今回は、那珂市の静(しず)地区にある静神社をご紹介いたします。静という名前の由来となったのは、奈良時代の『常陸国風土記』久慈郡の条にある「静織(しどり)の里」の文字で、そこから綾を織る人がここで初めて織物を作ったと推測されています。また平安時代の『和名類聚抄』には、常陸国久慈郡に「倭文郷(しどりごう)」の記載があり、この「しどり」が「静(しず)」の由来であると考えられています。

茨城県に古くから伝わる織物との深い関係

静神社には、古来より、織物との深い関係が伝えられています。

この時期、麻を原料として麻布を作る技術が発展し、麻布を原料とした衣服が庶民に広がりました。常陸国はその特産地であるとともに、静神社がその生産に関与したとする説があります。

また茨城には麻生(あそう)という地名もあり、麻の産地として名高かったことが伺えます。

麻布が持つ涼しさとざっくりとした着心地。麻布を見たとき、そんな茨城県の歴史に思いを馳せるのもいいものです。

また、長い歴史のうちに火災に遭っています。天保12年(1841年)の火災で本殿は焼失しており、現在見られる本殿は徳川斉昭の指示によって1845年に再建されたものです。その火災で当時の神木は枯れてしまいましたが、巨大な切り株は今も境内にあって当時の偉容を伝えています。

▲火災前の神木の巨大な切り株

「茨城百景」の石碑

静神社の現地に行けば、大きな鳥居の近くに「茨城百景」の石碑があり、その奥に見える長い階段の遙か上に本殿があります。

かなりの段数のある階段には一瞬ひるんでしまいますが、ゆっくり上ってみましょう。

▲茨城百景の石碑
▲本殿へ続く階段

「織姫」像

階段を上っていくと、やがて境内の神門前に、東京織物卸商業組合が寄進した「織姫」像が見えてきます。古来、機織りは女性の仕事でした。

さらに神門をくぐると、玉砂利を敷き詰めた広々とした境内には入母屋造りの本殿が見えてきます。

静神社では、四季おりおりの風情を楽しむこともできます。春には、境内にある御神木の山桜、初夏から夏には参道の新緑。秋、御神木の隣にある山茶花。そして正月には初詣。また、隣接された「静峰ふるさと公園」に行けば、たくさんの桜が目を楽しませてくれます。静神社は、今も地域の人の守り神となっているのです。

静神社
〒319-2106 茨城県那珂市静2