賃貸中のマンション
売却方法とポイントを解説

  分譲マンションを購入したけど転勤になったので賃貸にだすことはよくあります。
  しかし、病気などでまとまったお金が必要になったり、購入したマンションに戻らないことが決まったりすれば、このまま所有し続けるか、この際売却するかを決めなければなりません。
  分譲マンションは所有していれば、固定資産税、管理費、修繕積立金などが発生するため所有しているだけで負担が生じます。
  この記事では、賃貸中のマンションを売却する方法と売却のポイントについて解説します。

賃貸中のマンション3つの売却方法

賃貸中のマンションを売却するタイミングや方法は主に以下の3つです。
1. 賃貸中のまま売却
2. 退去を待って売却
3. 入居者に売却

  賃貸中のまま売却

賃貸をしたまま売却(オーナーチェンジ)するメリット・デメリットをまとめました。

 売主買主
メリット・売却活動をしながら家賃収入がある・賃貸中なので購入後入居者募集が不要
・現状で利回りの計算ができる
デメリット・収益物件なので購入者が限られる・内覧ができない
・購入後に修繕が必要なおそれがある

  賃貸中であれば購入しても購入者自身は入居できないので、投資物件として売却することになります。
  そのため、購入者は不動産投資を目的にした方に限定されるため市場が狭くなり、購入希望者は購入してどれだけ利益が生じるかを重点的に考えます。
  現在、周辺の賃貸マンションに比べて高い家賃で賃貸していれば売却するのがおすすめです。
  家賃は収益物件の価値を判断する重要な要素だからです。
  高い家賃を維持できているのは、入居者が何度も賃貸契約を更新しており、家賃が下がっていないことの根拠になります。

  現在80,000円で賃貸中でも入居者が入れ替わったとすれば現在と同じ80,000円で賃貸できるとは限りません。
  さらに、入居者が退去すれば、新しく賃借人を募集するためにリフォーム費用やエアコンなどを交換しなければならないこともあるので、周辺の賃貸物件と比べて高い家賃で賃貸している場合は、設備投資が不要な退去前の売却が有利です。

  購入を検討している方は、現在入居中の物件であるため、部屋の様子がわかりません。
  そのため、物件の仕様やリフォームをした情報、設備機器の情報などを詳細に説明できる資料を準備しておくと購入希望者は安心します。

  現在マンションを管理している管理会社や不動産会社に直接買取を相談するのもよい方法です。
  管理会社なら物件の情報をよく知っているので購入の判断が早くできます。
  一般の不動産会社に売却を相談するときには、市場に売却募集をしてもらうと同時に一定期間購入希望者を募集しても購入希望者が現れなかったときには、その不動産会社に買取ってもらえないかを相談することもできます。

   退去を待って売却

  住宅として賃貸している場合に、売却するからという理由で賃貸借契約を解約することは簡単ではありません。
  借地借家法によって借家人の地位は強く守られているからです。
  ほとんどの場合、明け渡し交渉に相当な期間がかかり、立ち退き料も発生するでしょう。
  現在賃貸中であれば、オーナーチェンジの方法で売却する法がよいでしょう。
  この点、マンションを貸し出すときに「定期借家契約」にしておくと期間満了と同時に賃貸借契約が終了するので、売却や自分が住むために戻る可能性があるときにはおすすめの契約です。

  現在賃借人がなく空室の場合は、居住用物件としても投資用物件としても売却が可能です。
  ただし、次のことを目安として考えておきましょう。
  ● ワンルームや1Kなどのコンパクトなマンションは投資用物件
  ● 2DK以上のマンションは居住用物件
  としての市場が期待できることです。

  2DK以上になると物件価格が高くなるほどには家賃を高く設定できないため投資物件には向いていないためです。
  具体的には、売却するマンションの近くに大学など単身者がたくさんいるか、など周辺の需要を考慮しながら決めていくことになるので不動産会社と相談しながら決めるのがよいでしょう。
  空室なら購入希望者が内覧できるので物件の魅力をアピールできるため、居住用物件としてもチャンスが広がります。

  なお、空室の状態は今後の売却戦略を考える絶好の機会でもあります。
  空室の機会を利用してリフォームをすれば高い家賃で貸し出すことができます。

  そのため、家賃でリフォーム費用を回収しながら、より有利な価格で売却ができる可能性が高まります。
  家賃が高ければ高いほど投資用物件としての魅力が増すからです。

   入居者に売却

  賃貸中のマンションを売却するときには、現在入居中の方に購入の意思を確認すると購入されることがよくあります。
  入居者であれば、物件のことをよく知っていて気に入っているからこそ住み続けているからです。
  マンションの立地がよくて周辺に同じような売却物件が少ないときには、さらに可能性が高まります。
  入居者に管理会社などを通じて購入の意思を確認してもらい、同時に退去の予定があるのかも聞いてもらうとよいでしょう。
  もしも退去の予定があるのなら一般の物件として売りだすことができるので、退去の予定を確認しておけば今後の予定がたてやすくなります。

オーナーチェンジの方法

  賃貸中のマンションをそのまま売却することを「オーナーチェンジ」とよんでいます。
  賃貸中の物件だからといって、売却前に賃借人の同意や事前に売却の意思を賃借人に伝える必要はありません。
  賃借人には、売却が終わった後に通知をすれば十分です。

   敷金や保証金は新しいオーナーに引き継ぐ

  敷金や保証金は、賃借人から預かっているお金なので賃貸借が終わった時には賃借人に返さなければなりません。
  そのため、敷金・保証金など賃借人に返すお金は新しいオーナーに引き継ぐことになります。
  売買代金の決済をするときには、売買代金の他に固定資産税や管理費などの清算を行います。
  これらのお金を全てやりとりするのは大変手間がかかり、間違いが起こりやすいので、通常は計算書で売主が受け取るお金と支払うお金を計算して、差額を受け渡すことになります。
  なお、家賃も精算の対象なので、月払いの賃貸借契約で月の途中、例えば15日などに売買代金の決済引渡しを行うときには日割計算をして家賃の清算をすることになります。

賃貸中のマンション売却を成功させるポイント

  賃貸中のマンション売却を成功させるためには次のポイントをおさえておきましょう。
  1. 相場を把握する
  2. 複数の査定を受ける
  3. 投資用物件に強い会社に売却を依頼する

   相場を把握する

  居住用の不動産売却と賃貸中のマンション売却との違いは不動産の「相場」についての考え方です。
  居住用であれば、周辺の同じような物件と比較して同様の価格で取引されるのが一般的です。
  しかし、賃貸中のマンションの場合は、周辺の物件価格に「利回り」、収益性が加味されて価格が判断されます。
  投資用の物件であれば、当然ですが利益が見込めなければ購入しません。
  この考え方を「収益還元法」といいます。

  利回り=(売上高-経費)/物件価格

  として利回りが計算されます。
  最近では、不動産の売買価格は高くなっているものの家賃はそれほど高くなっていません。
  利回りは家賃収入が左右するため、売買価格が高くなっていれば利回りが低くなるため、居住用物件と比べて安く取引されることが多くなります。

  もう一つの売買価格を左右する要素は立地です。
  今後不動産売却価格が高くなる可能性があれば、短期的に安定した家賃収入があり将来の売却利益が見込まれるのであれば収益物件としての魅力が高まります。

   複数の査定を受ける

  一般の不動産を売却するときと同じように、複数の査定を受けることが大事です。
  賃貸中のマンションを売却するときには、特に賃貸契約書を準備して査定を受けることが大事です。
  投資物件となる賃貸中のマンションは賃貸契約の内容が重要な査定条件になるからです。
  賃貸借契約書には、賃貸契約の内容となる賃料や敷金などの内容が書かれています。
  また、入居者の状況、たとえば家賃の滞納、入居者同士のトラブルなどは正直に告げましょう。

   投資用物件に強い会社に売却を依頼する

  賃貸中のマンションの売却を依頼する時は、投資物件に強い会社に売却を依頼しましょう。
  不動産会社にも得意分野とそうでない分野があるからです。
  一口に不動産会社といっても不動産会社の業務は幅広くあります。
  たとえば、賃貸契約、戸建の販売、マンションの販売、商業用地の販売、そして投資用物件の販売などです。
  投資物件の購入希望者は全国から募集することになります。
  所有者が遠方にいても、また購入希望者が遠方にいても、どちらにも対応できることが大切ですし、物件が賃貸中であることから賃貸マンション特有の問題にも対処できなければ安心して売却をまかせられません。