区画整理される土地の売却
土地を売却しようと思ったら区画整理されることがわかりました。
区画整理事業は長くかかると言われたり、地権者間の権利調整が難しいと言われたりします。
この記事では、区画整理の流れや期間、売却のタイミングについて解説します。
区画整理される土地も売却できる
区画整理されるからといっても原則として売却は禁止されないので売却は可能です。
しかし、区画整理地を売却するときに気をつけたいポイントがあります。
区画整理事業は、
●長期間にわたる
●土地の形状・面積が変わる
●土地の位置が変わる
ことから注意が必要です。
区画整理とは?
区画整理とは、下の図の整理前のように入り組んだ土地を整理して、整理後の図のように整然と土地を整理して道路を拡張し、公園などの整備を行う事業です。
区画整理前の土地は、昔から人々が生活していくなかで自然に道ができ、それぞれの人が所有する区画ができあがってきたものです。
このように自然にできあがった区画では、現在の生活に欠かせない自動車が通れない、道路が迷路のように入り組んでいる、公園などが整備されていないなど、現代の生活に不便な面があります。
火災がおきても消防車が入れない、災害時に避難場所がないなど防災の面からも安全が保証されません。
そこで、現代の生活に便利で安全な空間をつくるために区画整理事業が行われます。
区画整理では、図のように整理前の区画の中で道路や公園を整備して、事業資金をねん出するために新しく売却するための土地(保留地)を作るなどのために整理前の土地から少しずつ土地を提供してもらうことになります。
そのため区画整理後は整理前の土地よりも面積が少ない土地が割り当てられることになり、これを「減歩」といいます。
また、図では整理前のAさんの土地と整理後のAさんの土地は同じような場所にありますが、整理事業によってはCさんの区画にAさんの土地が割り当てられることや、調整金(清算金)を支払ってAさんに土地を割り当てないといったこともあります。
区画整理によって、整理前と整理後はほぼ同価値の土地が割当てられるのが原則ですが、同価値で換地できないときには、清算金によって調整することになります。
従来地、保留地、仮換地とは?
区画整理事業では特殊な用語が使われることがあります。
ここでは、従前地、保留地、仮換地について、整理しておきましょう。
従来地留地
区画整理される前からある土地のことをいいます。
区画整理が終わって従前地に割り当てられる土地を「換地」といいます。
従前地の権利は換地にそのまま移ります。
保留地
区画整理事業では、事業資金をねん出するために従前地より少ない土地を換地として割当て、余った土地を売却します。
この売却する土地を保留地とよびます。
仮換地
従前地に対して割当てられる予定の土地の土地を仮換地といい、割当てられた時点では区画整理が完了していないため、「仮」の字を使っています。
区画整理事業が進んで道路整備や区画の整備が終わった時点で仮換地指定がされ新しい土地(仮換地)を利用できるようになり、建物を建築することもできるようになります。
ただし、仮換地の段階では換地が完了していないので登記の地番は従前地のまま行われます。
仮換地の場所はブロック・ロットの番号で特定をし、建物登記の地番はブロック・ロットにあたる地番(底地番)を用います。
先の換地図を参考にして解説します。
Aさんの土地がCさんの土地に換地される場合に、仮換地の段階でAさんからXさんが土地(従前地)を購入して建物を建てた場合には、建物登記はCさんの従前地の地番が使用され、土地の所有権はAさんの従前地にするという、少しややこしいことになります。
区画性の事業主体
区画整理事業は国や地方自治体が都市計画の一環として行う場合と土地区画整理組合などを作って民間が行う場合とがあります。
民間が事業主体で行う場合には、資金不足を理由に賦課金や再減歩などの負担が発生するおそれもあります。
土地を売却すれば買主がリスクを負うことになるので、売買契約の際に十分な理解を得ておく必要があります。
区画整理に要する時間
区画整理事業に要する期間は規模が小さい場合には5年程度で完了することもありますが、15年以上かかることもあり、計画はあっても事業化されないこともあります。
区画整理事業では換地によって土地の面積が小さくなり、現在の場所から移転することもあります。
その他清算金の額で調整が難しいこともあることから事業計画が予定通り進まないことがあります。
また、土地価格の変動によって保留地の売却が進まないために事業が遅れることもあります。
区画整理の進み方
区画整理事業は、おおむね次のような手順で進みます。
区画整理事業地域内の所有者・住民との合意形成
↓
都市計画決定
↓
事業計画・区画整理事業組合の定款作成など
↓
仮換地指定
↓
現地工事・建物移転や解体
↓
仮換地の供用開始
↓
換地処分
↓
換地の登記
↓
清算金の徴収・交付
↓
事業終了
区画整理される土地の売却のタイミング
区画整理の流れがわかったところで、売却に適したタイミングはいつなのか、事業の段階ごとに確認しましょう。
都市計画決定前
都市計画が決定するまでは、通常の取引が可能ですが、都市計画が具体的になり確実な状況であれば買主に都市計画が近く決定される予定であることを告知したうえで売却することになります。
区画整理事業によって土地の位置が変わることがあるので、買主が建てた家がそのまま使えず取り壊さなければならないこともあります。
都市計画決定後
都市計画が決定しても仮換地指定をされるまでは、換地後の土地の面積がどのようになるか、土地の場所が変わるのかがはっきりとわかりません。
また、清算金をいくら払うのか、あるいはもらえるのかもはっきりとしない状態です。
このような状態では、売却が難しいためできるだけ売却をさけたほうがよいでしょう。
仮換地指定後
仮換地が指定されれば換地後の面積や場所、清算金の額などがある程度決まるので売却も可能です。
仮換地が指定されると区画整理事業の主体者から仮換地証明書が交付されるので、この証明書をもとに売買を進めていきます。
ただし、清算金の授受は換地処分が完了した後になるため、清算金については買主と十分に話し合い、後日の紛争を避ける契約を心がけましょう。
また、区画整理事業においては、区画整理地の利用目的などを制限されることがあります。
区画整理事業の施行規則などを確認して制限に違背しないように注意し、買主が制限に納得したうえで売却しなければなりません。
仮換地が指定され供用開始がされると、きれいな区画が新しくできあがっているので売買価格は以前よりも高くなることがほとんどです。
売却に最も適したタイミングといえるでしょう。