家を売って損をしたときの税金の特例
気に入って住んでいたマイホームを手放すときは、どうせならなるべく高く売却したいものですが、残念ながら希望通りにいかず損失がでるときもあります。
損失がでたときには利用できる税金の特例を活用し、できるだけ損失をカバーしておきましょう。
そこで今回は、マイホームを売却して損失がでたときに利用できる税金の特例について解説します。
「損・得」の計算のしかた
希望通りの価格で売却できなかったから「損をした」のではなく、税金の特例が適用されるためには一定の基準があります。
売買代金=利益ではない
家を売ったときの損得を考えるときに売買代金がそのまま利益になるわけではありません。
相続した場合はともかく、購入した場合には取得費がかかっています。
売却した代金から取得した原価や譲渡するためにかかった費用を差し引いた残りが、利益になります。
売却益(損)の計算方法
そこで売却した利益は次のように計算します。
(売却代金-取得費-譲渡費用)
売却代金が取得費や譲渡費用を下回ったときに「損がでた」ことになります。
取得費とは、家を買った時の購入代金、仲介手数料、リフォーム工事費や設備費などです。
ただし建物は購入代金そのままではなく減価償却をした価格になるので注意しましょう。
取得費がわからないときは売却代金の5%を取得費とすることもできます。
譲渡費用とは、仲介手数料、測量費用、売買契約書に貼る収入印紙代、建物を取壊した場合の解体費用などがあたります。
損がでたときに使える2つの特例
損失が生じたときに利用できる特例は以下の2つです。
オーバーローンや買換えの時の損失に利用できます。
1. 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
2. マイホーム買換えの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
特にオーバーローンで売却したときには、今後の生活を立て直すためにも税金の特例を忘れずに活用しましょう。
居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
住宅ローンを利用していたマイホームを売却したときに、売却代金が住宅ローンの残高を下回った場合(「オーバーローン」の場合)にでた損失は、
その年の他の給与所得や事業所得から控除(損益通算)し、残った損失は翌年以降3年間繰り越して控除することができる特例です。
オーバーローンであれば適用されるのでマイホームを買換える必要はありません。
控除できる金額には制限があり、住宅ローンの残高から売却代金を差し引いた金額が控除の上限になります。
つまり、5,000万円で購入したマイホームを1,000万円で売却した場合には差し引き4,000万円の損失がでていますが、住宅ローンの残高が2,000万円な
ら、2,000万円から売却代金の1,000万円を差し引いた1,000万円が控除の上限になります。
所得制限のほか、マイホームに住まなくなってから3年以内に売却することなどいろいろな条件があります。
また親子など特別な関係にある方との売買には適用されないので注意しましょう。
No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
マイホーム買換えの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを買換えた場合に譲渡損失がでたときは、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得と損益通算できる特例です。
この特例は住宅ローンが残っていなくても利用できます。
1年間の所得で控除できなかった損失は翌年以降3年間繰り返し控除できます。
ただし、所得や譲渡したマイホーム・購入するマイホームについていろいろな条件があり、親子や夫婦など特別な関係にある方同士の売買には適用さ
れないので注意しましょう。
No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
買換えた家で住宅ローンを利用する場合は新しい家での住宅ローン控除も利用できます。
ただし、住宅ローン控除は課税所得があることが前提なので所得全額を損益通算している間は住宅ローン控除を利用できません。
確定申告を忘れずに!
いずれも確定申告をしなければ特例を受けることができません。
マイホームを売却した翌年には確定申告を忘れないように気をつけましょう。