不動産を売却する過程で、不動産会社に査定を依頼するところから、最終的に引渡しをするまでにはさまざまな書類が必要になります。

ここでは時系列にしたがい

      1. 媒介契約時
      2. 売買契約時
      3. 決済・引渡し時

に区分して必要な書類を、誰が準備するのかが一目瞭然わかるよう、そして主に売主さんが準備しなければならない書類について、目的が理解できるよう解説していきます。

 

必要な書類とその時期がわかる一覧表

必要書類の一覧表です。

「媒介契約時」「売買契約時」「決済・引渡し時」を横に、「売主」「仲介会社」「司法書士・金融機関」を縦にし、さらに必要書類を記載しています。

◎印は必ず必要、△は場合によって必要、〇は該当する場合に必要な書類です。

売主が準備媒介契約時売買契約時決済・引渡し時
登記済権利証は登記識別情報通知
自動車運転免許証、健康保険証、マイナンバーカード
印鑑証明書  
住民票 
戸籍附票  
固定資産評価証明書  
固定資産税納税通知書  
住宅ローン残高証明・返済表  
建築確認済証・検査済証 
建築設計図書  
住宅性能評価書 
かし保険証書または付保証明書 
マンション管理規約  
マンション購入時パンフレット 
住宅設備機器取扱説明書  
耐震基準適合証明書または耐震診断書 
アスベスト使用調査報告書 
近隣と交わした覚書や建築協定書等 
測量資料 
既存住宅診断報告書 
賃貸借契約書 
銀行預金通帳  
仲介会社が準備媒介契約時売買契約時決済・引渡し時
重要事項説明書  
重要事項説明添付書類  
管理に係る重要事項調査報告書  
売買契約書  
物件状況確認書・設備表  
引渡し確認書  
引渡し時精算計算書  
手付・代金・清算金領収書 
管理組合・管理会社に提出する所有権移転に係る各種届出書  
司法書士・金融機関などが準備媒介契約時売買契約時決済・引渡し時
登記原因証明情報  
委任状  
抵当権抹消書類  

 

 

売主が準備する書類

売主さんが準備する書類はたくさんの種類があり、引渡しになくてはならないものもあります。漏れのないよう事前に準備するようにしてください。

また売却する物件によっては、ここで例示しきれないさまざまな書類がありますので、仲介の不動産会社からよく説明を聞き書類の確認をお願いします。

 

 

売主本人であることを証明する書類

1.登記済権利証又は登記識別情報通知

いわゆる「権利書」といわれる書類ですが、平成18年~平成20年の期間で「登記済権利証」が「登記識別情報」に変っています。この期間以降に登記した場合は「登記識別情報通知」を所有者が保管しています。

所有者以外が「権利書」を保管していることは通常あり得ないので、所有者であることを確認するために見せていただきます。また引渡しが近づいたころになり『権利書がみつからない』と、大騒ぎになるケースもあるので事前に確認しておきましょう。

2.自動車運転免許証・健康保険証・マイナンバーカード

契約および引渡しなどの手続きにおいて、本人が記名・押印などをおこなったことを証明するため、本人確認書類を保存することが法律において定められています

 

 

仲介活動に必要な書類

    1. 固定資産評価証明書

固定資産評価証明書は契約時において買主に渡す、重要事項説明の添付資料です。ほかにも司法書士が登記をおこなう時の登録免許税を計算する根拠にもなる書類です。不動産所在地の市町村が発行しますが、本人以外が取得するには委任状が必要です。

    1. 固定資産税納税通知書

引渡し時に「固定資産税・都市計画税」の清算をおこないます。引渡日を境に日割り計算をおこなうのが一般的ですが、納税額の確認のため準備いただきます。

    1. 住宅ローン残高証明・返済表

住宅ローン返済中の物件の場合、不動産査定や売買価格を確定するさいに、残高を確認します。

売却代金で抵当権抹消が可能かどうか、さらに引渡し時の抹消手続き確認ためにも必要です。

    1. 建築確認済証・検査済証

新築時や増築時などの建築確認済と検査済の年月日や番号は、重要事項説明のさいの説明事項です。

また、設計図書も保管していれば買主に引き継ぐ書類です。

    1. 住宅性能評価書

新築住宅や中古住宅で「住宅性能評価」を受けた住宅の場合は、性能評価書について重要事項説明のさいの説明事項です。これも買主に引き継ぐ書類です。

    1. かし保険証書または付保証明書

売主が新築住宅を建てた、または購入した物件の場合、かし保険が継続して適用され購入した買主に引継ぎできる場合があります。これも重要事項として説明書に記載しますし、買主に引継ぐ書類となります。

    1. マンション管理規約

区分マンションの場合は、管理規約や使用規則などを買主に引継がなければなりません。また管理規約に記載された事項には、重要事項として説明義務のある条項があります。

    1. マンション購入時パンフレット

販売資料の作成には区分マンションの新築時パンフレットが必要です。買主にとってもマンション全体の物件概要を知るためには役に立つ資料となります。

    1. 耐震基準適合証明書または耐震診断書

耐震基準適合証明を受けた住宅、または耐震診断を受けた住宅は、その結果と内容について重要事項として説明しなければなりません。また買主にとっても必要な書類です。

    1. アスベスト使用調査報告書

アスベスト使用調査を行った物件の場合は、その結果を重要事項説明しなければならない事項になっています。

    1. 近隣と交わした覚書や建築協定書等

売主が取得時に近隣と取り交わした覚書なども必要です。たとえば越境している塀や付属建物などに関する覚書などです。また建築協定が為された区域については建築協定書も必要です。

    1. 測量資料

分筆や合筆を繰り返し土地の寸法が明確でない場合や、筆界が不明などの理由により、現況測量または確定測量をおこなった測量図などの書類も必要です。

    1. 既存住宅診断報告書

既存住宅診断制度(ホームインスペクション)は売主または買主が利用できるものですが、どちらが依頼しても重要事項説明書に診断結果の概要を記載する必要があります。

    1. 賃貸借契約書

賃貸物件として利用している建物では、入居中の賃貸借契約書を買主に引き継がなければなりません。また重要事項説明においても説明義務のある事項です。

 

 

所有権移転に必要な書類

1.登記済権利証又は登記識別情報通知

「売主本人であることを証明する書類」でも説明した「権利書」です。所有権移転には必要な書類ですが、万が一紛失などにより無い場合には「本人確認情報制度」によることもできます。

2.印鑑証明書

登記に必要な書類(登記原因証明情報や委任状)には実印を押印します。実印は印鑑登録してある印鑑ですので、証明のために印鑑証明書が必要になるのです。

3.住民票または戸籍附票

登記上の所有者住所と現住所が異なる場合は、所有権移転登記と同時に住所変更登記をします。そのため登記上の住所と現住所のつながりが表示されている「住民票」が必要です。住民票でつながりが確認できない場合は「戸籍附票」を本籍地で取得して提出します。

4.銀行預金通帳

所有権移転は決済・引渡しと同時になるのが普通です。決済時には売買代金を受取るので、口座に入金するため銀行預金通帳を用意します。

 

仲介会社・司法書士・金融機関が準備する書類

ここからは不動産仲介会社などが準備する書類です。どのような書類があるのか確認しておきましょう。

    1. 重要事項説明書

仲介する不動産会社が買主に対し重要な事項について説明する、宅地建物取引業法第35条にもとづき作成する書類です。

    1. 重要事項説明添付書類

上記「重要事項説明書」に添付する書類で、登記事項証明書・登記図面・土地測量図など10種類前後から20種類ぐらいの書類におよぶこともあります。

    1. 管理に係る重要事項調査報告書

区分マンションの場合に、仲介会社からマンション管理会社に依頼し取得できる書類です。修繕積立金や管理費など、マンションの管理にかかわる内容が記載された書類です。

    1. 売買契約書

売主と買主との間で交わされる売買契約書ですが、一般的に宅地建物取引業法第37条で定める書面を兼ねています。

    1. 物件状況確認書・設備表

物件状況を売主から買主へ告知する目的の書類、そして建物がある場合に、建物に附属する設備の有無についてと使用不可について知らせる書類です。

    1. 引渡し確認書

引渡し手続きが完了し、売主・買主が引渡しの確認のために取り交わす書類。

    1. 引渡し時精算計算書

固定資産税や家賃など引渡し時に清算して授受される金員の明細です。

    1. 手付・代金・清算金領収書

契約時の手付金、決済時の残代金、引渡し時の清算金など、買主から受け取る金員の領収書です。売主が個人の場合は印紙税がかからないので収入印紙を貼る必要はありません

    1. 管理組合・管理会社に提出する所有権移転に係る各種届出書

区分マンションの所有権を移転した場合には、管理組合または管理会社に各種届出をしなければなりません。届出書は所定の様式が決まっています。

    1. 登記原因証明情報

所有権移転に必要な司法書士が準備する書類です。売主と買主それぞれが署名捺印します。

    1. 委任状

委任状も登記に必要な書類で、司法書士が準備します。

    1. 抵当権抹消書類

売買物件に抵当権が設定されている場合、抹消のための書類を抵当権者である金融機関が準備します。

 

 

まとめ

不動産売却に必要な、売主さんが準備する書類について解説しました。

      1. 媒介契約時
      2. 売買契約時
      3. 決済・引渡し時

それぞれの時期によって必要な書類があり、決済・引渡し時にはほとんどの書類を買主さんに引渡すことになります。また、媒介契約時の売出し価格を決定するさいに、確認が必要な住宅ローン残高がわかる書類も重要です。

売却を検討しはじめたときには、すべての書類を探しだし、確認しておくことをお勧めいたします。