相続税を払わなければならないほど
相続したのに相続税が払えない!?
払えない理由と対処法
相続した時の税金には基礎控除があり、基礎控除額が変更された平成27年以降は相続した方の内8%台の方が相続税を支払う対象とされています。
相続税が課税されるほど相続財産があったなら相続税を支払うのに無理がないように思うのですが、どうして相続税を払うのが難しい場合があるのか、払えない時の対処法について解説します。
相続税が払えなくなるケースとは?
本来相続税が課税されるほど相続財産があれば問題なく相続税を払えるはずですが、相続財産を現金化するのが難しいときには、いくら相続財産があっても相続税を払うのが難しくなってしまいます。
相続税は原則として金銭で納付することになっているため、現金化できない相続財産が多い場合には相続税を払うのが難しくなるのです。
そのため、次のケースでは相続税を払うのが難しくなるでしょう。
1. 相続財産のほとんどが不動産の場合
2. 遺産分割協議が整わない売位
相続財産のほとんどが不動産の場合
預貯金などすぐに現金化できる資産が多ければ納税資金に困ることはありませんが、不動産などはすぐに現金化するのが難しく相続税が払えなくなる
おそれがあります。
不動産を相続して納税するためには次の手順を踏むことになります。
1. 遺産分割協議
2. 相続登記
3. 購入希望者を探す販売活動
4. 売買契約
5. 代金決済
6. 相続税納付
すぐに購入希望者がみつかり売買代金の調整ができるとは限らず、さらに売買契約から代金決済まで約1か月の期間を設けるのが通常であるため不動産
を現金化して相続税を納付するためには急いで売却準備を始めなければ時間切れになるおそれがあります。
不動産を売却して納税するメリット
不動産をうまく売却できれば物納よりも高く売却できて納税してもなお余裕が生じる可能性があります。しかし、売却して出た利益には譲渡所得税が
相続税とは別にかかるので譲渡所得税も念頭において準備しましょう。
なお、譲渡所得税を計算するときには、相続税の一部が控除できる特例があるので利用しましょう。
遺産分割協議が整わない場合
遺産分割協議が相続税の申告期限までにまとまらなかった場合でも相続税の納付義務は免除されません。
この場合には、未分割として仮に法定相続分で相続税を申告し納税することになります。
遺産分割協議がまとまらなければ預貯金を現金化することができません。
納税資金に予定していたのに預貯金が現金化できなければ納税資金を準備できないことになってしまいます。
このようなときには、相続財産の一部だけでも遺産分割協議をすることができるので納税資金分だけを遺産分割協議をすることができないか検討して
みましょう。
また、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を利用して預貯金の一部を払戻すことも可能です。
ただし、以下の金額が限度になるので納税資金には足りないおそれもあります。
● 相続開始時の預金額×1/3×法定相続分
● 同一金融機関からは150万円まで
なお、家庭裁判所で遺産分割のために調停などを行っている場合は、預金引出しの審判を申し立てることも可能です。
相続税を払えないときのペナルティとは?
相続税は被相続人が亡くなった日の翌日から起算して10か月以内に申告と納税をしなければなりません。
期限に間に合わなければ次のペナルティが課されます。
No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
● 無申告加算税
● 延滞税
● 差押
なお、複数の相続人がいる場合に、本人が相続税を納税しても他の相続人が納税しない場合には連帯責任を負う(相続税の連帯納付義務)ことになるの
で注意しましょう。
無申告加算税
正当な理由がないにもかかわらず、申告期限内に相続税の申告・納税をしない場合に課税されます。
延滞税
申告期限後に申告した場合は申告書を提出した日が納期限になります。
本来の納付期限の翌日から納付日までの日数分の利息を延滞税として納めます。
申告期限までに申告をしていない場合は、無申告加算税と延滞税の両方を納めることになります。
差押
相続税を納めずそのまま放置し続けると国税庁から差押をされるおそれがあるので早めに納付しましょう。
連帯納付義務
相続税には連帯責任があり、他の相続人が納税しない場合に他の相続人が納税する責任を負わなければなりません。
納付額に限度があるものの、他の方の税金まで納めることになるので注意が必要です。
相続税が払えない時の対処法
相続税が払えない時の対処法は次の方法があります。
なお、相続財産を売却するのも納税資金を準備する方法ですが、相続した不動産を売却できれば納税できるのでここでは省略しています。
●延納
●物納
●借入
延納
相続税を一度に払えないときには分割納付をすることができます。
納付が終わるまでの利子(税)を払う必要があり、延納を認められるためには一定の条件があります。
また、延納のために担保を提供しなければならないこともあります。
No.4211 相続税の延納|国税庁
延納のメリット
延納が認められれば分割納付できるので支払い負担が軽くなります。
また、不動産を売却するなど他の財産を手放す必要がなくなることもメリットといえるでしょう。
延納のデメリット
納付が終わるまで利子税が発生します。
また提供する担保にも条件があるため、延納が認められる条件を満たさなければなりません。
物納
延納が認められない場合には、相続財産を相続税として納めることができます。
物納に対象となる財産は相続財産に限られ、相続人固有の財産を物納することはできません。
また、物納できるものにも順序があります。
No.4214 相続税の物納|国税庁
物納のメリット
資金が準備できなくて納税できなくても相続財産で納税できるのはメリットといえるでしょう。
物納のデメリット
物納できる財産は種類や順位が定められています。
そのため、希望する財産を自由に納税にあてることができません。
また、物納する財産評価は相続税評価額が基準となるため、不動産など評価額が時価よりも低い場合は実際に売却するよりも安い価格で納税すること
になります。
借入
金融機関によっては、納税資金のための融資商品が用意されています。
所得など借入できるためには金融機関の審査が必要になりますが、延納による利子税よりも低い利率で借り入れることができるケースもあります。
借入のメリット
手放したくない相続財産を無理に売却して現金化することなく、納税資金を準備できます。
借入のデメリット
金融機関の審査に通らなければ借入ができません。
また、希望する条件で借入できるとは限らないので利用が難しい場合もあります。