相続したけどお墓の近くは売りにくい?

相続した土地や建物の近くに墓地があることがわかったとき、自分自身でも墓地にこだわりがあれば果たして売却できるのか心配になることがあります。

墓地が近くにあることにはメリットもあるのでメリットをしっかりとアピールしてうまく売却したいものです。

この記事ではお墓の近くにある不動産のメリットやデメリット、売却のポイントについて解説します。

お墓の近くだと安くなりがち

お墓の近くの不動産だと安くなりがちなのは事実です。

お墓が近いと敬遠する方が多く、なかなか購入希望者が見つからないので売却完了まで時間がかかってしまうこともあります。

墓地ということで実害はなくても、墓地に近い家と離れている家とを比較するとどうしても離れている家が選ばれることが多いためです。

価格は需要とのバランスなので、敬遠されがちな墓地の近くの不動産は安くなりがちになってしまいます。

嫌悪施設

不動産を売却するときには、売主は「契約不適合責任」を負っていてお墓のような「嫌悪施設」が近くにあるときは「瑕疵物件」として告知義務があります。

何を嫌悪施設と感じるかは人それぞれで嫌悪施設に明確な定義はないものの、一般的に敬遠される可能性があるものは嫌悪施設として心理的・環境的に瑕疵があるものとして扱われます。

嫌悪施設の場合事前に告知しておかなければ、後になって買主から「購入前に知っていれば購入しなかった」と契約の趣旨にそぐわないから契約不適合だと契約の不備を追及されるおそれがあるからです。

そのため、後日のトラブルを防ぐために嫌悪施設については売買契約書や重要事項説明書に記載しておくのが一般的です。

なお、嫌悪施設といわれるものには以下のような場所があります。

  • 心理的な理由で敬遠される施設

墓地、葬儀場、精神科病院、刑務所など

  • 悪臭・煤煙が気になる施設

工場、ごみ焼却場、火葬場など

  • 危険を感じる施設

ガソリンスタンド、原子力発電所、危険物取扱施設など

  • 治安への影響から敬遠される施設

パチンコ店、風俗店、暴力団組事務所など

  • 騒音・振動が気になる施設

鉄道、高速道路、飛行場、学校、イベント会場など

メリットとデメリット

お墓の近くでは敬遠されるデメリットがありますが、メリットもたくさんあります。

メリットを把握して、メリットをアピールできる売却方法を考えましょう。

メリット

1.地盤が安定している

墓地や霊園は災害時に崩壊しないように地盤が安定している土地に作られることがほとんどです。

国内では地震が多く、地震災害が多く発生していろいろな報道がされている昨今では地盤が安定していることは大きなメリットになります。

ただし、一般的な傾向として墓地や霊園は地盤が安定している場所に作られることが多いということですから、具体的に地盤の強度を知るためには地盤調査を行わなければなりません。

2.閑静で緑が多い

墓地や霊園は比較的に静かな場所にあります。

街中であれば、商業地の喧噪や隣家の生活音が気になることもありますが、郊外にある墓地や霊園の近くだとそのようなことは避けられ、自然に囲まれた落ち着いた生活が期待できます。

3.住環境が変わりにくい

日当たりや風通しが気に入って購入したのに隣地にマンションが建ったので日当たりなどに影響があったり、静かな地域だったのにコンビニができて夜中まで人の出入りがあるようになったりと周辺の状況が変わってしまうことがあります。

墓地や霊園の近くだと廃止されることはあまりないので住環境が変わりにくいといえるでしょう。

4.日当たりや風通しが良い

墓地や霊園は広い敷地で低層なので日当たりや風通しがよいのが一般的です。

しかも、墓地や霊園が移設されることはほとんどないので将来的にも維持されることが期待できます。

デメリット

一般的に言われる墓地のデメリットを理解しておくと売却活動もスムーズにすすむでしょう。

1.風水や占いでは縁起が良くない

風水や占いなどを気にする方にとって墓地の近くだと抵抗を感じることでしょう。

こういったことを気にする方もいればそうでない方もいらっしゃいます。

2.心霊現象を怖がる方がいる

風水や占いと同じように墓地の近くだと心霊現象が発生するのではないかと気にする方がいます。

夜になると真っ暗になるためいっそう怖いイメージをもってしまうこともあるでしょう。

3.線香の臭いが気になることがある

墓地では線香をたくので窓を開けたり洗濯物を干したりすると線香のにおいが気になることがあります。

4.墓地の管理が悪いと環境が悪くなる

墓地にはお供えものがあるので野良猫やカラスがよってくるおそれがあります。

管理が悪くて荒れ果てていれば見た目も悪く、野良猫などの糞尿やゴミなどが放置されたままになり環境が悪くなってしまいます。

5.お盆の時期になると騒がしくなる

お盆やお彼岸などになるとお墓参りの方が多くなり、普段よりも騒がしくなってしまうこともあるでしょう。

また駐車場が整備されていない墓地や霊園だと路上駐車をする墓参の方がいて迷惑をこうむるおそれもあります。

売却する際の4つのポイント

お墓の近くの不動産を売却する際に注意しておきたい4つのポイントがあります。

墓地の近くだと告知する

お墓はいわゆる「嫌悪施設」と考えられているので売却を依頼する不動産会社に必ず伝えておきましょう。

不動産会社は売却活動をするときに墓地の近くであることを明示し、売買契約書や重要事項説明書にその旨を明記します。

そのように明記しなければ契約不適合責任を問われるおそれがあるためです。

後日の紛争を防ぐために告知は必ず必要です。

お墓の近くであれば悪いイメージを抱かれやすいものの、先のようにメリットもたくさんあるので不動産会社の方と相談しながらメリットをアピールする販売活動を行ってもらいましょう。

売却まで時間がかかることを想定しておく

お墓のデメリットを気にする方もいれば気にされない方もいるものの、購入希望者がなかなか見つからないことを想定しておきましょう。

競合物件が近隣にあればお墓から離れている方が選ばれやすくなるためです。

買換えや住み替えなどの予定があるのであれば売却まで時間がかかることを想定して計画をたてておくと安心です。

値引き交渉があることも想定しておく

メリットもあるお墓の近くの不動産とはいえ需要が低いことは事実です。

売却まで時間がかかることと同時に購入希望者が現れても値引き交渉をされることもあるでしょう。

売出価格からどの程度までなら値下げをしてもよいかを想定しておくと決断が早くでき、せっかく現れた購入希望者を逃さないですみます。

直接買取も視野に入れて検討を

買取とは不動産会社が仲介して一般に売却するのではなく、不動産会社が直接買取ることです。

直接買取ってくれるので、仲介料が発生せずに売却も早くすすみます。

デメリットとしては、不動産会社は当然ながら商品として買取るので商品化する費用を見込んで市場価格の7割~8割程度で買取る例が多いことです。

一度仲介物件として一般向けに販売活動を行い、それでも購入希望者が現れないときには買取をしてくれる不動産会社もいるので、いろいろと相談しながら売却をすすめてください。

なお、不動産売却に共通していえることですが、売却に際しては複数の不動産会社に査定を依頼して信頼がおける不動産会社を見極めることが大切です。