自分でできる?
不動産の名義変更登記

不動産登記は自分でできるのか?
司法書士などの専門家に依頼すれば費用がかかるので、できるなら自分でしたいという要望は高いです。
登記手続きについて概略を解説します。

不動産の名義変更とは?

 不動産の権利に変動があった場合に不動産の名義変更を行ないます。
 不動産の権利に関する事柄を登記記録に記録していますから、この記録に変更があれば登記申請を行い登記記録の書き換えを法務局に依頼します。
 不動産の権利変動とは権利の主体が変わることをいいます。例えば相続や売買、贈与などによって所有者が変わります。
 このような場合に不動産の名義変更登記を行ないます。

 登記の種類

 不動産登記には登記する事項が定められています。
 この登記事項に設定、変更があれば登記をすることになりますから、その数だけ登記の種類があります。

 登記記録は大きく以下の3つの枠で構成されています。

  •  ●表題部
  •  ●甲区
  •  ●乙区
  •  

 ・表題部
  不動産が存在する場所や面積、用途などを登記する枠です。

 ・甲区
  不動産の所有権に関する事項が登記されます。
  所有者の登記、買戻特約の登記、差押・仮差押などの所有権を直接制限する事項が登記されます。

 ・乙区
  不動産に設定された抵当権などの担保権、通行や電線を地上に通すための地役権などの用益権などが登記されます。

 忘れてはいけない前提登記

 不動産の名義の変更登記をする前提として必ずしなければならない登記がありますから、注意しましょう。

 現在の登記事項と登記申請に添付する書類とに整合性がある必要があります。例えば登記記録上の住所がAになっているのに、Bの住所になっている印鑑証明書を提出して登記申請をすればその申請は却下されます。そのため所有権移転に先立ってまたは同時に所有者の住所変更登記を申請することになります。
 また、売買による所有権移転登記をするにあたって、その不動産に差押や買戻特約などの登記がされたままでは差押や買戻特約が優先されますから、買主は不測のトラブルに巻き込まれることになります。そのため所有権移転登記に先立って抹消登記を行なう必要があります。

 自分でするとリスクが高い登記は?

 登記申請は当事者本人が申請することが原則です。しかし、リスクが高い権利変動の場合には専門家にまかせることをおすすめします。
 専門家に依頼すれば費用がかかってしまいますが、トラブルに巻き込まれてしまえば節約した以上の出費になってしまうからです。

 リスクが高い権利変動の代表的なものは売買による所有権移転です。不動産売買では高額な売買代金の受け渡しが行われます。そして、代金の授受と登記申請は同時に行なうことが原則です。高額の売買代金を支払った後で、売買による所有権移転登記に必要な書類に不備があったり、売主の住所変更や抵当権の抹消に必要な書類を預かっていなかったりした場合に売主の協力が得られなければ大変なことになります。
 また、銀行などから融資を受ける場合には専門家である司法書士に依頼することが原則になっていますから、銀行などの金融機関から住宅ローンなどの融資を受ける場合には本人が申請することは事実上不可能です。ただし、日本政策金融公庫からの借入の場合には、原則として設定後の登記事項証明書を提出してからの融資になりますから本人が抵当権の設定登記を行なうことは可能です。

 

登記手続きの手順

 登記申請をするための手順は次のようになります。
 1. 事前準備
 2. 事前相談
 3. 申請
 4. 補正
 5. 登記済書類の受領

 1.事前準備
  登記申請をするために調査をし、必要な書類を準備します。
  登記申請をするためにまず不動産の登記記録を取り寄せます。
  目的とする登記申請のために、前提としてしなければならない登記はないか注意しましょう。
  登記申請に必要な住民票や印鑑証明書などの書類を取得します。
  登記には登録免許税を納付する必要があります。
  必要な額の登録免許税を、収入印紙を購入して準備します。
  収入印紙を申請書の余白に貼り付けますが、消印をしてはいけません。
  準備が整えば登記申請書を作成します。

  不動産登記申請書の様式についての説明が法務局のホームページにありますから、参考にしてください。
  不動産登記の申請書様式について:法務局

 2.事前相談
  現在法務局では登記相談を受け付けていますから、準備ができたら申請する前に登記相談を受けることをおすすめします。
  申請した後に、不備があれば補正を命じられ、補正を直すことができなければ申請は却下されてしまいます。
  補正のために無駄な時間を使うよりも事前相談をして不備がない登記申請書を作成しましょう。
  法務局の相談窓口は多忙ですから、事前に電話などで予約をしてから相談に行きます。
  コロナ禍の影響があり、電話相談のみ受け付けるなど対応が変わっている場合もあります。
  予め確認をしておきましょう。
  以前は法務局の対応はワースト1だとも言われたことがありましたが、現在ではとてもソフトな対応をしていますから、安心して相談できます。

 3.申請
  いよいよ登記の申請書を法務局に提出します。

  登記を申請するには
  ● 直接窓口に持参する
  ● 郵送
  ● オンライン
  の3つの方法があります。
  郵送する場合には必ず書留郵便や赤いレターパックを利用して、大事な書類を追跡できるようにしなければなりません。
  また、オンライン申請を行なうには電子化された本人確認資料が必要になります。

 4.補正
  提出された登記申請書を法務局がチェックして不備があれば補正をします。
  法務局に申請書を提出してその場でチェックしてもらえることはありません。
  法務局の繁忙具合によりますが、通常は2日~3日はかかるものと思ってください。
  登記申請書には連絡先の電話番号を記入するようになっていますから、不備があれば法務局から電話があります。

 5.登記済書類の受領
  登記申請が無事に終われば登記済に係る書類が交付されます。
  申請した登記が完了した証明となる登記完了証が交付され、権利の取得の登記申請であれば登記識別情報通知書が交付されます。

具体的な名義変更登記について解説

 登記申請にあたって必要な書類を解説します。

 共通する必要書類
 不動産の名義変更に関する登記申請をする際に共通して必ず準備するものは次のようになります。
 ● 登記申請書
 ● 登録免許税
 ● 不動産の評価証明書
 ● 名義にする人の住民票

 ・登録免許税
  登記申請の種類によって税率が異なります。

名義変更の理由 税率
相続 0.4%(非課税とされる場合があります。)
贈与 2.0%
売買 土地1.5%、建物2.0%(軽減される場合があります。)

 ・不動産の評価証明書
  登録免許税を計算するための資料です。
  原本の提出を要求される法務局と写しでよい法務局とがありますから、事前に確認してください。
  相続登記の必要書類
  名義人の相続人であることを証明する資料が必要です。

 故人の法定相続人の全員がわかる資料が必要です。
  1. 故人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本(除籍、改製原戸籍を含みます)
  2. 故人の登記記録上の住所と最終の住所が記載された住民票(本籍地の記載のあるもの)又は戸籍の附票
  3. 相続人全員の現在の戸籍
  4. 相続人全員の住民票
 また法定相続分以外の割合で相続する場合には
  5. 遺産分割協議書(実印を押捺)
  6. 相続人全員の印鑑証明
  7. 遺言書

 遺言書があれば死亡記事のある戸籍と2の住所証明書、名義にされる方の戸籍ならびに住所証明書で足ります(遺言書の内容により若干異なります)。
 遺産分割協議を行なうためには、相続人に未成年者がいる場合には後見人あるいは特別代理人の選任を家庭裁判所に対して行う必要があります。
 現在のところ、相続登記は義務ではありませんが、令和6年4月1日から義務化されることが決まっています。

 贈与登記の必要書類
 相手方がいる共同申請による登記申請の典型として贈与登記を例にあげます。
 売買や離婚に伴う財産分与など登記原因証明情報以外は共通です。
  1. 登記原因証明情報
  2. 所有者の権利書(登記済証あるいは登記識別情報通知書)
  3. 所有者の印鑑証明書
  4. 受贈者の住民票

 具体的に解説します。
  1. 登記原因証明情報
   登記申請をする権利変動の原因となった事実があったことの証明書です。
   贈与の場合には、贈与証書、贈与契約書などがこれにあたります。
  2. 所有者の権利書(登記済証あるいは登記識別情報通知書) 
   所有者が所有権を取得したときに法務局から交付された登記済証あるいは登記識別情報通知書を添付します。
  3. 所有者の印鑑証明書(有効期間は3ヶ月)
   所有者が知らない間に登記がされてしまうことを防ぐために添付書類となっています。
   申請書または委任状(受贈者などの代理人が申請書に押印する場合)に実印を押捺します。
   登記記録上の住所と異なっていないか注意しましょう。
   変更があれば登記記録上の所有者の住所を変更する登記申請が必要です。
  4. 受贈者の住民票
   贈与を受ける人の住民票を添付します。
   贈与を受ける人は認印を申請書に押印すれば足りますから印鑑証明書は不要です。

 登記申請書に申請人が押印をします。直接押印を申請書にしない人は委任状を提出します。

 離婚に伴う財産分与が調停又は審判によってなされた場合は、新しい所有者が単独で登記申請できる例外があります。

司法書士に依頼する場合の費用は?

 ケースにより異なりますので、事前に相談されることをおすすめします。
 登記申請を行なう案件の複雑さ、筆数の多さなどにより変わってきます。1件あたり5万円~10万円程度になることが多いです。

まとめ

 不動産登記申請は本人が行なうことが原則です。
 ただし、売買などのリスクを伴う登記申請や複雑な相続登記などは専門家にまかせたほうが安心な場合もあります。
 また、登記申請の準備のための時間や事前相談、登記申請、補正(があれば)、登記済書類の受け取りと何回か法務局に出頭することになります。
 法務局の営業時間は平日に限られ通常の勤務時間と重なる方も多いですから、出費と手間と仕事の都合などとを勘案して判断してください。