不動産会社から査定書が提出されると、いよいよ売却を依頼する不動産会社の決定時期になります。複数の会社に査定を依頼するのが普通ですから、査定書の説明を受けた会社も多いはずです。
1社だけに任せるかあるいは数社に依頼するか、売却戦略とも関係のあることですが、信頼できる会社を選ぶことが大切です。
また、一定期間依頼したあとに不動産会社を変えることになることもあります。適切な判断ができるよう不動産会社についての必要な知識を解説します。
不動産会社とは
不動産会社といってもいくつか種類があり、不動産の売却を依頼するのは「売買仲介」を業とする会社です。しかも宅地建物取引業法にもとづく業者でなければなりません。
ここでは売買仲介業を営む不動産会社について、法律上の規制や規定についてお伝えします。
不動産会社の種類
不動産会社を分類すると次のように5つの種類があります。
宅地建物取引業者 | 売買仲介会社 |
賃貸仲介会社 | |
不動産開発業者 | |
上記以外の不動産会社 | 賃貸業者 |
賃貸管理会社 |
売買仲介会社と賃貸仲介会社、そして宅地開発やマンション分譲などをおこなうデベロッパーは、宅地建物取引業の免許が必要な不動産会社です。賃貸業や賃貸管理を営む会社は宅建免許の必要がありません。
5つの種類がありますが、売買と賃貸の仲介をおこなう会社、賃貸仲介と賃貸管理をおこなう会社など、兼業している場合がほとんどといっていいでしょう。
不動産の売却を依頼する場合は「売買仲介会社」になります。賃貸仲介専門の会社もたくさんありますが、法律上は問題ないのですが賃貸専門では売買に不慣れな面があります。
売買仲介をおこなう不動産会社にも実は種類があります。
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- 全国ネットの大手仲介会社
- フランチャイズチェーン加盟の不動産会社
- 地元密着型の不動産会社
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宅地建物取引業の免許制度
宅地建物取引業法により免許を受けた不動産会社を「宅地建物取引業者(宅建業者)」といいます。免許を取るには基準を満たしていなければなりません。
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- 事務所ごとに常勤する責任者がいる
- 従業員5名ごとに1名の宅地建物取引士が専任している
- 事務所ごとに営業保証金を供託するか、弁済業務保証金分担金を納付する
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事務所の所在地によっても区分があります。
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- 2つ以上の都道府県の区域に事務所を設置する場合は国土交通大臣の免許
- 1つの都道府県のみに事務所を設置する場合は都道府県知事の免許
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免許の有効期間は5年間なので、5年ごとに更新手続きをしなければなりません。
営業保証金と弁済業務保証金分担金 営業保証金は本店など主たる事務所は1,000万円、支店や営業所などは500万円を供託します。しかし宅地建物取引業保証協会の社員になった不動産会社の場合は供託の必要がなく、弁済業務保証金分担金を納めます。金額は主たる事務所で60万円、従たる事務所で30万円です。 |
宅地建物取引業者として免許を受けなければならない「宅地建物取引業」とは次のように定義されています。
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- 宅地・建物の売買、交換
- 宅地・建物の売買、交換又は貸借の代理
- 宅地・建物の売買、交換又は貸借の媒介
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媒介業務と代理
前述のように「宅地建物取引業」の仕事の内容には「代理」と「媒介」があります。仲介は法律用語では「媒介」というのです。
代理は売主の代理または買主の代理として取引をおこなうもので、一般的には分譲宅地や分譲マンションの売主であるデベロッパーとの代理契約にもとづき、売買契約の締結や引渡し手続きをすることが多くみられます。
媒介は売主または買主との媒介契約により、媒介業務=仲介業務をおこなうのです。業務の報酬は売買価格にもとづき次の計算式により決定されます。
売買価格の200万円までの部分 | 5% |
200万円超400万円以下の部分 | 4% |
400万円超の部分 | 3% |
たとえば売買価格が1,000万円のときは次のように計算します。
200万円×5%+200万円×4%+600万円×3%=36万円となりますが、計算式が面倒なので一般的に400万円を超えるときは、売買価格×3%+6万円の計算式を用いています。
代理と媒介とでは報酬額の上限が異なり、代理は媒介の2倍になります。しかし一般の方が代理業務を頼むことはほとんどありませんので、媒介の報酬算定方法を覚えておいてください。
不動産会社の選び方
不動産会社を選ぶには先に述べた宅地建物取引業者であることはもちろんですが、売却の依頼方法や依頼時の売出し価格をどのように決めるかなど、売主が知っておくべき重要な決まりごともあります。
知識がないと不動産会社ペースで進められてしまうこともありますので、最低限おさえておきたいポイントについて解説します。
媒介契約の種類と選び方
仲介を依頼する不動産会社とは「媒介契約」を締結しますが、媒介契約には3つの種類があります。
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- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
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「専属専任」と「専任」は1社だけを選択しますが、「一般」は複数の会社を選ぶことができます。
媒介契約の種類によって選び方は変わりますが、どのタイプを選ぶ場合でも共通していえるは次のポイントです。
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- 売買仲介が専門か、賃貸兼業であっても売買に力をいれている会社を選ぶ
- 契約の種類を限定する(専属専任か専任にこだわる)会社は避ける
- 社歴の短い会社は代表者の過去の業務履歴を確認する
- 宅建免許番号の古い会社でも社歴の新しい会社があることに注意する
- 大手であっても地域密着の小さい会社であっても成功・失敗は担当者次第
- 担当者は宅地建物取引士であることが望ましい
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媒介契約の種類による選び方は『不動産媒介契約の種類と売却戦略にもとづいた選択方法と注意点』を参照してください。
査定額と媒介契約の関係
数社に査定を依頼しそのなかから1社または数社を選ぶのですが、査定額と会社を関連づける必要はありません。たとえば例をあげてみます。
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- A社の査定は1,500万円
- B社の査定額は1,800万円
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2社を比べた場合、A社のほうが信頼できそうですが、査定額はB社のほうが高い。そこで売主はA社に売却を依頼するのですが、売出し価格は1,800万円とする。 |
このように考えてよいのです。高い金額でまず売出したいと考えた場合、高い金額を査定した不動産会社に決める必要はありません。まず依頼したい会社を決めて、媒介する金額は依頼した会社と改めて相談してかまわないのです。
媒介価格の決定方法
売却の仲介を依頼する会社とは「媒介契約」を締結しますが、このときには「売出し価格」を決めるものです。「〇〇〇円で売ってください! 」との依頼に「はい! 承知しました。」と合意することにより媒介契約は成立します。
不動産会社が実際の仲介活動のとき「売出し価格」が決まっておらず、相手によって価格を変更することはできません。不動産の仲介は、たくさんの不動産会社が購入希望者を探す活動をおこないます。統一した価格でなければ混乱がおきるからです。
査定価格と実際に売れる価格は異なる! と、これまでも再三述べてきました。査定価格と売主の希望価格には差があることも多いものです。仲介する会社にとって売主の希望価格は無視できないものですが、予想される成約価格との差があり過ぎると、非常に売りづらくなります。
特に、最初の売出し価格をかなり高めに設定し、反応をみながら徐々に下げるといった方法は、インターネットで常に情報をキャッチされる現代では、足元をみられてしまい大幅な値引きがなければ売れないものです。
仲介する会社が売出し価格を決定するうえで、考慮する要素の優先順位は次のようなことです。
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- 1年以内で売れる
- できれば3ヶ月以内で売れる
- 売主の希望価格に近づける
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このような考え方があることを理解して、初期の売出し価格を検討してください。
まとめ
不動産が売れるまでには1年間かかる場合もあり、不動産会社とのつきあいも長い期間になります。定期的な活動報告を受け、売出し価格の変更打ち合わせなど、重要な決定にあたっての相談相手が不動産会社です。
売却を依頼する会社によっては「囲い込み」をされるケースもあり、慎重に選んだはずが間違いだったと、契約期間満了に合わせて会社の変更を相談する売主もおられます。
契約前に不動産会社の実態を知ることなどむずかしいことですが、解説したことを参考に信頼できる会社をみつけてください。