抵当権が残っている不動産の売却方法
いざ不動産を売却しようと不動産会社に相談したら「抵当権が残っている」と言われました。
「あれ?ローンの返済は終わっているのに…」
このような思いをされる方もたまにいらっしゃいます。
今回は、不動産を売却するにあたって抵当権はいつまでに抹消すればよいのか、また抵当権を抹消する方法について解説します。
抵当権とは
金融機関から住宅ローンを借りたり事業資金を借りたりすると不動産に抵当権を設定されることがあります。
抵当権はお金を貸した方が貸付金を回収する担保の手段として設定するもので、貸付金の返済がされないときに担保にとっている不動産を売却して返済に充てるためのものです。
抵当権が残ったままでも不動産の所有権は移転できますが、所有権の移転よりも先に設定されている抵当権の方が優先されるので抵当権をつけている方が「競売」を申し立て売却されると、抵当権がついたまま不動作を購入した新しい所有者は所有権を失ってしまいます。
そのため一般的には抵当権を抹消してから所有権を移転することになります。
抵当権はいつまでに抹消するの?
不動産を売却すると売買契約書を作成したあと約1か月後に売買代金の授受と不動産の引渡しをする期日を決められます。
この期日を「決済日」とよんでいます。
この約1か月間が売却のための準備期間となるので、売主は売却に向けていろいろな準備をすすめていくことになります。
抵当権の抹消もその準備の一つで、抵当権はこの決済日よりも前に、あるいは決済と同時に抹消できるようにしておきます。
抵当権が残っている2つの理由
抵当権が不動産に設定されている理由は以下の2つが考えられます。
1. 住宅ローンの返済が終わっていない
2. 住宅ローンの返済は終わったのに手続きをしていない
住宅ローンの返済が終わっていない
抵当権は借りたお金の担保のために設定されているので借りている住宅ローンを返済しなければ抹消されません。
そのため決済日までに住宅ローンを全額返済しなければなりません。
ただし、売却代金を返済資金に充てることもできます。
この場合には決済と同時に抹消できるように準備を進めておきます。
具体的には、住宅ローンを借りている金融機関に
●決済日を伝えて決済日に住宅ローンを一括返済すること
●売却するので抵当権を抹消できるように準備をしてほしい
ことを伝えます。
また、不動産の売買には通常司法書士が関わりますから、担当する司法書士に決済と同時に抵当権を抹消することになると伝えておきましょう。
そうすると司法書士と金融機関の担当者とが打ち合わせして決済が無事に進むように準備をしてくれます。
なお、当サイトの「住宅ローン返済中の家を売却するときの注意点」も参考にしてください。
住宅ローンの返済は終わっているのに手続きをしていない
住宅ローンの返済がすでに終わっているのに抵当権がついたままになっていることがよくあります。
抵当権は住宅ローンの返済が終われば自動的に抹消されるものではありません。
法務局で抵当権の抹消登記をする必要があります。
住宅ローン会社または住宅ローンの保証会社が抵当権を設定しているときは、返済が終われば抹消登記に必要な書類が本人に渡されます。
このとき「抹消登記はいつでもできるから」「急がないからそのうち時間をみてしよう」「抹消書類がきたから安心」と手続きをしないまま放置されることがあるのです。不動産を売却するときには決済日までには抹消登記をしなければならないので、返済が終わっているのに抵当権が残っているときは急いで抹消書類をさがしましょう。いくら探してもないときには、金融機関に抹消書類の再発行を依頼します。金融機関では再発行に応じてくれることがほとんどですが、2週間~3週間抹消書類の手配に必要なことが多いです。そのため早めに準備をはじめましょう。
なお、担保として「根抵当権」が設定されているときは、この根抵当権は取引全体を担保するためのものなので一つの借入の返済が終わっても抹消してもらえませんから注意しましょう。
相続した不動産は昔の抵当権が残っていないか確認しましょう
不動産を相続した時は、昔の抵当権が残っていないか念のために確認しておきましょう。
いざ売却しようとしても難しい場合があります。
亡くなった方が借り入れたお金のために抵当権が設定されたままになっていることがあるほか、中には明治時代の抵当権がそのまま残っていることもあります。亡くなった方が借りていたための抵当権の場合には、バブル崩壊後金融機関の再編が行われており現在どこの金融機関に問い合わせればよいのかわからないことがあります。
明治時代の抵当権の場合は、抵当権者の相続人を調べる必要があり相続人を確定するまでに時間がかかります。
また、相続人がわからないことも多いのでその場合は供託などをしなければ抹消登記ができません。
いずれにしても時間がかかる作業ですので、不動産を相続したときは抵当権など所有権の邪魔になるような権利がついていないか確認しましょう。