不動産をオークションで売る! 以前は考えられなかった方法ですが、現代では可能になっています。仲介よりも高く売ることができると言われていますが、不動産の売却は不動産会社に依頼するのが常道です。

オークションと仲介とではどのような違いがあり、オークションのしくみや本当に高く売れるのかなど疑問点もありますが、興味をもつ売主さんもおられるはず。ここでは不動産を売る時の選択肢として、オークションの概要について解説します。

 
 

不動産オークションは20年の歴史

日本でオークションというと裁判所がおこなう “競売” が代表的です。しかし競売に売主として参加することはできません。オークションの先進国アメリカでも「不良債権処理」として、不動産をオークションにて売却するようになったのでした。

日本で競売以外のオークションができるようになったのは、1999年6月に規制緩和されてからです

よく知られているヤフオクでは1999年9月に運用開始しています。

インターネットで調べると数サイトほど、不動産オークションサービスをみつけることができますが、アメリカほどの普及はされていません。

ある程度の実績を残しているのは前述のヤフオクと、ヤフオクと提携をしているピタットハウスのマイホームオークションです。

オークションで活発に商品が売買されるには、参加者が多くなければうまくいきません。出品者はもちろんですが購入する人の多さがカギを握ります

 
 

仲介とオークションの違い

不動産売却の一般的方法が仲介ですが、オークションとはどのような違いがあるのでしょう。

  仲  介 オークション
売出し価格 最高価格 最低価格
期  間 特になし 期間を設定
仲介手数料 必要 必要
媒介契約 専属専任・専任・一般 専属専任

表にもとづいて解説します。

    1. 売出し価格

仲介の場合は売出し価格を決めて仲介する不動産会社と媒介契約を締結し、販売活動をおこなっていきます。売出し価格で購入者が決まると契約することになり、場合によっては値下げ交渉にすすむこともあります。

オークションでは最低価格を決めて出品するので、入札する人は売出し価格以上の金額を提示しなければオークションには参加できません。落札価格を決める方法には2通りあります。

      • 競り上げ

オークション参加者は期限内に何度でも応札でき、応札のたびに金額が上昇していきます。最高値が常に更新される方式で、物品のオークションなどでは通常の方法です。

      • 入札方式

期限内に応札する人は買付希望金額を入札し、最高値の人または融資利用や使用目的を考慮して売主が落札者を決定します。不動産オークションでは入札方式を一般的に採用することが多いです

    1. 期  間

仲介の場合は期間について特に期限は決めず、媒介契約の種類によって3ヶ月間の仲介活動期間がありますが、期限がきたら再契約をおこなうことが可能で、基本的に期限はないといえます。

オークションは期限を決めておこないます。1ヶ月~1.5ヶ月が一般的なようです。

    1. 仲介手数料

仲介は媒介契約にもとづいておこなうので、当然ですが取引が成立すると仲介手数料が必要です。

一方オークションは、オークションサイトに売主が直接申込むケースと、不動産会社経由でオークションサイトに申込むケースがあります。

直接申込んだ場合でも、査定金額に納得して出品をおこなう段階では、オークションサイトが指定する不動産会社との媒介契約をおこなうことになります。

    1. 媒介契約

媒介契約の種類は、仲介でおこなう場合は専属専任媒介・専任媒介・一般媒介と3種類の方式から選択しますが、オークションでは専属専任媒介が原則です。

 
 

日本においてオークションが普及しない理由

日本では20年前に規制緩和したときの期待に反し、不動産オークションはあまり普及していません。原因はアメリカと日本との資産評価と、資産に対する価値観の違いではないかと想像できるのです。

オークションのシステムは「できるだけ高く売る」という、売主側の立場に立った価格決定メカニズムであることを先に述べました。競り上げ方式であっても入札方式であっても、売主は出品価格以上で取引できるのですが、買い手がつかない場合もあるわけです。

対して仲介では査定結果に基づき売出し価格が決定されます。買い手は売出し価格で購入するのであれば取得可能ですが、できるだけ安く買いたいため「値交渉」になるケースが多く、売主は売出し価格より低いですが最低ライン以上であれば売渡しに応じます。

つまり「できるだけ安く買いたい」という、買主側の立場に立った価格決定メカニズムが仲介といえるのです。

日本では不動産の評価をおこなうにあたり原価法による積算価格が主流であり、土地の公示地価と建物の構造・築年数により不動産価格がほぼ決定します。オークションで高く売れるためには、積算価格で計算されない「付加価値」を買主が認めプレミアムをつけるメカニズムが必要です。

しかし日本ではよほど特徴があり希少価値が高く、プレミアムをつけてでも購入したいと思う物件をみることはあまりありません。

アメリカでみられる価値の高い物件には、たとえば築年数が古く建物そのものに歴史がある物件や、著名人が暮らした邸宅など、オークションで価格がつり上がりやすい条件が整っていると考えられるのです。

なぜこのような違いがあるのか、理由のひとつとして “地震国日本とアメリカの違い” をあげることができます。アメリカでは地震被害のある地域はごく一部ですが、日本は全国すべてが危険地帯です。

築年数の古い建物=耐震性が劣る

このため、建物に付加価値を認めることができない……といえるのではないでしょうか。

 
 

不動産オークションの注意点

不動産オークションサイトを運営するのは、宅地建物取引業者とは違います。不動産の仲介業務をおこなう不動産会社は、宅地建物取引業法による許可を受けた宅地建物取引業者でなければなりませんが、オークションサイトの運営は宅地建物取引業にはあたらないのです。

そのためオークションによる取引により、売主や買主になんらかの損害やトラブルがあった場合、損害の補償やトラブルの解決を図る法的なしくみはありません

そこでオークションサイトでは取引のさい、免許のある宅地建物取引業者を仲介会社として介在させ、公正な取引ができるようにしています。

一方、不動産取引は個人間でも法律的には可能です。インターネット経由による個人間売買も可能であり、宅地建物取引業者が介在しない取引は理論上可能なわけです。

オークションサイトのなかには、売主と買主を直接結びつける “マッチングサイト” 的なものも考えられます。このようなサイトをとおして、不動産取引の仲介手数料を省くために、個人間取引をおこなうことは危険なことです。

瑕疵担保責任や債務不履行など不動産取引には、専門家が介在しないと解決できないトラブルが起こるものです。

たとえばフリマアプリ「メルカリ」では、利用規約で不動産の出品禁止を明記していますが、不動産の個人間取引を推奨するようなサイトが存在することも事実です。個人間取引は自己責任です気をつけてください。

 
 

まとめ

不動産をオークションで売却する方法についてご紹介しました。不動産を売りたい人にとって「早くそして高く売りたい」との希望は誰もが抱くものです。

高く売れる可能性に期待してはじまった不動産オークションですが、まだまだ成長段階の手前といえる状況です。オークションで売り出してみたが結局売れずに、不動産会社に仲介でお願いしたという体験者の声も聞くことがあります。

売却の依頼を受けるなかには「これは高く売れそうだ! 」という物件は実際にあります。仲介でおこないますがオークションでもいけそうな物件です。ただそのような物件はやはり数少なく、オークションを試してみても、無駄な時間を費やすことになる可能性もあります。

もしオークションを試してみたい場合には、仲介を依頼する不動産会社に相談し、1ヶ月程度の期間限定でやってみることをお勧めします。