取得費は5%だけ!?
不動産の取得費がわからないときの計算方法

相続した不動産を売却しようとしたら税金がかかると言われました。
「売買代金は5,000万円なので税金がどれだけくるのか心配!」
「経費はみてもらえないの?」
「領収書がなければ5%しか経費としてみてもらえないと聞いた!」
不動産を売却したら不動産譲渡所得税などの税金がかかります。
領収書などがあれば取得費を認められやすいのですが、取得費を証明できなければ5%しか取得費として認められないのが基本です。
この記事では取得費と不動産譲渡所得税、領収書がない場合の取得費の算定方法について解説します。

不動産の取得費とは?

不動産の取得費とは、不動産を購入した時にかかった経費です。
必要経費が多いほど、利益が少なくなるので税金も少なくなるのです。
購入したときには翌年に確定申告をするもののそれ以降は売買契約書や領収書を目にする機会はほとんどありません。
しかし、これらの書類は万一売却するときには取得費を証明する大事な書類になるので、わかりやすいところにきちんと保管しておきましょう。

不動産譲渡所得税に影響

      不動産の取得費は不動産譲渡所得税や住民税に影響します。
   不動産を売却したときは、発生した利益に対して不動産譲渡所得税や住民税がかかります。
   譲渡所得は次の計算式で計算します。
   売却利益=売却代金-(取得費+譲渡費用)
   3,000万円で購入した不動産を5,000万円で売却したときの差額は2,000万円ですが、経費としてさらに取得費や譲渡時にかかった費用を差し引くことができるのです。
   不動産譲渡所得税は所有期間によって税率が異なります。

   譲渡所得税 住民税   復興税  合計(%)
 5年以内  30  9  0.63  39.63
 5年超  15  5  0.315  20.315
                                               

所有期間によって税率が2割近くちがいますね。
また、マイホームを売却したときには3,000万円の控除があるなど税額が軽減されることもあるので適用もれがないように注意しましょう。

取得費の5%とは?                                                               

   自分自身が購入した不動産であれば購入時の売買契約書や購入当時の領収書を保管してあることが多く取得費の計算は簡単なことが多いです。
  しかし、親や祖父母が購入した不動産を相続して売却するような場合には当時の取得費を証明するのはほとんど不可能でしょう。
  相続した場合の取得費は相続時の時価などではなく、名義人(親や祖父母)が売買などで取得したときの価格です。
  このように取得費がわからないときは5%まで経費としてみることができるのです。
  No.3258 取得費が分からないとき|国税庁
  日本は昭和30年代の高度成長期を経て貨幣価値が大きく変わったのと都市開発が進んだために、それ以前に取得した不動産では仮に取得費がわかっても5%を取得費とした方が有利な場合もあります。
  実際の取得費がわかっていて5%よりも安かったとしても5%まで取得費とすることは違法ではありません。

不動産の取得費になるものは?

譲渡所得を計算するのに取得費が大事なことがわかりました。
以下のような費用が取得費になるので領収書を保管しておきましょう。

● 土地・建物の売買代金
● 建築費
● 売買の仲介手数料
● 売買契約書に貼った印紙代
● 取得時の登録免許税や司法書士報酬
● 不動産取得税
● 住宅ローンの利息

ただし、建物については取得額そのままではなく減価償却をした金額になります。
万一領収書がみつからなくても購入時の通帳で支払項目が確認できれば費用として認められることがあります。
領収書とあわせて通帳なども保管しておくと安心です。
No.3252 取得費となるもの|国税庁

取得費がわからないときの計算方法

    不動産が高騰したバブルのときに購入した不動産を売却するときなど「5%の取得費では納得できない」という場合もありますね。
    実は5%の取得費は税務署内の通達なので、それ以外に合理的に税務署を納得させる資料があれば証拠となる領収書などがなくても認められる可能性があります。

    具体的には次のような方法で取得費を算定します。
    ● 市街地価格指数
    ● 建物の標準的な建築価額
    ● 税理士や不動産鑑定士による不動産取得費査定
    ● その他の方法

        市街地価格指数

  一般財団法人日本不動産研究所が公表している「市街地価格指数」を参考にして取得時の価格を算定する方法です。
    全国の主要都市について変動指数が示されているので、この指数をもとに取得時の土地の価格を算定します。

   建物の標準的な建築価額

  国土交通省が公表している建築着工統計の「構造別:建築物の数,床面積合計,工事費予定額」参考にして建築当時の工事費を計算し、減価償却をして取得費を算定します。

  税理士や不動産鑑定士による不動産取得費査定

  税理士や不動産鑑定士が不動産の取得費を査定してくれるサービスを提供していることがあります。

  その他の方法

  ● 過去の路線価を調べる
     ● 登記情報に記録されている住宅ローンの債権額から購入代金を推測する

    路線価は国税庁が公表している数値なので、説得力があります。
    古い路線価をインターネットで検索するのは難しいですが、国会図書館に保管してあるので調べることが可能です。