店舗付住宅の売却
店舗付住宅は特殊な物件になるので、売却方法や税金など特別な扱いがあります。
この記事では店舗付住宅の売却方法や税金の特例について解説します。
店舗付住宅とは
店舗付住宅とは、文字通り「店舗が付いている住宅」のことを言います。
具体的には、1階が店舗で2階が住居になっていたり、間仕切りをして住宅部分と店舗部分とを仕切って利用していたりと1棟の建物に店舗部分と住宅部
分とが併設されている建物のことです。
店舗付住宅は店舗と住宅の二つの特徴をあわせもっているため、売却方法や税金などの面で特殊な部分があります。
残す動産に注意
店舗付住宅を現状のままで売却するときには、備え付けの設備や什器を残していくことになりますが、残していくものの目録を作成し買主に確認してお
くことが大事です。
売却交渉のときには備え付けてあるものの、売主が転居先に持っていきたいものもあるでしょう。
また、リース・賃借している設備については、リース会社に返却をするのか買い取るなどして買主に引き継ぐかを明確にしておかなければなりません。
備え付けたままで店舗付住宅と一緒に売却するもの、購入した年月日、不具合の有無などを目録に記載して、可能であれば買主と一緒に動作確認までし
ておくと、売却後のトラブル防止に役立ちます。
店舗付住宅は売りにくい?
一般に店舗付住宅は次の理由から売却しにくいといわれています。
● 住宅ローンを利用できない可能性がある
● 購入希望者が限られる
住宅ローンが利用できない可能性がある
近年では住宅を購入するときに住宅ローンを利用することが一般的ですが、店舗付住宅の場合住宅ローンで借入できるのは住宅部分に限られます。
そのため、借入を利用するためには住宅部分のために住宅ローンを借入れ、店舗部分のためや事業用には事業用ローンを借入れることになり、借入が難しくなることがあるからです。
なお、フラット35などの住宅ローンでは住宅部分の床面積の割合が一定以上なければ借入できないなどの条件があるため注意しましょう。
借換融資 対象となる住宅・技術基準:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】
購入希望者が限られる
店舗付住宅が売却しにくい理由として、店舗付住宅を必要とする方が限られていることもあげられます。
店舗付住宅は購入してそこで暮らしながら営業する目的であれば職住一体となって便利ですが、普段生活するのは専用住宅で事業用には別に店舗を用意したいと考える方が多いため需要が限られ市場が狭くなるからです。
店舗付住宅の売却方法
店舗付住宅を売却する方法には以下の3つがあります。
1. 現状のまま売却する
2. 古家付き土地として売却する
3. 不動産会社に直接買取を依頼する
現状のまま売却する
店舗付住宅は店舗の設備や什器等をそのまま残して売却することが多く行われています。
売主は設備の撤去が不要で、買主は什器等をそのまま利用できれば新しく設備投資をする必要がないので初期費用を抑えることができるなど
売主買主双方にメリットがあるため居抜きでの売却が同業種間では特に歓迎されます。
そのため一般の住宅ではリフォームなどをした方が売却しやすいことがありますが、
店舗付住宅では現状のまま売り出した方がよい場合も多くあります。
古家付き土地として売却する
店舗付住宅なので実際には建物があるものの、建物がないものとして売却する方法です。
建物を建築後年数がたっている場合や店舗としての需要が見込まれない地域では店舗付住宅としてでは購入希望者が限られるため
購入希望者を広く求めることができるからです。
この方法だと土地だけの価格となるので売却価格は低くなるため購入希望者を探しやすくなります。
なお古家付き土地として売却する場合、売主は建物を解体しないで建物も土地と一緒に売却しますが、
売買交渉の過程で買主が建物を不要だとして解体費用分の値引きを求められることもあります。
不動産会社に直接買取を依頼する
不動産会社によっては、売買を仲介するだけでなく自社で直接買取をしてくれる会社もあります。
直接買取だと販売活動をしなくてよいのですぐに売却できるメリットがあります。
不動産会社は購入後商品として売却するためリフォーム費用などを考慮した金額で買い取るため市場価格よりも安くなりがちですが、
現金化を急ぐ場合にはおすすめの方法といえるでしょう。
売却仲介を依頼する場合と同様に、直接買取を依頼するときにも複数社に見積を依頼してから売却を決めることをおすすめします。
店舗付住宅の税金の特例
店舗付住宅では、店舗の性格と住宅としての性格をあわせもっているため税金の特例の扱いに注意しましょう。
● 居住用不動産の3,000万円の特例
● 事業用資産の買換え特例
● 店舗部分には消費税がかかる
居住用不動産の3000万の特例
店舗付住宅でも住宅部分については居住用不動産の3,000万円の特例が適用されます。
この特例は居住用財産を売却して得た利益について所有期間に関係なく3,000万円まで控除して譲渡所得税を計算することができるものです。
ただし控除できる額は建物全体の売却利益のうち住宅に該当する部分に限られます。
建物については以下の算式で住宅部分の割合を求めます。
住宅面積+併用部分の面積×住宅面積/(住宅と店舗面積の合計)
土地については以下の通りです。
土地のうち住宅用の土地面積+併用部分の面積×(上記で計算した住宅部分の面積+建物全体の面積)
No.3452 店舗併用住宅を売ったときの特例|国税庁
事業用資産の買換え特例
個人が事業用に使用している不動産を買い換えた場合は一定の条件にあてはまるときには譲渡益に対する課税が繰り延べされる特例があります。
ただし、繰り延べされるだけで非課税にはなりません。
No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例|国税庁
店舗部分には消費税がかかる
個人が住宅を売却した場合には消費税の対象にはなりませんが、店舗付住宅では店舗部分を事業用に使用しているため店舗部分の売買代金に対して
消費税がかかりますので売買契約を結ぶときには注意しましょう。
No.3240 事業用建物等を譲渡した場合の消費税|国税庁
売却仲介を依頼する不動産会社の選定
不動産を売却するときには不動産会社に相談しながら現状のまま売却するのか古家付き土地として売却するのかなどその物件に最適な方法を検討するのがよいでしょう。
不動産会社の営業範囲は幅広くそれぞれの会社や営業担当者には得意とする分野があります。
売却を依頼するときには複数の会社に査定を依頼したうえで、店舗付住宅の売却に強く相性がよい担当者に依頼するとよいでしょう。