賃貸物件が相続税対策になる理由
賃貸物件は相続税対策になると言われていますが、どうして相続税対策になるのか、その理由と賃貸物件のメリット、デメリットを解説します。
賃貸物件が相続税対策になる3つの理由
賃貸物件が相続税対策に有効な理由は以下の3つの理由です。
1. 不動産の相続税評価額は時価よりも低いから
2. 賃貸物件は割引評価されるから
3. 借入金は相続債務となるから
1.不動産の相続税評価額は時価よりも低いから
土地は時価ではなく、路線価で評価
土地の相続税評価額は売買される時価ではなく、税務署が定めた路線価(又は倍率方式)によって求める価格によります。路線価とは、相続税や贈与税額を求める基準にするために毎年7月ごろ国税庁が公表している基準値です。公示地価の8割程度とされることが多いため、仮に1億円の現金を相続すれば1億円に対して相続税が課税されますが、1億円で土地を購入すれば8割の8,000万円に対して相続税が課税されることになります。また小規模宅地の場合には特例があり、要件を満たせば最大で50%〜80%評価額を減らすことができます。
建物は固定資産税評価額
建物の相続税評価額は建物固定資産税評価額を基準値として計算します。建物の固定資産税評価額は建築費の6割程度だとされています。
このように、現金から不動産に資産を変更することで、相続税評価額が下がることによって節税になるのです。
2.賃貸物件は割引評価されるから
賃貸物件の土地や建物は、貸し付けていることによって所有者が自由に利用できないことから、減額計算されます。
● 土地の場合の控除額は次のようにして計算をします。
(借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借地権割合は路線価額と一緒に国税庁が定めている減額割合で30%〜90%減額されます。
借家権割合は全国一律で30%とされています。
賃貸割合は実際に賃貸している割合のことをいい、満室の場合100%となります。
● 建物の場合は次のようになります。
(建物評価額×借家権価格×賃貸割合)
以上のように賃貸物件では、賃貸されていないものと比べて減額措置がされているため、相続税評価額を下げることができます。
3.借入金は相続債務となるから
賃貸物件とするために借り入れをして不動産を購入した場合には、その借入金は相続債務となり相続財産から控除されます。
ただし借り入れをする額と不動産の価値との関係では事情が異なりますから注意しましょう。
例えば次のような事例を想定します。
現金:1億円
不動産売買価格:7,000万円
不動産評価額:5,000万円
借入金:7,000万円
この場合
1億円+5,000万円-7,000万円=8,000万円となります。
ところが、借り入れをしていない場合には、
1億円-7,000万円+5,000万円=8,000万円となり、結果として残る財産価値は同一になります。
単純に借入額が相続債務となるからではなく、賃貸収入や不動産の流通性など他の要素も考慮しながら慎重に判断する必要があります。
不動産賃貸のメリットとデメリット
賃貸物件を所有することには、相続税対策になるメリットの他にもメリットやデメリットがありますから、整理しておきましょう。
メリット
1. 遺産額が減る
2. 収益が得られる可能性がある
3. 相続税以外の税金対策にもなる
1.遺産額が減る
これまで解説したように相続税の評価額が減少するため遺産の総額を減らすことができます。賃貸物件にするために土地を購入すれば土地の購入費用が必要となり、建物を建てれば建築費が必要なりますから、その分現金資産が減少します。そのため相続資産の減少につながります。
2.収益が得られる可能性がある
賃貸物件であることから長期的な安定収入が見込まれます。
3.相続税以外の税金対策にもなる
賃貸物件の建物は減価償却できますから経費となります。万一賃貸経営が赤字になった場合にはその他の給料収入などと通算し所得税や住民税の軽減ができます。
不動産には所有しているだけで固定資産税が課税されますが、建物が建っている土地は固定資産税が6分の1、都市計画税は3分の1に軽減されます。建物にも固定資産税が課税されますが、3年間固定資産税と都市計画税が50%減額されます。さらに中高層耐火建築物の場合は5年間に延長されます。
デメリット
1. 管理コストが必要
2. 損失がでるおそれがある
3. 処分しにくくなる
1.管理コストが必要
建物は経年で劣化しますから賃貸物件の修繕やリフォーム費用が必要になるほか、賃貸管理を不動産会社に依頼すれば管理費がかかります。手入れがされていない賃貸物件では入居者が集まらず賃貸することが難しくなりますから、日常の維持管理にも費用と手間がかかります。
2.損失がでるおそれがある
賃貸物件は常に満室とは限りません。空き室がでればその分マイナスとなり、アパートローンなどの借入金があれば返済が負担になるおそれがあります。
3.処分しにくくなる
賃貸中の物件は投資物件となりますから、買い手市場が限られます。また賃貸物件を返してもらって売却しようとしても、賃貸契約を解除するには賃借人の同意が必要となり明け渡してもらうのは難しいのが実情です。