共有名義にするメリットとデメリットとは?
親の財産を相続したけど相続人が複数いる場合や、自宅など不動産を購入する場合など一人の名義にするのか複数の名義にするのか、悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか?
複数で物を所有することを『共有』するといいます。
不動産の共有とは?
不動産の共有とは、不動産を二人以上で所有することを言います。
相続が発生した場合に、配偶者(夫または妻)と子供二人がいる場合には法定相続人は配偶者と子供二人の合計3人になります。法定相続人は3人ですが、『遺産分割協議』をすることで一人にすることも二人や三人で法定相続分に関わらず共有することもできます。
不動産を購入するときには売買ですから、売買代金を売主に支払う必要があります。この売買代金を準備するのに誰の資金を利用したかによって、名義が決まります。一人が売買代金全額を用意すれば一人の単独名義で登記をし、二人以上が用意した場合には二人以上の共有名義で登記をします。
相続時の共有
実家を相続した場合など、思い出のある実家だからとりあえず法定相続分通りで登記をしておこうとする場合があります。先の例でいえば法定相続人3人の共有名義にします。しかし、これは後々問題をおこすおそれがあります。相続した不動産は、いずれはまた再度相続が発生します。子供にそれぞれ二人ずつ子供がいたとして、孫の代では子供は4人になり、ひ孫の代では8人になります。子供だけでも相当人数が増えていきますが、更に配偶者がいて、相続の態様によっては配偶者の身内が相続人になる場合もあります。このようになってくると段々と話し合いが難しくなってくるのが現実です。数人いる相続人のうち誰かの名義にまとめたいとか、自宅を売却したい場合には相続人全員の同意が必要になってきますが、全員の協力を得られないことがあるのです。
相続人の共有を防ぐためには、相続人全員で協議をし、遺産分割をして単独にすることができます。また、相続した不動産を売却することが決まっている場合には手続きの便宜上相続人は一人で登記をして、売買代金を分割するという遺産分割の方法も可能です。
相続の際に初めてする一回目の遺産分割には贈与税がかかりませんが、2回目以降遺産の再分割をすると贈与税がかかりますので、注意してください。
不動産購入時の共有
例えば自宅を購入するのに、3,000万円の売買代金を夫婦二人で出し合った場合を考えてみましょう。
夫が2,000万円、妻が1,000万円を用意した場合は夫が3分の2、妻が3分の1の持分(共有する所有権の割合)を取得します。1,500万円ずつを二人が用意すれば二人が2分の1ずつの持分を取得します。これを2,000万円用意した夫の持分を3分の1、妻が1,000万円用意したのに持分3分の2の割合で取得したと登記した場合には、差額分の1,000万円について夫から妻に贈与があったものとみなされて贈与税が課せられてしまいます。
売買代金を、住宅ローンを利用して借り入れた場合も同様です。借りた人(債務者)が売買代金を用意したことになりますので、その額を持分の割合に反映させるようにします。
共有するメリット
自宅を購入する時に借り入れをした場合には住宅ローン控除を利用できますが、夫婦二人が債務者になって借り入れをすれば夫婦二人ともが住宅ローン控除をうけることができます。住宅ローン控除は借入残高が計算の基礎になるので、収入が多い人が多く借り入れをした方が、メリットが大きくなります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1210.htm
不動産を購入する時だけでなく、売却する時にも共有するメリットがあります。居住用財産の3,000万円の譲渡所得税の特例は一人ずつ利用できますので、夫婦二人であれば6,000万円まで特別控除の適用があります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
若く元気なときに自宅を購入しても年を経ればいずれは相続が発生します。夫婦共有にしていれば予め自分の持分だけは取得しているので、亡くなった配偶者の持分だけを相続することになります。そのため相続税の節税になります。このメリットは夫婦二人の場合だけでなく、親子間の共有でも同様にメリットになります。
賃貸アパートなどの収益物件を相続した時に共有名義にすることで、その持分に応じて収益を分配することができます。
負担を共有することができるのも、メリットといえます。草刈りの当番を輪番にしたり、固定資産税を持分の割合で負担したり、補修費用を分割することも可能です。ただし、このメリットは全員が協力してはじめてメリットとしていきるので、反対したり協力しない人がいればデメリットになります。
共有するデメリット
共有の場合には不動産を自分だけの判断で売却したり、賃貸にだしたりする処分ができません。不動産を売却するには共有者全員が協力する必要があります。そのため共有者のうちの一人でも売却に反対する人がいれば不動産を売却できなくなります。ただし、自分が持っている『持分だけ』を売却することは可能です。そういった専門の業者もいます。購入した業者は残りの共有者に対して『共有物の分割』を迫るか、持分の売却を要求していくことになりますが、いずれにしても紛争が予想されますので慎重に考慮してください。
不動産にはメンテナンスが必要です。共有の場合には補修費用は共有持ち分の割合で負担するのが基本ですが、中には相応の費用を払ってくれない人もいます。そうすると他の人は持分以上の負担を強いられることになってしまいます。
固定資産税の負担についても同じ問題がおこるおそれがあります。
不動産売却、購入をする際の参考にしてください。