親が認知症に…親の不動産は売却できるの?

親が認知症に…親の不動産は売却できるの

親が認知症と診断された後、その親の不動産は売却できるのでしょうか。認知症には程度があるので、本人に充分な判断能力があれば親は売却することができ、子供に売却を委任することも可能です。しかし、判断能力が十分でなければ売却することはできません。整理するために、まず民法が定める行為能力の制限からみてみましょう。

行為能力の制限

民法では成人すれば当然に『行為能力』があり『意思能力』があるとされています。しかし、人は病気や年齢等によって充分な判断力をもてなくなることがあります。こういった人たちを保護し、また、取引に関わる相手方を保護するために行為能力を制限する必要があります。

①3段階の制限行為能力者制度

認知症になった人の判断能力に注目してその程度により3段階で行為能力に制限を設けています。(民法7条以下)

  • 被補助人:「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者」
  • 被保佐人:「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者」
  • 成年被後見人:「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」

被補助人と被保佐人は原則として本人自身が行為をし、補助人や保佐人がその行為を支援します。

被後見人は基本的に本人自身が行為をすることはできず、後見人が代理して行為を行ないます。

 

②制限行為能力者の認定

行為能力を制限するには家庭裁判所の審判が必要です。面談や医師の診断書等をもとにして一定の者からの申立てにより家庭裁判所が審理します。

 

③公示

行為能力を制限されれば登記されます。『登記事項の証明』を請求できるのは本人、その配偶者及び四親等内の親族、後見人等一定の者に限られます。

『登記事項の証明書』または『登記されていないことの証明書』は各法務局・地方法務局で取得できます。

後見人の選任手続き

①後見開始の申立

(1)申立人

配偶者、4親等内の親族、補助人などから本人の住所を管轄する家庭裁判所に申立てます。

 

(2)申立に必要なおもな書類

  • 診断書
  • 本人の財産や収支がわかる資料
  • 本人の家族関係がわかる資料

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_01/index.html

 

②後見開始までの期間

申立から後見人が選任されるまでおおよそ2か月間必要で、さらに登記完了まで2か月程度必要です。

 

③後見人になる人

弁護士、司法書士、社会福祉士等が選任されます。最近は家族を後見人に選ぶことが少ない傾向です。後見人には報酬を支払う必要があり、裁判所が報酬額を決定します。業務により差があるものの1ヶ月3万円程度になります。

 

④後見人の権限

後見人が本人の財産全ての管理権を有することになります。子供だからといって後見人に無断で親の財産を処分することはできません。

後見人による不動産の売却

後見人が選任されれば不動産を売却することが可能になります。

 

①後見人は本人の代理人

後見人は本人の代理人であり、本人の家族の代理人ではないことに留意してください。後見人は本人の利益のために行為します。このことを理解しておかないとトラブルになります。

  • 後見人は本人にとって必要がなければ不動産を売却しません。
  • 売却した利益は後見人が本人のために管理します。

     

自宅の売却には裁判所の許可が必要

被後見人の居住用財産を売却するときは事前に裁判所の許可が必要です。本人がたまたま現在は施設に入所しているとしても自宅に帰ってくることを前提としています。本人のために必要な場合に限って許可されます。売却代金がなければ生活費や医療費を支払うことができないとか、建物が古くなっているので維持費が高額になってしまう等の理由が必要です。

 

 

ご覧いただいたように、自分の親であっても、勝手に不動産を売却することは出来ませんので、くれぐれもご注意ください!

イエステーションでは安心して相談できる弁護士や司法書士の紹介も可能です。不動産に関するお困りごとがあるかたは、1人で悩まずにまずは私たちにご相談ください。