火災にあった家は売却できる?
以前火災があった家を売却しようとするとき「問題なく売却できるだろうか」「安くなってしまうだろうか」と心配になる方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、火災にあった家の売却で気をつけることや売却方法について解説します。
火災の状況によっては「瑕疵」になる
一言で「火事」「火災」といっても程度の差があります。
料理中に手元がくるってキッチンの天井を焦がした程度から家が完全に焼け落ちてしまうような火事もありますし、中には人が亡くなる不幸があるようなこともあるでしょう。
天井を焦がしてしまった程度であればきちんとリフォームしておけば問題なく売却できますが、人が亡くなってしまったような火事だと「瑕疵がある物件」となるため「告知義務」があり、売却価格も下がってしまうことが多くなります。
このように人が亡くなっていないボヤ程度の火事では告知義務はないといえますが、売却を依頼する不動産会社には実情を説明しておくことをおすすめします。
何をもって「瑕疵」と考えるかは人によって判断基準が異なり、ボヤ程度であっても建物に何らかのダメージが与えられているおそれもあるため、後日の紛争を防ぐために専門家の意見を聞いたうえで売却をすすめた方がよいからです。
瑕疵とはキズや欠陥のこと
「瑕疵」とはキズや欠陥のことを法律的にこのようによんでいます。
瑕疵には以下の種類があるといわれています。
- 心理的瑕疵
火災、自殺、事故死、殺人があった場合など
近隣施設で心理的に嫌悪感を抱きやすい施設がある場合は別に「環境的瑕疵」とよぶことがあります。
環境的瑕疵
火葬場・葬儀場・暴力団組事務所、騒音・異臭を発生させる工場があるなど
- 物理的瑕疵
雨漏り、シロアリ被害、土壌汚染など
- 法律的瑕疵
建築基準法、消防法、都市計画法などの法律・法令に違反している場合など
告知義務
不動産の購入者に不動産の状況を知ってもらったうえで納得して購入してもらうために購入者の判断基準となる事項をあらかじめ告知しなければなりません。
告知すべき事項を告知せずに売却すれば後日になって不要な紛争を招いてしまうことになってしまいます。
国道交通省が2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しているので告知義務について参考になるでしょう。
報道発表資料:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました
事故物件の告知については法律上の明確な基準がないため不動産取引において判断が難しく、室内での自然死や事故死についても、何年前まで告知しなければならないのか、死亡原因によって告知義務に差があるのか、判然とせず同じようなケースでも一方は告知され一方は告知されない、ということもありトラブルを招くこともありました。
そこでこのガイドラインによって一般的な判断基準が示されたものです。
人の死にかかわることについて告知義務がないとされたものは以下のようになっています。
- 自然死
- 日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)
*特殊清掃がされたものを除く
このことから次のような事例では告知義務があるといえるでしょう。
- 他殺、自殺
- 事故死(日常生活における不慮の事故といえないもの)
- 特殊清掃が行われた自然死、不慮の事故
- その他原因不明の死
事故物件の売却価格相場は?
事故物件の価格相場とハッキリいえる基準はありません。
一般の方が嫌悪感をどの程度抱くのかが一つの判断基準になります。
たとえば、下記のような傾向があるといわれています。
- 自然死で特殊清掃を行った場合:20%~30%
- 自殺:30%~50%
- 殺人:50%
嫌悪感を上回るメリットがあれば高く売却できる場合もある
火災があったことによって事故物件といわれるものであっても火災は「心理的瑕疵」と呼ばれているようにヒトの心理の影響が強くはたらきます。
判断基準は人によってそれぞれ異なるものなので、火災があってもそれほど気にしない方もいます。
また、駅の近くや商業施設、学校や病院など周辺施設に恵まれているような立地であれば購入意欲が高まることで心理的な影響は少なく、価格を下げずに売却できる可能性が高くなるといえるでしょう。
火災があった物件の売却方法
ここでは、火災があった物件の売却方法の工夫と売却の依頼先について解説します。
なお、売却を検討するときには複数の不動産会社に査定を依頼してもっとも信頼できる不動産会社に仲介を依頼することは一般の売却と同様です。
- ハウスクリーニングをする
- 一定期間をおいて売り出す
- 更地にする
- 不動産会社に売却依頼する
- 事故物件を専門に扱う不動産会社に売却依頼する
- 直接買取を依頼する
ハウスクリーニングをする
ハウスクリーニングやリフォームをしてできるだけきれいにし、火災のあとが感じられないようにしておきましょう。
購入希望者が訪問してうける第一印象はとても大事になります。
一定期間をおいて売り出す
火災が発生した直後は人々の記憶に残っていることが多く抵抗を感じることがあるでしょう。
心理的な要因が大きいため、記憶が薄れるまで一定期間をおいた方がよいので可能であれば数年間あけて売却活動をするのが得策です。
ただし、時間がたっても告知義務がなくなるとはいえないため、売却を依頼する不動産会社に相談しながらすすめてください。
更地にする
火災により痛ましい事故がかさなり人々の記憶に残ってしまうような状況であれば建物を取り壊して更地にするのも一つの方法です。
建物がなくなれば心理的な要因は薄まるでしょう。
ただし、建物を取り壊すには解体費用が必要になり、建物がなくなると固定資産税などが高くなることがあります。
建物を取り壊してしまう前に売却活動について不動産会社に相談しましょう。
不動産会社に売却依頼する
火災があった物件でも通常通り売却活動は可能なので、一般の不動産と同じように不動産会社に売却を相談しましょう。
火災の状況によっては売却が難しいと断られることがありますが、その場合にはその他の方法を検討しましょう。
事故物件を専門に扱う不動産会社に売却依頼する
不動産会社には事故物件を専門に扱う会社もあります。
そのような会社では心理的瑕疵を気にしない顧客を抱えているので売却仲介に応じてもらいやすくなるでしょう。
直接買取を依頼する
不動産会社では一般の方から購入希望者を募集する仲介業務のほかに、その不動産会社で直接不動産を買取り、リフォームなどをして再販売を行っている会社があります。
不動産会社が直接買取る場合には、
- 一般の購入者よりも不動産の瑕疵に対しての責任が軽減される
- 購入希望者を探す手間がなくなり早く売却できる
- 仲介料が不要になる
などのメリットがあります。
ただし、直接買取の場合は再販売による利益を見込んでの買取になるため市場価格よりも安くなります。十分に検討して依頼しましょう。