終活で考えておきたい不動産のこと
終活とは、自分の最期と向き合い、人生のしめくくりの準備をすることです。
家族に老後や死後に迷惑をかけないように、家族が困らないように、身の回りの整理や葬儀・墓の準備などをしていきます。
なによりも、終活は自分自身が老後を健康で快適に暮らすための準備ととらえましょう。
終活でしておくこと
財産においての終活は、財産を記録して整理していくことです。
土地の境界確定をしたり、権利書や購入時の売買契約書などを確認したりしましょう。
自分の財産を整理しておくことで相続税の見通しをたてることができるので、相続税対策を検討することができます。
また、境界確定ができていない土地は相続人にトラブルを引き継がせてしまうことになりますから、できるだけ生前にトラブルの元をなくしておきましょう。
自分が亡くなった後の相続について、自分の気持ちを家族にうちあけ、家族の希望も聞いておくとよいでしょう。
場合によっては、遺言書を作成しておけば無用な相続トラブルを防止できることがあります。
特に不動産を相続すると遺産分割が難しいことがあり、住む人がいなくて空き家になってしまうと、不法投棄されたり犯罪に利用されたりするおそれがあり、また老朽化して資産価値が下がるので負の財産になるおそれもあります。
終活の目的はなにか
終活の目的はなにかを自分自身で確認しておくと、何をするべきかがみえてきます。
不動産に関する終活の目的には主に以下の3つがあります。
● 老後資金を得るため
● 相続税を節税するため
● 相続でのもめごとを予防するため
老後資金を得るため
老後の資金を得るためには不動産の売却が考えられます。
しかし、自宅を売却してしまえば住む家がなくなってしまいます。
この相反する目的を満たすためには、子どもと同居する、アパートなどの賃貸住宅に住むなどがありますが、他にもリバースモーゲージやリースバックといった方法もあります。
これらについては後から解説します。
相続税を節税するため
一般的には現金と比べて不動産は相続税評価額が低くなるため、相続税を節約するためには現金を不動産に変えておくと有利です。
他にもうまく生前贈与をしておくことで節税することも可能です。
また賃貸にだすことでも相続税を節税することができます。
ただし、不動産相続では遺産分割が簡単に進まないことがあるので注意しましょう。
相続でのもめごとを予防するため
相続人のうちの例えば長男に特定の財産を引き継がせたい場合には遺言書を作成しておくと希望通りに相続させることができます。
ただし、他の相続人の遺留分をおかさないように注意しなければなりません。
終活の一環として、相続人である家族間で自分の気持ちを話し、他の家族の意見も聞きながら相続の準備をすすめていきましょう。
不動産の終活方法4つ
不動産の終活方法として以下の4つがあります。
● 売却する
● 賃貸する
● 生前贈与する
● 相続させる
それぞれの方法のメリットやデメリットを整理しておきましょう。
売却する
不動産を売却すれば売買代金がもらえるので老後資金を確保できるメリットがあります。
不動産が亡くなれば維持費や固定資産税がかからなくなることもメリットです。
しかし、自宅を売却すれば住むところがなくなりますので住む場所の手当が必要になります。
そこで、資金を得ながら住むところが確保できる方法が以下のリバースモーゲージやリースバックといった方法です。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージは自宅を担保にしてお金を借りる方法です。
原則として、お金を借りた方が亡くなったときに不動産を売却して清算することになります。
返済は利息だけなので返済負担も重くないこと、自宅に住み続けられることがメリットです。
しかし、リバースモーゲージは変動金利型がほとんどなので、金利変動によって返済負担が重くなることがあります。
また、不動産評価の見直しによって価値が下落した場合には、評価不足分の返済を求められたり相続人が返済を求められたりすることがありますから注意しましょう。
リースバック
リースバックとは、不動産会社などに不動産を売却して、売却後も賃借して引き続き住み続ける契約方法です。
ただし、賃借するため家賃が発生するのがデメリットです。
賃貸する
空いている土地などの不動産があれば賃貸して有効活用ができます。
賃貸住宅にすれば相続税評価額が減額されるので相続税の節税になるメリットもあります。
ただし、利便性がよくなければ賃貸にだしてもメリットが少なく、維持費や修繕費などが負担になることがあります。
生前贈与する
生前贈与をすれば財産を希望する人に確実に引き継ぐことができます。
贈与する人を含めて他の相続人に話しておくことで相続トラブルを未然に防ぐことも可能です。
贈与すれば贈与税がかかりますが、生前贈与を上手に利用すれば相続税を節税できる場合もあります。
相続させる
持っている財産を何もしないでそのまま相続させることも可能です。
相続させる場合には、相続した不動産を子や孫が利用する予定があるか、相続の話し合いでもめる可能性はないかを考慮しておきましょう。
元気なうちに自分の気持ちを家族に伝えておくことで相続トラブルを予防することができます。
場合によっては遺言書を残しておくことも検討しましょう。
遺言書の方式は主に以下の2つが利用されています。
● 自筆証書遺言
● 公正証書遺言
自筆証書遺言
相続財産のリストを除いて遺言書本文、日付、氏名を自筆で記入して捺印する方法です。
自宅に保管しておくことも可能ですが、遺言書があることを誰も知らなかったり、遺言書を破棄されたり偽造されたりするおそれがあること、様式違反で無効になるおそれがあること、遺言書の内容に不備があるため活用できないことがあることなど作成には注意が必要です。
その他自筆証書遺言の場合は家庭裁判所で検認手続きが必要になるので注意しましょう。
なお、法務局が自筆証書遺言を預かってくれる制度があり、この制度を利用すれば家庭裁判所での検認手続きが不要になり、紛失のおそれもなくなります。
公正証書遺言
公証人が遺言書の内容をチェックしてくれるので法的な不備がおこらず、紛失のおそれもありません。
ただし、相続財産の額によって遺言書作成費用がかかることがデメリットです。