境界トラブルの解決方法

境界は普段の生活には全く支障がないものの、いざ明らかにしようとすると思わぬ隣人とのトラブルに発展してしまうこともあります。

お互いにお隣同士なのでできるだけトラブルは避けたいもの。

この記事では境界トラブルの事例にはどのようなことがあるのか、境界トラブルの解決方法について解説します。

土地の売却には境界確定、確定測量が必須

以前は必ずしも要求されていなかった売却前の境界確定や確定測量が近年では当然のように行われるようになりました。

そのため、日々の暮らしの中では特に意識されない土地の境界がいざ売却するとなれば急に重要視され、時には仲が良かったお隣さんとの争いにまで発展してしまうこともあります。

境界確定や確定測量をするには隣接地の所有者に立ち会ってもらわなければなりません。

隣地の所有者が亡くなってしまい相続人がわからないことや、隣地の所有者が境界確認に立会しないようなことがあれば境界確定も確定測量もできなくなってしまいます。

このようなことがないように、普段から近所づきあいは大事にしたいものです。

また、市道など公共の道路などに接している土地なら市町村役場の担当者も立ち会います。

日程調整のために1か月程度かかることもあるため、境界確定をするときには早めに予約をしておきましょう。

境界確定や確定測量をする理由

売却前に境界確定などを行うようになった理由には土地の価格に対する意識の変化や測量技術の向上があげられます。

土地の価値に対する意識の変化

土地に対する意識が変化してきたことが一つの理由です。

日本では、昭和30年代の高度経済成長期を経て不動産の価格は上昇してきました。

また、マイホームをもつことがステータスとなり、個人が家をもつことが当たり前になり個人向けの住宅ローンの取扱件数も増加し続けています。

このことから不動産の価値がとても重要視されているのです。

測量技術の向上

以前の測量技術と比べて近年では飛躍的に向上した測量技術によって、以前の資料だと実際とあっていないことがあります。

昭和30年代半ばまでは、課税のための資料として市町村役場で管理されていた土地台帳が課税と切り離されて法務局が管理することになりました。

法務局には昭和35年以降順次分筆などがされた土地について測量図を保管することになりましたが、この当時の測量は平板やそろばんを使って測量図を作っていました。

現在ではGPSを利用して座標軸を測量図に反映することになっています。

そのため測量精度が大幅に向上しているので改めて測量しなおすと登記記録の面積と異なることも珍しくないのです。

境界トラブルになる事例

ここでは、境界トラブルになってしまうのはどのようなことがあるのか、実際の例を紹介します。

長年の思い込みで譲れない

勘違いをして境界を覚えていたのがそのまま長年続いたので誤った境界をそこだと思い込んでいるために境界確認に応じてもらえないことがあります。

たとえば、ブロック塀が境界だとしてもブロック塀には厚みがあるため外側と内側、中心線のいずれかによって大きく境界がずれてしまいます。

巾10㎝でも奥行10mなら全体で1㎡面積が違ってくることになり、東京都心なら100万円の差がでることもあります。

このように境界がずれることで財産的価値が大きく変わるのでなかなか折り合いがつかないことになってしまうのです。

屋根の庇(ヒサシ)の越境を黙認していた

屋根の庇など建物の構造物が越境していることが紛争のもとになることがあります。

境界は土地の平面上だけでなく、空中や地中にも及びます。

レンジフード、エアコンの室外機、上下水道管、ガス管、汚水桶などが境界上にあることが見受けられます。

普段の生活には影響がないためそのままになっていたことが、売却に伴う境界画定で発覚、改めて認識することがほとんどです。

このような場合には、冷静に現実を認識し確認しあうことが大切です。

越境している構造物を撤去できればよいのですが撤去が不可能であれば後日のために「境界確定書」「越境の確認書」「(売却や相続するときの)引継ぎ書」「合意書」などの書面を作成して、後日改めて紛争にならないように対処しておきましょう。

工事などのために一時撤去した境界標が正確に復元されなかった

道路の敷設、塀を新たに作るためや駐車場を整備するため、下水道を埋設するためなどを理由に境界標を一時的に撤去したものが元の位置に正確に復元されていないために紛争になることがあります。

境界標が撤去されるおそれがあるときには、工事を発注する市町村役場の担当者や隣地の所有者などに注意を促すことが必要です。

現場で作業をしている作業員に注意しても効果は期待できません。

工事が始まる前に現地で利害関係人全員が立会して境界標の場所、周囲の構造物との位置関係を確認、図面を作成し写真で記録するなど原状を復元できるように資料を整えておけば後日のトラブルを防ぐことができます。

当事者間で分筆の合意をしたが登記をしていなかった

当事者間で分筆など筆界と異なる場所を境界とする合意ができていても登記をしていないために法務局が把握している境界(筆界)と現実の境界(所有権界)とが異なることがあります。

法務局が管理する筆界は合筆や分筆をしなければ書き換えられず当事者が勝手に変更することはできません。

一方で所有権が及ぶ範囲となる所有権界は当事者が合意によって変更することができます。

筆界がギザギザになっている不整形地では使い勝手が悪いので当事者同士が話し合って整形地として利用するような例です。

筆界と所有権界が通常は一致しているのが原則ですが、このようなことから一致していないことがあります。

境界標を勝手に移設した

境界標が知らない間に移動されていたと紛争になることがあります。

境界標を勝手に移設するのは違法であり刑法(262条の2)によって処罰されます。

刑法 | e-Gov法令検索

たとえ自分自身が設置した境界標であっても、損壊、撤去するようなことは違法なので注意しましょう。

境界トラブルの解決方法

境界の確定でトラブルになったときの解決方法では近隣関係なので、まずは当事者同士の話し合いで解決できるのが最もよいのですが、当事者同士だと感情的になってしまいうまく話し合いができなくなることもあるでしょう。

ここでは、境界トラブルの解決方法を紹介します。

  1. 地積測量図で確認する
  2. 筆界特定制度を利用する
  3. 土地家屋調査士会ADRを利用する
  4. 訴訟する

地積測量図で確認

法務局に測量図が備え付けられているかを確認して、測量図をもとに境界を確認する方法です。

地積測量図で確認しても当事者同士で境界が確定できないときには、土地家屋調査士に相談してみましょう。

土地家屋調査士は測量と登記の専門家です。

土地家屋調査士に依頼すれば、法務局の登記記録や図面、また市町村役場で保管されている資料から土地の歴史を調査、さらに現地の測量を通じて合理的な境界を示してくれるでしょう。

筆界特定制度を利用する

法務局に境界画定について相談すれば法務局の「筆界特定登記官」が筆界を特定してくれる筆界特定制度があります。

筆界特定の申し出を受けた登記官は民間の筆界調査委員の意見を踏まえて筆界を特定します。

この筆界特定は新たに筆界を決めるのではなく、法務局の登記記録・備え付けの図面、現地の調査などから過去に定められた筆界を明らかにする作業です。

この筆界特定を利用すれば、費用が安く、訴訟よりも早く筆界を特定できるのがメリットです。

ただし、筆界特定は筆界を特定するだけであり、所有権の範囲を定めるものではありません。

そのため、所有権の範囲についても争いたい場合には、次の土地家屋調査士会ADRあるいは訴訟をすることになります。

土地家屋調査士会ADRを利用する

土地家屋調査士会ADRは筆界だけでなく、所有権が及ぶ範囲も含めて解決を図ろうとするものです。

各県の土地家屋調査士会が運営する境界問題相談センターが弁護士と協力して当事者同士の話し合いを調整し筆界や所有権が及ぶ範囲(所有権界)の早期解決を目指すものです。

訴訟する

当事者間での話し合い、筆界特定制度、土地家屋調査士会ADRなどで解決できなければ訴訟を提起し裁判所で争うことになります。

これまで何度かでてきたように、「筆界」と「所有権界」とは異なるものなので、どちらを争うかを明確にして訴訟を起こします。

境界確定訴訟では裁判所が独自に境界を定め、これに対して異議の申立てはできません。

所有権界を定めるためには所有権確認訴訟を提起します。

いずれも裁判手続きになるため、判決までには時間がかかること、裁判で争うことから隣人との関係修復は難しくなってしまうこともあります。

イエステーションでは、このようなトラブルを事前回避するため、測量会社と提携を結び事前に隣地境界の確認を実施しております。