不動産の売却を本格的に開始してから2ヶ月近く経過し、有力な購入希望者が現れないときなど、売主さんへおこなう定期報告は嫌なものです。
売主さんは良いニュースを聞きたくてじっと待っているわけですが、なかなか心地よい報告ができず気まずいものです。
そんなときに売主さんから「来月にはなんとか売れてくれないと困るんです」などと、重要な事情を打ち明けられることもあります。
不動産売却には「早く売る方法」と「高く売る方法」があり、売却活動を開始するときには、売主さんと不動産会社との間で売却戦略について共通理解しておく必要があるのです。
ここではこの2つの戦略の違いについて解説し、売主さんに知っておいてほしい、不動産会社の本質を理解していただける情報をお伝えします。
不動産を早く売る戦略
不動産を早く売るといっても、1週間以内や10日以内など極端に早く売れることはありません。目途としては『3ヶ月以内』に売れることを不動産会社は考えます。
売却を依頼する媒介契約は、専属専任あるいは専任媒介の場合、契約期限を3ヶ月としています。一般媒介契約には制限はありませんが、だいたい3ヶ月で契約がおこなわれていることが多いでしょう。
不動産会社にとって依頼を受ける不動産は “商品” です。商品には “売りやすいor売りづらい” に関係するいくつかの特性があります。
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- 価格は安いほど早く売れる
- 立地が良いほど早く売れる
- 規模は大きくもない小さくもないちょうど良いものほど早く売れる
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売却予定の不動産の立地と規模を客観的に評価したうえで、買いやすい価格設定だと早く売れますが、立地は良くなく規模は通常求められるものより小さいなどの場合、価格に割高感があると早期売却はむずかしくなります。
つまり早く売れるためには、価格・立地・規模のバランスが必要なのです。ただ単に安いだけではなく、需要が見込める立地や規模によって売出し価格が決まってきます。
次に不動産を早く売るための戦略として、売却期間と不動産会社の選択について、もうすこし掘り下げてみましょう。
媒介契約の期間
冒頭で早く売れる期間の目途として『3ヶ月以内』としましたが、これには理由があります。
「立地」「規模」そして「価格」が早く売れる条件に合致している場合は、売出してすぐに買い手がみつかるというラッキーなことは起こり得ます。
ただし、このようなケースはよほど格安な価格設定の場合であり、ほとんどの場合は購入を検討してくれそうなお客様をみつけるまで1~2ヶ月はかかるものです。逆に2ヶ月以内で買い手が見つからない場合は、早期売却がむずかしいともいえるのです。
では買い手が見つかる期間を2ヶ月間とする、その理由は売却物件の情報伝達方法にあります。
媒介契約を締結すると不動産会社は次のような準備をおこないます。
販売開始までの準備
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レインズ・自社サイト・ポータルサイトどれもインターネットでの情報発信手段です。
不動産の購入を検討している人の情報収集方法は、紙媒体はもちろんですが圧倒的に多いのが「インターネット」です。
そしてインターネットへのアクセスは、物件を掲載した当日から1週間がもっとも多く、日が経過するにしたがい少なくなっていきます。つまり物件情報をパソコンやスマホで見てもらえるのはせいぜい2ヶ月間、この期間を過ぎると極端にアクセスは少なくなってしまいます。
このような理由から2ヶ月以内に買い手が見つからない場合、不動産会社は長期戦を覚悟するようになるのです。
また、2ヶ月以内に買い手がみつかっても、契約準備や融資の申込など時間がかかり、引渡しまでとなるとだいたい3ヶ月はかかるものです。
前述したように「立地」「規模」が希望に合致していると、価格次第で早く売れることもありますが、ラッキーをあてにして進めることもできませんので、早く売るとはいっても3ヶ月間で売却することを目標にします。
媒介契約の種類
早く売るためには媒介契約についても検討しなければなりません。
媒介契約には3種類あります。
媒介契約の種類
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それぞれの詳しい内容については『不動産媒介契約の種類と売却戦略にもとづいた選択方法と注意点』をご覧いただきたいのですが、早く売ることを優先させる場合は「一般媒介契約」をお勧めします。
一般媒介契約には専任(専属専任も)媒介にはない次の特徴があります。
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- 複数の不動産会社と媒介契約を締結することにより、 “業者間の競争” 関係を作ることができる
- ポータルサイトにはたくさんの種類があり、1社だけの媒介契約ではすべてのポータルサイトを活用することはむずかしいもの。不動産会社が複数になるとすべてのポータルサイトに物件掲載することが可能になり、インターネットの露出度が高まる
- 自己発見取引が可能(売主自身が買い手を見つけることが可能)
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一般媒介契約は正直なところ不動産会社はあまり望まないものです。何故なら専属専任や専任媒介であれば、3ヶ月間は最低売主側からの仲介手数料を見込むことはできますが、一般媒介は『販売活動を積極的におこなっても他社に決められるリスク』があるからです。
俗にいう “ただ働き” になってしまう可能性が高いので、専属専任か専任媒介を望むのが普通です。
しかし不動産会社が望まない一般媒介契約をあえて選択するのは、最初に述べた3つの特徴を活用したいからです。
心配になるのは『不動産会社が望まない契約方法で真剣にやってくれるのだろうか? 』ということでしょう。
一般媒介であっても1ヶ月~2ヶ月であれば、一所懸命やってくれるものです。何故ならここにも理由があります。
『もしも媒介契約期間内(3ヶ月)で売れなかった場合、専任契約に変更して契約できる可能性』があるからです。このような期待感があれば不動産会社は動いてくれます。
逆に3ヶ月間で売れなかった場合そのごも一般媒介で継続してしまうと、やる気を失ってしまう可能性が高くなるのです。
専属専任媒介・専任媒介の場合
早く売りたい場合でも専属専任媒介や専任媒介によることは問題ありません。しかしどちらかというと「専属専任」は自己発見取引が禁止されるので、専任媒介のほうが望ましいでしょう。
専属専任や専任媒介の場合には、特に信頼できる不動産会社に限ります。理由は「囲い込み」を防止したいからです。
囲い込みとは? 売却を依頼された不動産会社は自社で買い手を見つけて契約が成立すると、売主・買主の両方から仲介手数料を受領できます。これを「両手」と称しますが、不動産会社にとっては両手と片手では報酬額が倍違います。 経営上は「両手」のほうが望ましく、売出し開始からしばらくの期間は、他の会社に物件を紹介させない方法をとる場合があります。つまり自社だけで客付け活動をおこなうことを「囲い込み」といいます。 |
媒介契約を締結した不動産会社が信頼できるとはいっても、念には念をいれたいものです。そこで「囲い込み」をおこなっていないかどうか確認する方法があります。
専属専任や専任媒介の場合は、国土交通省が指定した不動産流通機構(レインズ)に、物件を登録することが義務づけされています。
レインズには「ステータス管理」という機能があり、登録した物件の現在状況を公開しています。
ステータスには次の3つがあります。
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- 公開中
- 書面による購入申込みあり
- 売り主都合で一時紹介停止中
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囲い込みしている場合には、ステータスが本来は「1.公開中」なのに、ほかのステータスに登録し他の会社が客付け活動しないようにするのです。
ステータス管理は売主も確認することができます。
売主がステータス管理する方法 物件登録をおこなうとレインズは「登録証明書」を発行します。 必ず登録証明書を不動産会社からもらってください。 登録証明書のいちばん最後に次の3項目について記載があります。
レインズのサイトにアクセスし、IDとパスワードを入力すると、売却を依頼している物件が表示されます。 |
「囲い込み」は早く売れる物件でも、無駄な時間を使ってしまう危険性があるのです。
時間がかかっても高く売る戦略
時間がかかってもいいのでできるだけ高く売りたい! と希望するかたもおられるでしょう。
不動産の売却理由にはいろいろありますが、時間がかかってもよいという場合は、売却により得た代金の資金使途が特になく急がないというケースです。
価格を下げると早く売れそうだが、そうはしたくないという場合、1年間ほどの期間をいただくことが経験上多いです。
不動産の売買には季節的なことも関係し、春が最適という物件もあれば秋が売れやすいということもあります。
例えば春から夏にかけて最適な物件を秋に売り出した場合など、年内の売却はむずかしくなり、翌年の夏まで売却期間をあらかじめ設定して、売主さんには承諾を得て販売活動を開始することもあります。
この場合、媒介契約は3ヶ月ごとに再契約する必要があるので、覚えておきましょう。
不動産が高く売れる条件には次のようなことが考えられます。
不動産が高く売れる条件
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売却物件の個性とは、単に立地条件や規模あるいは間取りや築年などの、一般的にいわれる物件概要で表現される内容ではありません。
例をあげると次のようなものです。
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- プールがついている
- 地下室がある
- 湖や海が眼下にできる断崖絶壁
- 3世帯が生活できる
- 樹齢300年の庭木がある
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10人の内覧者がいたら全員が『素晴らしい』と価値を認めるものではなく、10人のうちたったひとりが価値を認めるような特徴をいいます。
価値を認める個性に対しては、相場より高い価格でも購入しようという動機が生まれます。言い換えると「希少価値」のある物件ならば、限られた人の希望に合致し高めの価格で取引が成立するものなのです。
高く売るときの媒介契約
大切なのは媒介契約です。媒介契約の種類は専属専任または専任媒介に限り、一般媒介はあり得ないといっていいでしょう。
一般媒介でつきあってくれる不動産会社は恐らくいないと考えられます。
時間をかける分「オープンハウス」もおこなったりします。折込みチラシでおこなうオープンハウスの告知も1回や2回ではありません。不動産会社が投じる広告宣伝費はけっこうな金額になります。
できれば「両手」で取引をまとめたい、と考えるのは当然ではないでしょうか。悪くても「片手」は必ず確保できる状態になければ、仲介を責任もってやってくれる不動産会社はいないでしょう。
長期戦になることを覚悟して担当者との人間関係も大切なことです。気軽に相談できなおかつ実績の豊富な経験者に任せたいものです。
査定結果と仲介会社の決定
仲介を依頼する不動産会社の決定や売出し価格決定の前には必ず「不動産査定」をおこないます。一般的には複数の不動産会社に査定を依頼し、査定金額を参考にしながら売出し価格と仲介を依頼する会社を決定します。
専属専任や専任媒介の場合は依頼する不動産会社を1社に絞るわけですが、ここで気をつけなければならないのは次のことです。
査定額の高い会社が高く売れるわけではない!
不動産査定の結果は一般的に相場価格よりも高めになるのが普通です。何故なら査定する場合、できるだけ高く売ろう! と考えるのは当然です。
(任意売却のように相場価格よりも低い査定をするケースもあります。)
実は不動産会社が提出する不動産査定書には2種類あります。
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2番目の「売れる見込みのない無理な査定書」を提出する不動産会社には、次のような思惑を持っている場合があるのです。
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査定額が高いからと媒介契約を締結しても、実際に売れる価格は大幅に下がる。このようなケースはたくさんあるので注意が必要です。
まとめ
早く売れることを優先させるか、高く売れることを優先させるか、不動産の売却理由によって異なるものです。もちろん “早くしかも高く売れる” ことが望ましいことはいうまでもありません。
しかし需要と供給、売り手と買い手という関係のなかで不動産は取引されます。売却戦略をしっかり考え、戦略にかなった媒介契約方法や売出し価格の決定をしてください。
望んだとおりの不動産売却をおこなうには、不動産会社の選択がきわめて重要です。