームや改築に多額の費用がかかる場合や、建物の構造や間取りが現代のニーズに合わない場合は、建物を取り壊した方が土地の需要が高まる可能性があります。
また、更地にすることで土地の用途や活用方法が広がります。
相続した実家を空き家にしておくリスク
相続した実家を空き家のまま売却しないで放置しておくと、以下のようなリスクがあるので注意しましょう。
- 建物や敷地の劣化が進み、修繕費用や撤去費用がかかる
- 周囲の人々に迷惑や危害を及ぼし、加害責任を負うおそれがある
- 特定空家に指定されて改善命令や過料が課せられる
- 固定資産税を払い続ける
- 第三者に管理を委託する費用がかかる
これらのリスクを回避するためには、空き家を売却するか、賃貸住宅やテナントとして貸し出すか、自分たちで住むか、国に納めるかなどの対策を検討する必要があります。
相続した実家を売却するメリット
最後に、今回は売りたくないときにできることがメインの解説ですが、万一売却するとしたら以下のようなメリットもあるので、紹介しておきます。
- 不動産の資金を活用できる
- 空き家の譲渡所得税の特例を受けられることがある
- 相続手続きがスムーズになる
不動産の資金を活用できる
相続した実家は、高額な財産ですが、分けづらいというデメリットがあります。
また、空き家になっている場合は、固定資産税や維持管理費などのコストがかかります。
実家を売却することで、現金化することができ、自分や家族の生活費や教育費、老後資金などに使うことができますし、投資や事業などにも活用できるでしょう。
また、現金化すると遺産分割協議をするときに分割しやすいメリットもあります。
空き家の譲渡所得税の特例を受けられることがある
不動産を売却すると、譲渡所得税がかかります。
しかし、相続した実家が空き家の場合は、一定の要件を満たすと、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。
この特例は、相続日から3年以内の年末までに売却することや、昭和56年5月31日以前に建築された建物であることなどが条件です。
この特例を利用すれば、税金を大幅に軽減することができます。
相続手続きがスムーズになる
相続した実家は、兄弟姉妹や親族など複数の相続人で分け合う必要がありますが、実家に対する思い入れや利用意向は人それぞれ違うこともあるでしょう。
そのため、相続人間で意見が対立し、トラブルに発展する可能性もあります。
不動産のままでは分割しにくい場合でも、実家を売却して現金化すればそのような争いを避けることができます。