常陸太田市にある佐竹寺は、真言宗豊山派のお寺です。1906年に国の重要文化財に指定されています。常陸太田市のなかでもかなり古い史蹟に属し、記録によれば807年あるいは985年の開山ですから、いずれにしても平安時代から続く名刹ということになります。

遺構が残された、常陸太田市の誇る貴重な文化財

佐竹寺の名前は、当時の茨城県で権勢をふるっていた佐竹氏に由来しています。佐竹氏は平安時代後期、常陸北部七郡(現在の茨城県)を支配し、のちに現在の栃木県から東北まで勢力を伸ばしたといいます。ちなみに、地方で権勢をふるった武家や豪族とゆかりのお寺としては、他に奥州藤原氏と中尊寺(岩手県)が有名です。

現在、佐竹寺を訪れてみれば、常陸太田市を見下ろす高台にあることが分かります。「境内撮影禁止」の看板があるように、境内の写真をご案内できないのが残念ですが、入口からよく見える山門(仁王門)は昭和15年(1940年)の再建です。山門の左右には二体の金剛力士(仁王)像があり、宝永年間の作とされています。1939(昭和14)年の火事で山門は焼失したものの、里人が仁王像を運び出して難を逃れています。

さらに2011年の東日本大震災では、山門の屋根瓦が崩落しました。これら難関を乗り越えて2016年、仁王像と山門は修復され、往年の姿に戻りました。そこから境内に進めば、茅葺き屋根の本堂が見えてきます。正面中央には優雅な曲線を描く唐破風があり、その上には大きなかやぶき屋根があります。全体的に重厚感あふれる佇まいで、あちこちに桃山時代の建築物の特徴が見られます。遺構が残された,常陸太田市の誇る貴重な文化財の一つです。

▲境内へ進む道
▲茅葺き屋根の本堂

写真を撮ったのは6月初旬の、夏を思わせる暑い日でした。市内から訪れたというサイクリングの父子が、入口の木陰で汗をぬぐっていました。そのあとも、参拝客は絶え間なくやってきました。佐竹寺は、明治時代の廃仏毀釈によって昭和24年まで無人だったそうですが、今では茨城県を代表する名刹のひとつとなっています。ぜひ、この夏「佐竹寺」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

▶真言宗 豊山派 妙福山 明音院 「佐竹寺」

〒313-0049 茨城県常陸太田市天神林町2404