住宅やマンションそして相続した土地など、不動産売却をおこなうには仲介・買取り、2つの方法があります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、しくみの違いを理解して売却目的にあった方法を選択しなければなりません。
ここでは、仲介と買取りの違いをわかりやすく説明し、「仲介」のほうがよいのか「買取り」のほうが楽なのかなど、売主さんの売却理由や事情に合った選択方法をお伝えします。
不動産を売るときの仲介と買取りの違い
不動産を売却するには不動産会社に依頼しますが、方法が3種類あります。
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- 買い手を見つけてもらって仲介してもらう
- 不動産会社に直接買取ってもらう
- 仲介してもらいながら期限までに売れない場合に買取ってもらう
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一般的には不動産会社に仲介を依頼するケースが多いのですが、買取りにより売却するケースも少なくありません。
住宅などの場合、仲介にするか買取りにするかの判断は、次の2点について検討します。
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- 売却価格
- 売れるまでの期間
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仲介と買取りの違いを簡単に説明すると次のようにいえるのです。
仲介 | 買取り | |
売却価格 | 高い | 安い |
期間 | 遅い | 早い |
取引相手 | 個人が多い | 不動産会社 |
買取りの場合、売却価格は仲介により売買される価格(相場価格)のおよそ7割前後と、かなり安くなるのですが、仲介の場合と違いすぐに買取ってもらえるので、一般的に3ヶ月ほどかかる売却までの期間が短くすむわけです。
次に売却するまでの手続きについて簡単に説明します。
仲介では不動産会社との間で、まず「媒介契約」を締結し販売活動をおこなってもらいますが、媒介契約は一般的に3ヶ月間を一区切りとしています。
“依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。”
媒介契約の期間内に買い手をみつけて、売買条件の交渉などをおこない、売買契約に至るのが仲介の流れです。
一方、買取りでは「媒介契約」を締結する必要はありません。不動産会社と売買価格について話し合いをし、合意するとすぐ売買契約に進んでいくのです。
仲介と買取りのメリット・デメリット
仲介と買取り、どちらにするか選択するときにチェックしたいポイントが以下です。
メリット | デメリット | |
仲介 | 高めに売れることもある | 時間がかかる 仲介会社とのやり取りや内覧など面倒なことがある |
買取り | 代金を手にするのが早い 仲介手数料が不要 瑕疵担保責任(契約不適合責任)免責 隣近所に売却することを知られることがない |
相場より売買価格が安くなる |
どちらがよいか……という比較は意味の無いことで、どちらがご自身の売却理由や事情に合っているかを判断することが大切です。
デメリットに掲げたことは “欠点とか短所” と捉えるのでなく、 “やむを得ず受け入れなければならない不都合なこと” と考えるとよいのではないでしょうか。
どちらを選択してもほとんどのお客様は、売却結果に納得して気持ちよく取引を終えています。稀にですが売却まで1年を要したお客様もいましたが『むずかしい条件なのによくやっていただけた! 』と感謝されることも多いものです。
また、仲介と買取りのデメリットを低減させ、両方のよいところを活用するのが「買取り保証」です。
買取り保証 一定期間(例えば3ヶ月間のみ)を仲介で販売してみて、売却できなかった場合に「買取り」を約束しておこなう方法です。 この場合、仲介会社が買取る場合は仲介手数料は不要ですが、別の会社が買取る場合には仲介手数料が必要になることもあります。 |
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- 仲介
- 買取り保証
- 買取り
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3種類の売却方法があることを認識し、ご自身にいちばん合う方法を不動産会社と相談することが重要です。
仲介を選択したい売却シチュエーション
仲介を選択するほうが望ましいケースは、ほとんどの売却理由や事情に該当しますが、特に “仲介でなければならない” ケースについて解説します。
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- できるだけ高く売却したいとき
- 住宅ローンの残高がある居住中の住宅を売却し他の物件に買換える
- 住宅ローンの支払いが困難になり住宅を売却してローン返済をしたい
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できるだけ高く売却したいときの仲介方法
できるだけ高く売りたい場合、買取りでは無理といっていいでしょう。ある程度の時間をかけて高く買ってくれる買い手をみつける活動、これが不動産仲介の典型的なスタイルです。
不動産仲介会社と媒介契約を締結し、1社または複数の不動産会社に販売活動をおこなってもらいます。
媒介契約の期間は先に述べたように基本は3ヶ月ですが、期間内で買い手がみつからない場合は、再度同じ会社に依頼するか別の会社に切り替えて仲介を依頼します。
高く売りたいために “高めの売出し価格” を設定している場合もあります、価格の見直しをする必要が生じるときは不動産会社とよく相談し、あまり時間をかけずにそして高めに売却できるようしたいものです。
立地や物件の条件などにより、売れるまでに1年がかりになることや、場合によってはもっと時間のかかるケースもあります。『不動産を早く売るための方法と高く売る方法の違い』も参考にしてください。
住宅を買換えるときの仲介方法
住宅ローンの返済中に、転勤などで引っ越すことになり自宅を売却することになりました。引っ越し先でもマイホームをと望むとき、どのような手順でおこなうとよいのでしょう。
現在の住宅を売却した代金で住宅ローンの残額を一括返済し、同時に新居の住宅ローンを組んで購入するという、離れ業をするのが「住宅の買換え」です。
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- 住宅ローンの残高
- 予想される売却金額
- 現在のローン返済金額
- 新居のローン返済金額
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これらの条件によって「売却と購入のタイミング」を考えなければなりません。ひとつでも狂いが生じると買換えがうまくいかないこともあり、住宅ローンを扱う金融機関との密接な打合せも必要になります。そのため、金融機関からは「売却と購入」を仲介する不動産会社は、同一にするよう要請されます。
簡単ではない「住宅の買換え」については『自宅を住み替える買い替える時に知っておきたい賢い方法と手順』も参考にしてください。
住宅ローンの支払いが困難になったときの方法
住宅ローンの返済がむずかしくなったときには、「任意売却」を検討することになります。
任意売却は抵当権者である金融機関と連携しながら、住宅ローン残高に満たない売却金額でも抵当権を抹消し、担保となっている住宅を新しい所有者に引渡すことのできる方法です。
金融機関は住宅ローン残高の全額を回収することはできませんが、できるだけ多く回収したいと考えるのは当然です。しかし任意売却は時間が限られており(通常は3ヶ月~6ヶ月)、確実に売却できる金額を売出し価格として設定します。
この金額は買取査定金額より高くなるのが自然なことで、金融機関も転売を前提とした「買取り」は認めづらい点があり、仲介によって売却することを前提としています。
買取りを選択したい売却シチュエーション
買取りを選択するほうが望ましいケースとしては、次のような事情がある時です。
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- 売却代金の使いみちは具体的にないが、手っ取り早く現金化したい
- 大至急資金をつくる事情が生まれた
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このような場合に買取りを依頼しても、不動産会社が応じられないケースもあります。
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- 抵当権が設定されており、買取査定額よりも借入残高が大きい
- 賃貸物件など占有者がいる場合、家賃滞納や居住者行方不明などのトラブルが生じている
- 需要が見込めない立地や現況となっている、あるいは再建築不可など法的制限があり転売可能性がきわめて低い物件
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不動産会社が買取りするのは、商品を仕入れて販売することが目的です。販売できないような状態の物件を買取りすることはありませんし、販売しても利益のない物件も買取りはしません。
不動産を買取りそして販売したときには、負担しなければならない費用が不動産会社に発生します。
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- 所有権移転登記費用
- 不動産取得税
- 買取り資金が借入の場合は支払利息
- 不動産譲渡所得税
- 建物がある場合には預かり消費税
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これらの費用に販売経費や一般管理費をプラスした金額を、販売利益として回収できなければ不動産会社の経営は成り立ちません。買取価格が仲介で売却する価格の7割前後、とされる理由がここにあるのです
*買取り価格「7割前後」については不動産会社により異なりますので注意してください。
まとめ
不動産の売却には3つの方法があります。
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- 買い手を見つけてもらって仲介してもらう
- 不動産会社に直接買取ってもらう
- 仲介してもらいながら期限までに売れない場合に買取ってもらう
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仲介と買取りにはそれぞれメリットもありますが、「できるだけ高くそして早く売りたい」という、望みを100%叶えることはむずかしいものです。
売却する目的や事情に合わせて、最良の方法を不動産会社と相談してください。そのためには信頼のできる不動産会社を見つけることが大切です。