家を売却するときに火災保険はどうする?
返戻金は?

 家を売却するときには、引き渡しに向けていろいろな準備が必要です。今回は、家を購入する時にほとんどの方がかけている火災保険について、解約方法や解約時期について解説します。

火災保険にはほとんどの方が加入している

 火災保険は家を購入する時に安心して住み続けるために大切な補償ですから、ほとんどの方は加入しています。また、以前は住宅ローンを組む際に火災保険に加入することが条件であることや金融機関が火災保険に質権を設定するために火災保険に加入することが必要でした。

火災保険の補償内容

 火災保険の主な目的は建物が火災にあったときに補償をうけることですが、オプションの契約内容によって以下のような損害についても補償されます。

 ● 自然災害(水害、落雷、雪害)
 ● 爆発
 ● 車の衝突
 ● 水漏れ
 ● 盗難

 火災保険では建物の損害だけでなく家財に発生した損害も補償されます。自然災害のうち、地震については火災保険に含まれず別に契約をすることになります。地震保険は火災保険とセットになりますから、地震保険に入るためには火災保険に加入することが必要です。

火災保険料の支払方法によって異なる返戻金

 火災保険料の支払い方法は、1年払いや数年分をまとめて払うことができます。火災保険を解約したことによる返戻金(へんれいきん)は、数年分をまとめて払っている場合に発生します。まとめて払える期間は、2015年10月以降は最長で10年になっています。それ以前は35年間の火災保険に加入することができ、保険料を一括払いすることもできました。一括してまとめ払いをすることで保険料が割り引かれますから、まとめ払いをした方は多いです。
 保険契約期間を35年間として一括払いしている場合に10年経過後に保険を解約すれば残りの25年間は余分に保険料を支払うことになりますから、この払い過ぎた期間の保険料が返金されます。同じ残存期間でも保険会社によって返戻率は異なりますから、保険会社に問い合わせて確認しておきましょう。

 ちなみに近年自然災害が多発しており火災保険にもその影響があります。2022年10月から火災保険の最長契約期間が10年間から5年間に短縮されることになっていて、保険会社は順次対応していく予定です。

加入している保険の調べ方

 家を売却することが決まったら火災保険を解約するために、どの火災保険に加入しているかを確認しておきましょう。
 加入している火災保険の確認方法は次のようになります。

 ● 保険証券で確認
 ● 保険会社からのお知らせで確認
 ● 通帳の取引履歴で確認
 ● 住宅ローンを組んだ金融機関に問い合わせて確認

火災保険の解約手続き

 それでは、火災保険の解約手続きの進め方について解説します。

 自分から通知が必要

 火災保険を解約するには契約者本人が保険会社に解約を申し出なければなりません。家を売却したことは保険会社にはわからず、解約しなければいつまでも保険料を支払うことになります。火災保険を解約するには、保険証券が手元にあれば記載してある保険代理店に連絡をします。連絡をうけて保険会社から解約に必要な書類が郵送されますから、必要事項を記入して保険会社に返送しましょう。返戻金を入金してもらう口座を記入するようになりますから、間違わないように気をつけましょう。

 火災保険を解約する時期

 火災保険の解約は家を引き渡した後に行ないます。火災保険を解約すればその時点で補償が終わるためです。保険の残り期間分の保険料が返戻されることから、なるべく早く解約したいところですが、保険の解約は家を引き渡すまでするべきではありません。火災保険を解約した後で火災や水害などの災害が発生するおそれがないとはいえないためです。引渡し日が決まったからといって、予めその引渡し日をもって解約することを予約することもおすすめできません。万が一引渡し日が変更になった場合に補償がないことになってしまうからです。引渡しのために家を引っ越す場合でも引渡し日までは保険を継続しておきましょう。空き家になった戸建では、空き巣に狙われることもあり、強風で飛ばされてきたもので外壁や瓦などが壊れてしまうおそれがあります。

 かけ続けても得はありません

 火災保険をかけ続けても得はありませんから、家の引き渡しが終わったらすぐに火災保険を解約しましょう。保険料を支払い続けたとしても、引き渡しが終わり家の名義変更がされた後では、たとえ保険対象の災害などが発生しても以前の所有者に保険金はおりません。返戻金の額は、解約日から未経過分の計算を行ないますから、引き渡しが終わればなるべく早く解約をすることをおすすめします。

 現在の火災保険は新居に適用できません

 現在加入している火災保険は新しい家に適用されませんから家が変われば新しく火災保険に加入することになります。住み替えで家を売却する場合に、せっかく今まで火災保険に加入しているのでそのまま継続したいとか、今までの保険を流用できるだろうと考えてしまいますが、流用はできません。火災保険の保険料は、建物の構造や広さ、資産価値などの条件によって異なりますから、建物が変わると保険の適用がなくなります。

 火災保険に質権が設定されている場合

 売却する建物の火災保険に質権が設定されていないか確認をしておきましょう。以前の住宅ローンの利用時には火災保険に質権が設定されている場合があります。手元に火災保険の証書が見当たらない場合には、金融機関が火災保険に質権を設定して火災保険証書を保管しているケースがあります。質権が設定されている火災保険の場合には、契約者が勝手に解約をすることができませんから、金融機関に連絡して家を売却する旨を伝え、住宅ローンを返済することと並んで質権が消滅することの承諾書を発行するように依頼しておきます。火災保険に設定されてある質権が抹消されれば火災保険の解約ができることになります。

 火災保険に質権

 万が一の際におりる保険金を金融機関が優先的に受け取ることができる権利が質権です。火災で家が焼けたときには保険金がおりますが、質権が設定されている場合には契約者ではなく質権者である金融機関に対して保険金が支払われます。住宅ローンを利用している場合に金融機関が確実にローンを回収する手段として利用しています。

 解約前にすべきこと

 火災保険を解約する前に、家を確認して保険適用される破損がないかを確認しておきましょう。売買代金の授受が終わり家を引き渡した後でも、売主が責任をもつ欠陥が発見された場合には売主が修繕費を負担しなければなりません。しかし、引き渡した後ではたとえ火災保険を解約していなくても保険金はおりませんから補修費を自己負担することになってしまうからです。火災保険に入っていても、火災保険は火災しか補償されないと思いこんだり契約したオプション部分を忘れていたりすることは多いです。台風の影響で雨漏りしているときや門扉が破損しているときには保険金がおりる場合があります。いつ、なぜ破損したかわからないでそのまま放置していた場合でも火災保険を適用できないか保険会社に相談してみましょう。保険会社が調査して補償対象とされれば保険金が支給されます。破損個所を修理しておけば家の価値も上がります。せっかく火災保険に入っているのですから、売却時にはしっかりと活用することで有利に安心して売却をすすめることができます。

火災保険以外にも戻ってくるお金があります

 火災保険以外にも売却する際に清算されるお金がありますから注意しましょう。

 固定資産税、都市計画税

 固定資産税や都市計画税は日割計算で清算するのが原則です。不動産には所有者に対して固定資産税や都市計画税が課税されます。1月1日(または前年の12月31日)時点の所有者宛に課税されますから、年度の途中で売買をする際は日割計算を行ない、売主と買主とで1年分を折半することになります。通常は仲介を担当する不動産会社が計算をしてくれますから確認しておきましょう。

 マンション管理費、修繕積立金

 マンションの場合には負担している管理費や修繕積立金も清算します。マンションの管理費や修繕積立金は毎月支払っているものです。月の途中で売却決済を行なう場合には日割計算によって清算をすることになり、こちらも不動産会社が計算してくれます。

 住宅ローンの保証料

 住宅ローンの保証会社に対して保証期間分の保証料を前払いしている場合には、未経過分の保証料が返戻されますから、住宅ローンの返済を連絡する時に利用している金融機関に確認をしましょう。